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魔法使い達の… その4

 そんなわけで、魔法使いの皆さんがあちこちに出向いていって1週間が経ちました。

 コンビニおもてなしと、キュアキュア5シアターのバイトとして参加された合計20人の皆さんは、概ね良好に仕事をこなすことが出来ていました。
 もっとも、この皆さんは全員もれなくスアがつくった『自己暗示魔法魔石の指輪』を使用したおかげでこれらの仕事をこなすことが出来たといった側面が強いですので、今後も引き続き頑張っていただく必要があると思っています。

 次に、キョルンさんとミュカンさんに連れられて社交界のパーティに参加した3人ですが、この1週間の間に合計3回パーティに参加しています。
 初回こそ、キョルンさんとミュカンさんによって前面が胸元からおへそのあたりまで切れ込んでいて、背中も大胆にあいている衣装を無理矢理身につけさせられた上、首根っこを引きずるようにして連行……じゃなかった、連れていかれた3人だったのですが……
 なんか、回数を重ねるごとに徐々にその立ち振る舞いが堂々としてきたといいますか、3回目にもなると
「……パーティって、素敵……」
 そんなことを呟きながら、少し嬉しそうな様子でキョルンさんとミュカンさんの後をついていくようになっていたのです。
「……まさか、このグループに適応者が出るとは思わなかったなぁ……」
 僕は、三人の後ろ姿を見つめながら、乾いた笑いを浮かべることしか出来ませんでした。

 そして、最後のテトテ集落の皆さんですが……

 転移ドアをくぐっってテトテ集落の様子を見にやってきた僕は、思わず目を丸くしながらその場で固まってしまいました。

 そんな僕の前には、集落で作業を行っていた10人の魔法使いの皆さんが集まっています。
 そのうちの、実に8人の横に、集落の男性の方が寄り添っていたのです。
 男性といいましても、ここテトテ集落は言わずと知れた超高齢化限界集落です。
 その8人の男性はみんな高齢な方々ばかりです。

 ……ですが

 8人の魔法使いの皆さんは、自分に寄り添っている男性の方と仲睦まじいことこの上ない様子で寄り添い合っているではありませんか。

 ……で、そんな魔法使いのお1人に少しお話を伺ってみたのですが、
「……まさか、こんなに若くて素敵な殿方と巡り会えるなんて……店長様には感謝しても仕切れませんわ」
 頬を赤く染めながら、そう言われたのです。

 そう……僕の耳がどうかしていなければ、その女性は間違いなく

『若くて素敵な……』

 そう言われました。
 その魔法使いの女性の隣に立っているのは、僕の年齢の二倍はかるく越えていらっしゃるであろうことが一目でわかる男性です。
 その男性を、この魔法使いさんは

『若くて素敵な……』

 そう言われているんです。

 しばらく考えを巡らせた僕ですが、その理由はほどなくしてわかりました。
 この魔法使いの皆さんは、すべてエルフの方々です。
 エルフの皆さんは総じて長命です。
 見た目は20台な皆さんですが。実年齢は全員100才を軽くこえている方ばかりなんですよ。
 そんな皆さんから見れば、このテトテ集落の男性の皆様はほぼ全員『若くて素敵な』男性なわけです、はい。

 相手が決まっていない2人の魔法使いの方々も
「……じ、実は複数の素敵な殿方から求愛されておりまして……」
「ま、まさかこの年になってモテ期がくるなんて……」
 顔を真っ赤にしながら、ヤンヤンヤンと体ごと左右に振っておられます。
 その後方には、この2人に求愛なさっている複数の男性の方々が互いに視線をぶつけ合いながら火花を散らしまくっていらっしゃるではありませんか……

 まぁ、このテトテ集落の皆さんは総じて社交的で気配りも出来るナイスガイな方ばかりですからね。
 この結果も、魔法使いの皆さんの実年齢を考えれば納得出来なくもないわけです。

