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第42話 また、お前たちか

 ほぼ丸1日の戦いにより下位王種リトルデビルをなんとか降し、わずかな休息の後、僕たちは聖都への帰路にあった。下位とは言え王種リトルデビルは巨体であり、魔法の鞄には入らなかったため、血抜きをしたうえで細目の木を切って作った簡易の運搬台に括り付けて搬送している。そして僕はミーアと少し話をして、勇者様に伝えた。
「勇者様、このリトルデビルを持ってギルドに行ってください」
「フェイウェル殿」
「そして、そこで討伐の際に結界が余波で壊れたことにでもすればいいでしょう」
「な、フェイウェル殿は一緒に行ってくださらんのか」
「僕とミーアは既に目立ちすぎています。これ以上の注目は避けたいところなので」
「しかし、それでは貴殿らの功績が……」
「僕とミーアがやったことは単にリトルデビルの気を引いただけです。実際に傷を与え倒したのは勇者様です。なんの問題もないでしょう」
「フェイ、ミーア。それはちょっと無理があると思う」
「そうかな。勇者様がいれば下位王種ならなんとか説得力あるんじゃないか」
「それはフェイとミーアの感覚ならそうかもしれない。でもね、あたしたちの感覚ではね、今回なんかフェイとミーアでリトルデビルの攻撃を全部引き受けてくれたからギーゼの聖剣を当てられただけなの。あたしたちだけだったらほとんど何もできずに終わってるわ」
「んん、でもそんなのは言わなきゃ分からないよ」
僕の返事にアーセルは食い下がる。
「あのね、あたし達は、一度中層の中位魔獣に負けてるの。そりゃ数はいたけど、それにしたって所詮は中位魔獣よ。そんなあたし達が、いきなり下位とは言え王種を討伐したって誰が信じるものですか。それにあたしとフェイ、ミーアが同じ村出身だってのは結構知ってる人がいるのよ、そうしたらもう何も言わなくてもあなた達の助力があったのはバレバレね。そしてこう言われるの『勇者パーティーは、メンバーの友人の手柄を横取りして平気な顔をしている』ってね」
「いや、さすがに手柄を横取りは無いと思うよ。勇者様が聖剣を振るわなければ王種には傷一つ付けられないのは間違いないんだから。実際目に剣を突き入れて弾かれた時には、本当にここでもダメなんだってかなりショックだったし」
そう言うと、アーセルは頭を抱えるようにして
「フェイ、まずね、普通はね、王種の目に剣を突き入れることなんてできないからね。ミーアもそうよ、何あのリトルデビルの攻撃をひらりひらりと躱して2刀短剣でバシバシ切り込んだり突き入れたり。あなた達2人の動きって瞬間移動の魔道具か何か使ってんじゃないのって感じよ」
「それでもなあ、結局僕たちの攻撃は王種には通らなかったからね」
「だからあ、ギーゼの攻撃を当てられるように誘導して、あたし達にリトルデビルの敵意が来ないようにコントロールしてくれてたでしょ」


ギルドの受付ホールでは小さな騒めきが消えない。
「なんでサウザンドブレイカーとトルネードレディが勇者パーティーと一緒にいるんだ」
「勇者パーティーの聖女と二人が同じ村の出身だってことだから、そのつながりじゃないのか」
「でも、あの時の騒ぎ知ってるだろ。どう見ても不仲だったぞ」
「それよりあれ見たか」
「ああ、見たことのない魔獣だな」

「ハモンド夫妻、そして勇者様とパーティーメンバーの皆さんこちらへどうぞ」
周りの好奇の視線の中、僕たちはレーアさんに案内されてマスタールームへ移動する。

「また、お前達か……」
「または無いでしょうゲーリックさん」
「で、今度はなんだ」
「王種です」
ゲーリックさんの顔色が変わった。

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