子供達らぷそでぃ その4
きっかけは朝一でドンタコスゥコ商会へ買い物にやってきた1人のお母さんでした。
そのお母さんは、たまたま店の二階で開催されていた『コンビニおもてなし製子供服展示即売会』に気が付きました。
「あら、コンビニおもてなしさんって子供服もやってるのね」
そのお母さんは早速会場に赴きました。
「まぁまぁ!? 見た事も無い素敵な子供服がいっぱい!」
お母さんは目を丸くし、驚嘆の声をあげながらかなりの服を購入されました。
その後
お母さんは、買ったばかりの服をまだ学校に通っていない子供達に着せて、学校に通っているお兄ちゃんのお迎えにいきました。
今日は、学校はお昼で終了だったため、学校には沢山の保護者の方が子供達のお迎えに来ていました。
その沢山のお母さん達は、コンビニおもてなしの子供服を着ているそのお母さんの子供達を見て目を丸くしました。
「そ、その可愛い服、どうなさったの!?」
「そんな服はじめてみますわ」
「お作りになられたのですか!? ホントに素敵!」
保護者の皆さんは、一斉にその子供とそのお母さんを取り囲んでいきました。
そんな皆さんを前にして、そのお母さんは言いました。
「さっき、ドンタコスゥコ商会の2階で買ってきましたの。コンビニおもてなしさんが子供服の展示即売会していらっしゃるのよ」
そして今
そのお母さんの言葉を聞いた保護者の皆様が、一斉に会場になだれ込んでこられたのです。
学校が終わるや否や、子供を連れてダッシュしてこられたのでしょう。
皆さん、子供と一緒になって子供服を見て回られています。
準備していた試着コーナーにはあっという間に行列が出来ています。
「ねぇ、この服のもう少し大きいのないかしら?」
「これの色違いはないの?」
会場のあちこちから、僕とシャルンエッセンス、そしてドンタコスゥコ商会の店員で会場の手伝いをしてくれているタマノに声がかかってきました。
「これはまずいですわね」
タマノが慌てて一階に救援要請を行ってくれました。
すると、すさかずドンタコスゥコ商会の服飾担当店員、つまりタマノの部下の皆さんが会場に駆け込んできました。
騒然5名が追加になったおかげで、会場内のお客さんの対応がようやくまともに出来るようになっていきました。
「ま、まさか初日からこんなことになるなんて……」
「ちょ、ちょっとびっくりですわね」
僕とシャルンエッセンスは、思わず苦笑しながら顔を見合わせていました。
夕方近くになりますと、
「パパ、お手伝いにきました!」
そう言って、パラナミオ達がやってきました。
テトテ集落からの追加商品が入った魔法袋を腰につけてやってきた4人ですが、みんなテトテ集落の新作子供服を身につけています。
それを見るなり、会場を埋め尽くしていたお客さん達が一斉に4人を取り囲んでいきました。
「まぁ、素敵! こんな服もあるのね!」
「ねぇ、この可愛いお子さん達が着ていらっしゃる服はどこかしら?」
そんな声が一斉に上がり始めました。
で、いきなり大人達に囲まれたもんですから、最年少のアルトとムツキが非常におびえています。
僕は、慌ててみんなを救出に向かおうとしました。
すると、そんな僕の目の前で、リョータとパラナミオが両手を広げて2人の前に立ちはだかりました。
「すいません。僕達はパパのお手伝いに来たんです」
「ごめんなさい、通してください。お願いします」
アルトとムツキを間に挟むようにして、リョータとパラナミオは何度も頭を下げながら僕の方へ向かってきました。
すると、その声を聞いた皆さんも
「ごめんなさいね、なんかいきなり囲んじゃって」
「怖がらせちゃったかしら。本当にごめんなさい」
謝罪の言葉を口にしながら道をあけてくださいました。
ほどなくして、4人は僕の元へとたどり着きました。
4人は、一斉に僕に抱きつきました。
「パパ、品物を持ってきました」
「そうか、みんなありがとう。大変だったね」
そう言いながら、僕は4人の頭を交互に撫でていきました。
そんな光景に対して、会場からは一斉に拍手が送られてきました。
「お手伝い出来たのね、偉いわみんな」
「お疲れ様、よくやったね」
そんな暖かい声といっぱいの拍手に包まれて、4人は嬉しそうに微笑んでいました。
僕も、皆さんに
「どうもありがとうございます」
そう言いながら何度も頭をさげていきました。
ちなみに、その横でシャルンエッセンスも一緒になって
「皆様、本当にありがとうございますですわ」
そう言いながら頭を下げてくれていたのですが、そんなシャルンエッセンスに対して
「奥さんもお疲れ様」
「可愛い子供達だね、奥さん」
そんな声がかけられていきました。
「お、奥さ……あ、あのですわね……その……」
