33章 「なごみや」
アカネは「なごみや」という店を発見する。ネーミングからして、「心の癒し屋」と似たような場所であると思われる。
興味を持ったものの、入るのを躊躇してしまった。「心の癒し屋」があまりにも期待外れであったためである。似たような場所なら、お金をどぶに捨てることになる。
五分ほど悩んだのち、アカネは店内に入ることにした。今度はあたりであることを切に願う。
店の内装はいたってシンプルだった。過剰な演出でなかったことに、アカネは胸をなでおろす。派手なのは苦手ではないけど、あそこまでとなると話は異なる。さすがにあれはやりすぎである。
「いらっしゃいませ」
アカネを出迎えたのは、二〇歳くらいの女性だ。顔のパーツは隙がなく、女性の理想に近かった。
身長は175センチくらいかな。女性にしては、高い部類に入るのではなかろうか。
髪はロングで、肺のあたりまで伸びている。しっかりと手入れがされているのか、躍動しているように感じられた。
アカネには気にかかるところがあった。女性の顔色の悪さだ。休養不足、栄養不足なのがはっきりと伝わってくる。
「こんにちは。ここは何をするところですか」
イケメンやアイドルと一緒に過ごすところなら、すぐに帰るつもりでいた。アカネはああいう人たちと過ごしても、本当の意味で心が癒されることはない。
「ペットと一緒に心を癒すところです。ペット好きな方から、ご好評をいただいていますよ」
アカネは小学生のときに、犬を飼っていた。とっても人懐っこい性格をしており、家族の心を大いに癒してくれた。
「どんなタイプのペットがいるんですか?」
「犬、猫といった基本的なものから、変わり種まで取り揃えております」
シーラリュウみたいなペットがいるのかな。アカネは気になったので、訊くことにした。
「変わり種はどんなのがいるんですか」
「長い足のある魚などですね。セカンドライフには個性的な動物がたくさんいますよ」
アカネは脳内で想像するも、どうしてもイメージが思い浮かばなかった。
「ワン、ニャーとなく動物もいますよ」
ギャンブル店の「ワンワンニャーニャー」を思い出す。「ワン」と「ニャー」を使い分ける動物はこちらにもいるようだ。
「黄色と緑の縞模様の牛もいます」
「そうなんですね」
従来の固定概念を取り払うには、相当な時間がかかりそうだ。
「利用料はいくらですか」
「利用料金は1時間で2000ゴールドです。延長オプションもあり、1時間で1500ゴールドをいただきます」
常識的な値段であったことに、アカネは胸をなでおろす。「心の癒し屋」の一時間50000ゴールドは、明らかに異常な設定金額だった。詳細は知らないものの、完全にぼったくりである。
ペットショップの醍醐味といえば、ペットに餌をあげること。これをする、しないでは大きく異なる。
「ペット用の餌はないんですか」
「ありますよ。餌をあげる場合は、別料金がかかります」
女性店員は餌の書かれている、メニュー表を取り出す。
「餌については、30種類があります。エサをあげると、ペットはとっても喜びますよ」