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10章 魔法を初使用

 魔法を目に焼き付けたいのか、多くの人間がグラウンドに集まってきた。校舎で魔法の使用を許可した男性も含まれている。

 生で見せてあげたいところだけど、魔法の威力は未知数だ。それゆえ、住民の命を危険にさらす可能性も充分にある。 

「身の安全を確保するために、はなれた場所で見ていただけますか」

 アカネを神と思っているのか、住民たちは素直にいうことを聞いた。ここまですんなりと聞き入れてもらえたのは、人生で初めてのことである。

 魔法を唱えようとしたときに、使い方を教わっていないことに気づいた。どのようにすれば、魔法を使えるのだろうか。

 じたばたしていてもしょうがない。魔法を使えそうな呪文を、適当でいいのでいってみることにした。

「炎よ 全ての土を焼き尽くせ。ファイアーチャージ」

 呪文を知らないはずなのに、どういうわけかすらすらと出てきた。こちらに転生するときに、自動的に記憶するように設定したと思われる。

 魔法を唱えた直後だった。大量の地面が同時に爆発したかのような音に包まれる。あまりにうるさいので、鼓膜が爆発しそうだった。

「ドカーン、ドカーン、ドカドカーン」

 グラウンドを確認すると、土は完全に真っ黒に染まっていた。魔法の威力で、土が灰になってしまったようだ。 

 魔法を使えるとは聞いていたけど、ここまでとは思わなかった。この威力なら、街を完全に吹っ飛ばすことは充分に可能だ。

 校舎内にいる人間は、数分でこちらにやってきた。先ほどよりも人数が増えていることから、他の教室の人間も足を運んだようだ。

「おぞましい・・・・・・。人間の技とは思えない」

 私は純粋な人間ですよ。どこかの化け物と一緒に扱ってほしくはありません。アカネの心の響きは、他の人に届きそうになかった。

「すさまじい威力だ。アカネさんが本気になれば、セカンドライフの街は簡単に吹っ飛ぶ」

 現実世界で魔法を使えるなら、私の命を奪った会社に復讐してやりたい。給料をもらったとはいえ、ロボットさながらに働かされるのは許しがたい。

 校庭が真っ黒こげでは、いろいろと不都合だ。元に戻す魔法を唱えると、完全に元通りとなった。数秒前を知らないものからすれば、何も起きていないのと変わらない。

「我々はアカネさんに従います。何なりとお申し付けください」

 力のあるものに従うのはどこの世界においても同じ。アカネは一時間と経たないうちに、フリースクールの番長みたいなものになってしまった。
 

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