第1話 ちょっと長い前置きは、ある日の夜 (2)
もう辺りはね。真っ暗な訳……。
そう、漆黒の闇の中、空間に覆われた世界なのだ。
だからね、この農協の所長さんは僕に帰宅の途──。帰り道には気をつけるようにと、労いの言葉を掛けてくれたのだ。
だってこの農協の正面──前を通っている道は、一応は国道? 県道? まあ、僕自身もどちらだったのか迄は、良くは覚えていないが。対面車線の二車線のわりには、道幅もあり舗装の方もちゃんと良く整備をされている道路ではあるのだが。
何せ? 街灯が少なく真っ暗──漆黒の闇に包まれた道路の上に、山道だから蛇、ヤマタノオロチみたいにくねくねと、カーブが多く見通しも悪い。
だから農協の購買部の所長さんが僕に、『お兄さん。夜だから気をつけてお帰り』と、労いの台詞をくれた。くれたからね。本当に僕はありがたいと、心から思う。思うのだ。