プロローグ In the Magic
ある世界には魔法というものが存在していた。それらは8つの属性に分けられ、一人一属性を扱えるよう親から子へと遺伝され受け継がれてきた。
火、水、風、電気、氷、金属、光、闇。これらが発見されるや否や、この世界の人類はまたたく間に文明を発展させていった。着火に原始的な手段を必要とせず、飲料水は半ば無限に生成可能であり、強大な風で天候を意のままに操り、発電は人間が直接行い、あらゆる液体を固体へと容易く変化させ、用途にあわせた金属を生成し、闇を明るく照らせば光をかき消し暗くもする。
この8つの力で互いに助け合い、協力し合うことで人々は高度な文明を築くことができた。しかし、力というものは時として強大な悪へと変貌する。文明が発展していくに連れ、犯罪という人間の悪い面も増えていく。魔法というものは生活に必須なもの、言わばライフラインであり、犯罪にうってつけの道具でもある。プロであれば証拠一つ残さず人間を屠りさることなど容易である。
これらの悪事に終止符を打つべく発足されたのが魔術自衛隊、通称術隊。彼らは魔法を持って魔法を制す。選りすぐりのエリートのみがなれるその職業は世界中で指定された特定の学院を卒業しなければ術隊に入る資格すら得ることができない。
それら学院の中でもトップスリーに入ると言われる第二術隊学院に、一人の少年が入学しようとしていた。
名はセルシオ、氷属性魔法の使いである。氷属性の父、水属性の母から生まれ、仲睦まじい家庭に生まれた彼はこの世の悪を消さんと覚悟を決め、学院の門扉を叩く。
これから紡がれるのはセルシオが一流の術隊になるまでの冒険である。それは過酷な、延々続く茨の道であるがセルシオは屈しない。きっとその先に、皆が憧れる明るい世界が待っていると信じて。