シャルンエッセンスはその言葉に顔を真っ赤にしながらしどろもどろになっていきました。
なんとか否定しようとしていましたけど、僕の事を慕ってくれているもんですから舞い上がってしまってうまく言葉を発することが出来なくなってしまったらしく、結局最後までしどろもどろ状態から抜け出すことが出来なかったんですよね。
その結果、閉店後店にやってきたスアにじーっと睨みつけられていたシャルンエッセンス。
「……何で否定出来なかった、の?」
「……め、面目次第もございませんですわ、奥方様……」
まぁ、シャルンエッセンスも悪気がなかったのはスアもわかっていましたので、この睨み付けは短時間で終了した次第です。
スアの場合、ひとりぼっちで魔法の研究に没頭していた時期が異常に長いんです。
魔法に関してはなんでもござれなスアですが、人を好きになったのって僕が始めてだったぐらいですから恋愛感情的なものに関してはホントに耐性が備わっていないといいますか、圧倒的に経験不足なわけです。
だから、僕の事になると、僕の事が好きすぎて感情が暴走してしまうことがあるわけです。
ずっとこのままでは困りますけど、スアもそのことは気にしてくれていますので、少しずつ改善されていくと思っています。
何しろ、僕と子供達の素敵なママなんですからね。
そんなことを思っていると、その思いが伝わったのかスアは僕に向かって、
「……うん、頑張る、から」
そう言って頭を下げました。
その足で、シャルンエッセンスの元にも歩み寄っていきまして、
「……言い過ぎた。ごめん、ね」
そう言ってくれていました。
そんな感じで、スアもスアなりに頑張ってくれているわけです、はい。
◇◇
その夜。
僕は久々に子供達と一緒にお風呂に入りました。
最近はあれやこれやと忙しかったせいで、こういう時間がなかなか取れなかったんですよね。
最近は、リョータ・アルト・ムツキの3人も起きている間は安定してその姿をパラナミオと同い年くらいの姿に保つことが出来るようになっています。
そんな4人と一緒に、僕は湯船につかっていました。
一度湯船から上がった僕が、イスに座って体を洗おうとしていると、
「パパ、お背中流します」
パラナミオがそう言って、石けんで泡立てたタオルで僕の背中を洗い始めてくれました。
「じゃあ僕は髪の毛を洗います」
今度はリョータがシャンプーを使って僕の髪の毛を洗い始めました。
「では、私はお父様の右足をお洗いいたしますわ」
そう言って、アルトが僕の右足を持ち上げ、自分の膝の上に置いて足を洗いはじめました。
「じゃあ、ムツキは左足を洗うにゃしぃ!」
そう言うと、ムツキは僕の左足を勢いよく持ち上げて……
えぇ……アルトがあまりにも思い切り持ち上げたもんですから、僕は危うく後方にすってんころりんしそうになってしまいました。
幸い、
「パパ、危ない!」
と、パラナミオとリョータががっしりと支えてくれたおかげで、僕はすってんころりんすることを免れた次第です。
「ムツキ、してくれるのはうれしいけど、気をつけて頼むね」
ムツキも悪気があったわけではなく、ちょっと張り切りすぎただけなんです。
それがわかっていましたので、僕は笑いながら優しく注意しました。
すると、ムツキは
「はい……次からは絶対に気をつけるにゃしぃ」
神妙な面持ちでそう言いました。
ちょっと意気消沈してしまったムツキでしたけど、その後パラナミオの配慮もあって僕の背中担当をかわってもらったり、湯船で僕の横のポジションを譲ってもらったりしたもんですから、お風呂からあがる頃にはすっかり元気になっていました。
「パパ、明日もお手伝い頑張るにゃしぃ」
ムツキはそう言いながらガッツポーズをしていました。
パラナミオがしっかり者ですので見逃しがちですが、ムツキも順調に成長してくれているようです。
その周囲では、パラナミオ・リョータ・アルトの3人も
「私達も頑張ります!」
「はい!」
「おまかせくださいな」
そう言いながら右手をあげていました。
「……もちろん、私も」
僕の横に転移魔法で現れたスアも、そう言いながら僕に寄り添ってきました。
魔法薬の生成をしていてお風呂に来るのが遅くなったスアですが、その目で僕に
『……一緒に入りたい、な』
そう訴えかけていました。
その意図を察した僕は、子供達をベッドに送り届けたると、すぐにお風呂に戻りまして、今度はスアと2人きりのお風呂を満喫しました。
まぁ、色々あったわけですけど、詳しい内容に関しましては黙秘させていただきますが、お風呂からあがつ少し前、湯船の中で僕に抱っこされながら後ろから抱きしめられていたスアが
「……幸せ、とっても幸せ……」
とろけたような表情でそう言ってくれたことだけお知らせしておきます、はい。