31章 新たな仕事の依頼
扉からトントントン、トントントン、トントントン、トントントントンと音がする。
「アカネさん、こんにちは」
「依頼者のナロロさんから、水の中を潜ったことによる報酬をいただいています。どうぞ、おおさめください」
報酬を目の当たりにして、アカネの目の玉が飛び出しそうになった。
「こんなにいただけるんですか」
ダンジョンの稼ぎもいいと思ったけど、こちらからすればちっぽけなものだった。
「他の人が不可能なことをやったのですから、報酬額は多くなるのは当たり前です。写真の枚数が多かったので、特別ボーナスがつきました」
他人のできないことをできる人間が重宝されるのは、こちらの世界においても同じだ。希少価値こそが、モノをいう世界なのである。
「依頼主は大満足でした。アカネさんの写真を使用して、記念展を開催するといっています」
写真は30000枚近くもある。あれだけの数があれば、多くの人を集められるのではなかろうか。
報酬をたっぷりもらったことだし、「セカンド牛+++++」を、500グラムくらい食べようかな。一般庶民からすれば高いけど、アカネからすればちっぽけなものだった。
家の改修もしようかな。さらにランクの高い家に住むことによって、リラックス効果を高めていきたいところ。
しばらくはゆったりしようかなと思っていると、マツリから水を差されることとなった。
「アカネさん、次の仕事の依頼が届いています。セカンドライフにある裏世界の探索です」
水中の次は裏世界か。もっとまともなところで仕事をしたい。身体は問題なくとも、精神力を消耗することになる。
アカネはダメだとわかっていながらも、とりあえずは質問を投げかけてみる。
「付き添いはいるんですか」
「今回もいません。裏世界には空気がありませんので、通常の人間では無理なお仕事です」
空気を吸わなくても生きられるからの仕事のようだ
「注意事項があります。裏世界は人間を敵対視していますので、攻撃を仕掛けてくるといわれていますので、万全を尽くしてください」
空気がないだけでなく、裏世界の住人から攻撃を受けるとは。アカネの踏み入ろうとする世界はとんでもないところだ。一日20時間労働の会社ですら、まともに思えてきた。
裏世界に行くためには、心の準備期間が必要である。すぐにいってしまえば、メンタルは崩壊しかねない。
「ゆっくりさせてください。気分のリフレッシュが必要です」
身体はなんともなくとも、メンタルはそういうわけにはいかない。超能力を身に着けていたとしても、心だけはダメージを受ける仕組みになっている。
「わかりました。メンタルが回復したら、裏世界の探索をお願いします」
仕事が全くないのは問題だけど、過激な仕事を依頼されるのもきつい。世の中はバランスが重要なのだと思わされた。
「アンケートの依頼が500枚ほどありますね。家にいる間に、やっていただけますか」
外だけでなく、家でする仕事もあるのか。両方を合わせたら、スローライフは完全に崩壊する。家にいる間だけでいいので、ゆったりとさせてほしい。