特別な力と過去{済}
ネフロスは止血するため、涼香に噛まれた左手を持っていた布で巻きつけ応急処置をほどこした。
「何なんだ。その女は⁉︎」
「ネフロス。フッ。痛そうだなぁ。その左手、大丈夫なのか?」
ガディスはそう言いながらネフロスの方へと歩みよる。
「ガディス。この女は何者なんだ?お前なにを隠している!」
「お前なぁ。普通に考えて、敵にハイそうですかって素直に言う奴がどこにいる」
「フッ。確かにそうだな。だが、もう一つ気になったんだが。ガディス、お前の隣にいる男は何者だ?先程、魔法ではない力を使い、炎を操っていたようだが」
ネフロスはそう言い要の方をみた。
「それに、見慣れない瞳にその黒髪。その女の顔はみれなかったが。やはり黒髪だった」
するとそれを聞いたラゴスが、あることを思いだし話しはじめる。
「ネフロス。これは本に書かれてたことなんだけど。昔は頻繁に異世界から迷いくる者たちがいたって」
「ラゴス!昔、そんなことがあったのか」
「うん。それでその中に、この世界では見慣れない、黒髪に黒い瞳の者たちもいたって話が書いてあった」
ラゴスは少し間をおき再び話しだした。
「そして、異世界の者には特別な力が宿り。その中でも黒髪に黒い瞳の者は、その特別な力に目覚め更に覚醒した時、他の者たちをも凌ぐ力を発揮すると……」
「ラゴス!それは、本当なのか⁉︎」
ネフロスとラゴスは、要の方に顔を向けるとじっとみつめる。
(ちょ、ちょっと待て!今あの2人が言っていたことが事実なら。俺は……。いや、涼香もか)
(なるほど。今の話が本当なら。あの女もだがこの男の方も、アイツらに渡すわけにはいかない。どうにかして、この場を乗り切らねばな)
要とガディスはネフロス達をみるとお互い顔を見合わせた。
「クッ。どうしたらいい。なにかないのかよ!この場を切り抜ける方法がぁー」
「お前の名は?」
「あ?なんだよこんな時に」
「俺はガディスだ。今からお前たちを助けるのに、名も知らないのではな。それと、あの女の名前も教えて欲しい」
「分かった。そういう事なら。俺は久瀬要でアイツの名は龍崎涼香だ。で、なにか策はあるのか?」
「ああ、ある。それと、これで確証が持てた」
「ガディス。それはどういう事なんだ?」
「これは祖父に聞いた話だ。祖父はまだ20歳ぐらいの頃、珍しい名前の者たちとあったらしい」
そう言うとガディスは昔のことを思いだしている。
「その者たちは、みたこともない服に黒髪と黒い瞳をしていた。そして祖父は、どこから来たのかと聞いた。だが、やはり聞いたことがない国の名を言っていたらしい」
「そ、それって……嘘だろう。過去にも俺たちのように、迷いこんだ奴らがいたのかよ」
要はそう言いながら考えていた。
「いや、さっきのラゴスとかいう奴が言ってた。確か黒髪と黒い瞳の者以外にも、この世界に迷い込んだ者たちがいたって。あぁーー……」
すると、要は頭を抱え叫んだ。
「おい!なにをそんなに興奮している」
「いや、悪い。興奮しているんじゃなく。ただ、俺は頭が混乱して、今にもショートしそうで……。頭の整理ができなくなってるだけなんだ」
「はぁ。そういう事か。なるほど、考えることが苦手なタイプというわけか。それなら分かった。頭は俺が補ってやる安心しろ」
「ガディス。なにをするつもりなんだ?」
「フッ。お前はただ俺の指示通り動けばいい。そして耳をかせ」
ガディスは要に耳打ちをし作戦を伝えた。
「分かった。その合図どおりにすればいいんだな」
「ああ。そういう事だ」
ガディスと要は顔を見合わせ頷くとネフロス達を睨みつける。
すると、ネフロスとラゴスは2人の様子をみて、なにかを企んでいることに気づいた。
そしてラゴスはガディスの動きを警戒しながら、ネフロスの方へと向かった。