9章 住民からのお願い
「アカネ様、校庭で魔法を使ってください」
レベル90以上になると、魔法を使えるようになることをすっかり忘れていた。
「アカネ様、お願いします」
フリースクールにいる人間は、期待に胸を膨らませていた。魔法を見たいという思いが、しみじみと伝わってきた。
「わかりました。魔法をおみせします」
「やったー」
「魔法だ、魔法だ」
「どんな威力なのかな」
「ワクワク、ワクワク」
子供はどこの世界においても、純粋な心を持っているのか。アカネは無意識のうちに、口に手を当てて笑っていた。
魔法の威力は未知数なので、校舎の中で使用するわけにはいかない。どこか使えるところはないのだろうか。
魔法を使用可能な場所を探していると、口ひげを生やした60くらいの男性に声をかけられた。
「アカネさん、どうかしましたか」
「住民の方に魔法を使用してほしいといわれたのですが、どこで使っていいのかわかりません」
「グラウンドはどうですか。あそこなら十分すぎるほどの広さがあります」
グラウンドなら、他のものに被害は及びにくい。ナイスなアイデアといえる。
「いいですね」
「グラウンドはあちらとなっています」
グラウンドはペンキをばらまいたかのように、銀色に染まっているではないか。ここまでくると、オカルトじみたものを感じずにはいられなかった。