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そして王城へ

セバスチャンの語りはまだ続く。
「そうして【永死信号《デス・サイン》】を受け太刀で粉々に砕くと、ゆらり立ち上がってコーホーを斬撃しました。その時私の目には、カラード様と【聖剣】が共に赤いオーラで包まれたように見えました。そして一瞬の後、オーラが晴れると同時にコーホーは倒されており、カラード様も倒れられていたのです。私は不思議でなりませんでした。正直なところ、HPを0にされて【永死信号《デス・サイン》】に貫かれようとした人間が復活するわけがないのです。しかし本当に記憶がないと知り、私は直感しました。《《カラード様は、暴走した【聖剣】に取り込まれていたのだと》》。」
セバスチャンの語りはそこで止んだ。俺はまだ訳が分からない。暴走した【聖剣】に取り込まれていた?それで記憶がないのは分かるが、じゃあ何で【聖剣】が暴走したのだろう。俺が何かしたわけではないはずだ。何故だ?

「取りあえず王城に向かいましょう。」
セバスチャンは話題を変え、そう言った。なぜ王城に行かなければならないのかは容易に想像できる。魔王討伐のパーティーメンバーへの打診だろう。断るつもりなどみじんもない。祖父が俺を択んだことが明白になった以上、俺が【真の勇者】だという事はまごう事なき事実なのだろう。まあ、事実だからといって俺が信じられると言う訳でもない。なぜなら俺はつい先日までボクヨーの笑いものだったのだから。

「分かったじい。王城に向かおう。ただ、その前に一つだけ。」
俺はセバスチャンにそう言うと、それまで横たわっていたベッドから降りてセバスチャンの後ろに立てかけられている【聖剣】を持った。そうしておいて
「ステータス」
俺は呟く。この間は敵に近づくと勝手にステータスが表示されたが、見たい時に見れるはずだ。ただ、何と言えばいいのか分からなかったので取りあえずそのまま言ってみる。すると、あの時と同じように俺のステータス視界へ映った。

【カラード(真の勇者)・レベル3・HP:1000・攻撃:斬撃Lv.2・防御:簡易シールドLv.1・魔法:なし・スキル:一撃必殺・装備:聖剣】
レベルとかHPとか攻撃のレベルが少しずつ上がっている。恐らくコーホーを倒した経験値でレベルが上がったのだろう。HPはレベルに依存するのか。攻撃とか防御とかのレベルは……。それらを使えば上がるのか?
「閉じて」
と言うとステータスは消えていく。とは言え、ステータスは本人しか見えないようなので、セバスチャン視点から見れば一人言を言っているに過ぎないのだろう。

「すまんじい。多少待たせたな。」
視界からステータスを消した俺は、待たせたことを詫びた。しかし
「何をおっしゃいますカラード様。このセバスチャン、老いぼれながら【真の勇者】のお役に立てればそれでいいのです。いくらでも、お待ち申し上げますよ」
セバスチャンは温厚な顔でそう言うと、笑顔になった。俺は外に向けて歩き出す。セバスチャンはその横を歩き出した。

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