 と、いうわけで、この10人の魔法使いの皆さんはこのままテトテ集落で暮らすことを決められまして、魔法使い集落に根付かせていた巨木の家ごと引っ越ししてこられました。
 いわゆる、魔女の嫁入りってやつですね。
 その様子を見つめながら、僕はスアが巨木の家ごと引っ越してきた日のことを思い出していました。
 スアもそのことを思い出していたらしく、僕達はその場でそっと寄り添い合っていきました。

◇◇

 その後……

 このテトテ集落の件は瞬く間に魔法使い集落の皆さんの間に広まっていきました。

 そして、
「……あの、テトテ集落での農業体験に参加したいのですが……」
 と、申し出てこられる魔法使いの方がひっきりなしに現れ始めたのです。
 テトテ集落の皆さんも、そんな魔法使いの皆さんを大歓迎してくださっています。
 この集落の皆さんは配偶者をすでに無くされている方も少なくないですからね。

 どうやら、しばらくは、この魔法使い集落とテトテ集落の間での人材交流といいますか、魔法使いの皆さんの配偶者捜しが続いていきそうな雰囲気でございます。

◇◇

 夜です……
「しかし、この結果はびっくりだったよ」
 巨木の家の中。
 子供達が寝静まったのを確認した後、スアの研修室へと移動した僕とスアはそんな言葉を交わしていました。
 僕の言葉に、スアは
「……私も、ちょっとびっくり」
 そう言うと、腕組みしながら首をひねっていました。
「でもまぁ、これで魔法使いの皆さんも幸せになれて、テトテ集落の皆さんも幸せになれるんなら、お互いにウィンウィンなわけだし、良いことだよね」
 僕がそう言うと、スアもコクコクと頷きました。

 ……ただですね……ここで僕はふと考えてしまいました。

 魔法使いの皆さんは、自分よりも若いとは言え、結構お年な方ばかり選ばれているわけです。

「……スアは、僕でよかったのかい? 僕はテトテ集落の皆さんほど年をとってないけど……」
 僕がそう言うと、スアはベッドで横になっている僕の上によじ登り、僕の顔の真ん前に自分の顔を寄せてきました。
「……私は旦那様がよかった、の」
 そう言うと、目を閉じて、んーっといった風に唇を突き出しながら僕へ迫ってきました。
 僕は、そんなスアを抱き寄せながらキスをしていきました。

 まぁ、スアがそう言ってくれるのなら、僕としてもこの上なく嬉しいわけです、はい。

 そんなわけで、この後の僕はいつもよりちょっとハッスルした次第です。
 具体的に何をどうしたかにつきましては黙秘させていただきますよ。

◇◇

 数日後。
 僕達は、月に一度のテトテ集落訪問に向かっていました。
 電気自動車おもてなし1号に乗って森の中を抜けていきます。
「あ、見えてきました!」
 窓から顔をのぞかせていたパラナミオが、笑顔で前方を指さしています。
 その先には、テトテ集落の木の柵が見えてきました。
 すると、柵に併設されている見張り台に立っていたらしい住人の皆さんが
「おぉ! パラナミオちゃん達がやってきたぞ」
「まぁ、歓迎しませんと!」
 そんな声が遠くから聞こえて来たかと思いますと、

 ヒュルルルルル…… ど~~~~~ん

 と、でっかい花火のような物が空に打ち上がりました。
 それが次から次へと打ち上がっているのです。
 よく見ると、その真下には杖を空に向かって突き上げている魔法使いの方々の姿がありました。

 ……どうやら、テトテ集落の歓迎ぶりも、魔法使いの皆さんのおかげでグレードアップしたようですね。
 
 その花火を見つめながら、パラナミオ達は満面の笑みを浮かべながら
「うわぁ! すごいすごい!」
「ほんとすごいです!」
 そんな声を上げ続けていました。
 僕は、そんな子供達の声を聞きながら、おもてなし1号をテトテ集落へ向けて加速させていきました。

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