第5話 初めての依頼受注
冒険者登録を済ませたので早速ではあるが依頼を受けてみることにした。
そこでたくさんの依頼書が貼られている掲示板の前へと足を運んでみる。そこには様々な種類の依頼があったが、よく見てみるとFランクでも受けられる依頼はたったの2種類しかなかった。
...え、少なくない?
ちなみにその2つというのは「薬草の採取」と「木の実の採取」だった。まあ最初から討伐系の危険な依頼はやらせないか、普通。こういう依頼から徐々に冒険者としての経験を積んでいくとしますか。焦りは禁物、この世界は前の世界とは違って危険が沢山あるのだから最初は特に気を引き締めていかないと...
とりあえず薬草採取の依頼の方を受けてみることにした。
...そういえば大事なこと聞き忘れちゃったけど、これってどうやったら依頼を受けれるんだろう?レイナさんも業務で忙しそうだしわざわざ聞きに行くのもちょっと申し訳ないな。よしっ、ここは他の冒険者さんを観察してみるのが得策だろうな。
そこで他の冒険者がどのように依頼を受けるのかを近くの椅子に座りながら観察してみることにした。
観察を始めてから約1分後、ある一組の冒険者パーティが依頼掲示板の前で依頼を吟味しているのが見えた。しばらくするとリーダーと思しき冒険者が一枚の依頼書をその掲示板からはがし、それをカウンターにいる受付嬢さんのところへと持って行った。
なるほど、受けたい依頼書を受付にもっていけばいいのか。
では早速さっきの依頼を受けに行くとしますか。
俺は掲示板へと戻り、先ほど見ていた薬草採取の依頼書を取ってレイナさんのところへと持って行った。
「すみません、この依頼受けたいんですけど大丈夫ですか」
「早速依頼を受けられるんですね、もちろん大丈夫ですよ。...薬草採取の依頼ですね。こちらはレコべリ草を10本納品いただけますと依頼達成になります。もし10本以上納品いただけますと追加量に応じてこちらも追加報酬をお渡しすることになります」
それじゃあ出来る限りいっぱい集めてきたらいいのか。あっ、でも取りすぎても環境破壊になってしまうからほどほどにしないといけないな。ということは薬草採取だけじゃ収入に心元ないからもう一つの木の実採取依頼もやっていく必要があるだろうな。
「すみません、もう一個Fランクの依頼で木の実採取があったと思うのですが同時に受けることって可能ですか?」
「もちろん大丈夫ですよ。こちらのレコベリ草もあちらのコンデの実もどちらもここから南西方向にあるフーリットの森に自生しておりますので両方ともお受けされる方が多いです」
あ、そうなんですね。思い付きだったけど意外と最適解だったみたい。ゲームでも同じ場所でこなせる依頼があれば同時に受けておくっていうのは鉄則だからな。それに関してはやはりリアルでも同じってことか。
「ではその2つの依頼を受注されるということでよろしいでしょうか?」
「はい!よろしくお願いします」
「了解致しました。ではギルドカードの方を提示していただけますでしょうか?」
俺は言われた通り、先ほど作ったばかりのギルドカードをポケットから取り出したように見せながらインベントリから取り出しレイナさんに渡した。これちょっと面倒だからカバンが欲しいな、腰につけられる感じのものを。
「はい、受注完了いたしました。ギルドカードの方をお返ししますね」
「ありがとうございます。これってギルドカードに記録されるんですか?」
「はい、ギルドカードには冒険者様の受注記録や依頼の達成記録、そのほかにも魔物の討伐数なども記録されます」
すげぇ...めちゃくちゃ便利じゃんこのカード。てかどういう仕組みで出来てるんだ?まあこの世界には魔法っていう前世では理解できない力があるんだから今の俺には全く理解できなくても当たり前か。でもなんかゲームのログ情報みたいでちょっと面白いな。これもさっきのシステムっていうのと関係あるのかな...?
「あのー、もしよろしければそのレコベリ草とコンデの実がどんなものか教えてもらえますか?」
「あ、それに関しましてはこちらの紙をご覧ください。Fランクの方向けに用意している依頼ガイドになります。そこに今回のクエストについて記載されておりますのでお役に立つと思います」
「ありがとうございます!すごくありがたいです!!!」
め、めちゃ手厚い対応だ...!このギルド素晴らしすぎないか?!渡された紙にはどこに目的の薬草と木の実が自生しているのか、それにどんな見た目なのかが詳細に書かれている。何かここまで手厚いと逆に何か大丈夫かなって不安になるな。何に不安になってるのか分からないけど、これだけ親切にされたんだから例えこれが業務だからといっても何かお礼したいな。...また考えるとするか。
「今回の薬草と木の実の採取依頼は常設依頼となっておりますので次回から依頼書をお持ちいただかなくても受付で受注可能ですのでいつでも仰ってくださいね」
「そうなんですね、分かりました」
「では、気を付けていってらっしゃいませ」
レイナさんはそういうとお辞儀をして送り出してくれた。俺もお辞儀を返し、ギルドを後にする。本当にレイナさんといい、ガイルさんといいこの世界の人っていい人が多いんだろうか。運よくいい人ばかりに会っているだけなのかな。...もしかしてこれは幸運スキルの影響なのかな。
何はともあれ異世界での初仕事だ、頑張らないと...!
っとその前に比較的安全とはいえ森に行くんだから必要最低限の装備は用意していかないとな。今あまりお金ないけど最悪武器の一つぐらい買わないと...
俺はフーリットの森に向かう前に装備を整えるためこの町にある装備屋に向かうことにした。場所はレイナさんと別れる前にちゃんと聞いておいた。この町にはいくつか装備屋があるのだが教えてもらったお店はレイナさんのオススメの装備屋らしい。ちなみに細かい地理情報に関しては全知辞書さんは回答してくれないのでこういう情報については人に聞くしかないのである。
装備を買うのはいいのだけど、今の所持金で足りるかな。どの世界でもお金が少ないことが悩みの種になるもんだな...
俺は改めて今世こそ幸せに生きるためにお金はしっかり稼ごうと決意するのだった。