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第十三話 ミルと狩り?


「リン。おはよう」

「マヤ?」

「うん!」「リン。今日は、マヤが身体を使う」

 二人で取り決めでもしたのか?
 ミルが妖精の姿で、俺の肩に止まる。

「リン。僕。今日は、ロルフと神殿の調整を行うけどいい?」

「え?調整なら俺が行うぞ?それに、言ってくれたら、施設を作るぞ?」

「・・・。リン。僕にやらせて、お願い」

「・・・。わかった。無理するなよ?神殿の調整には魔力を使うぞ」

「うん!大丈夫だよ!ありがとう」

 マヤがミルの止まっていない方向から抱きついてきて、頬に唇をあてる。

「マヤ!」

 ミルが、俺の耳元で大きな声を上げるが、マヤは気にもとめないで、部屋から出ていく。ドアを閉める時に、意味ありげにミルを見ていたので、約束以外のことをしたのだろう。

「ミル?」

「ごめん。リン。あのね」

「ん?」

「僕と一緒に狩りに行って欲しい。ダメ?」

「狩り?いいけど、どこに行く?目立つ場所は避けたほうがいいよな?」

「うん。ヒューマに聞いたら、近場に意識がない魔物たちが溜まっている。湧いてくる場所がある。魔力溜まりがあるみたいだから、その場所の調査を兼ねて・・・。どうかな?」

「俺に問題は無いけど・・・。ミル。その姿で戦えるのか?」

「あっ!そう、この姿で戦えるのか、確認したい」

 取って付けたような理由だ。
 なにかを隠しているようだ。聞いても、教えてくれる様子はない。

「ミル。スキルは使えるのか?」

「うん。剣技は無理だけど、魔法系は大丈夫。だから、戦闘も大丈夫」

「なぁステータスを見ていいか?」

「僕の?許可なんて必要ないよ?」

 ミルの許可を得て、鑑定を使って、ミルのステータスを表示させた。

体力:280(-60)
魔力:360(+1200)
腕力:190(-100)
敏捷性:190(+250)
魅力:100
魔法:青(3(+1))・赤(3)・黄(1(+2))・灰(1)・黒(2(+1))
スキル:隠蔽、(隠蔽)魔法の吸収、(隠蔽)剣技の吸収、念話
ユニークスキル:(隠蔽)鑑定
エクストラスキル:?????(隠蔽)(1)
エクストラスキル:融合(マヤ・アルセイド)

「え?すごいな」

「どうしたの?」

「数字が2つになっている」

「それは、マヤの能力らしいけど、よくわからない。でも、僕の本体?は、マヤと一緒らしい」

「うーん。今後、マヤを交えて・・・。無理だな。俺とミルで検証しないとわからないよな」

「うん。僕とマヤのステータスを足したのが、僕たちのステータス」

「そうか・・・。そうなると、妖精体に、魔力を振り分けてしまっていないか?」

「あっ。違う。妖精は、僕であって、僕じゃなくて、うー。上手く説明できない」

「ステータスから予想すると、マヤとミルのステータスの合計を振り分けているように見える。魔力だけは、ミルが全部もらっているように見える。スキルは共通になるのか?」

「そんな説明をされた。それから、魔力は二人で身体・・・。今は、マヤの中に存在している物を使う。妖精は、魔力の塊みたいな物だから、その分だけ多く見えるけど、魔力はマヤが管理する」

「へぇ・・・。そうなると、妖精が魔法を使って、人が剣技を使うなんてことができるのか?」

「うん!でも、スキルが発動できるのか・・・。不安だから、リンに付き合って欲しい」

「わかった。そういう話なら、戦闘力を確認する必要もあるな。ブロッホ」

 後ろからついてきていたブロッホに声をかける。ドアの前で、待機していたようだ。

「はっ。ヒューマに確認をします。護衛は、アウレイアとアイルとリデルを付けます」

「多くないか?」

「いえ、リン様だけではなく、ミル様もご一緒なら少ないくらいです」

 ブロッホが大げさに言いすぎているように感じるが、眷属たちの総意なら受け入れるほうがいいだろう。
 俺は大丈夫だとしても、ミルやマヤが怪我をするのは避けたい。

「それで、ミルが言っていた場所はわかるのか?」

「はい。アイルの眷属が確認をしました」

「わかった」

 ブロッホが、俺の前を歩く。
 転移門に入っていった。すぐに戻ってきた。安全の確認を行ったと言っているが、ヒューマが管理している場所なので、確認の必要性は感じていない。

 転移門を出ると、ヒューマだけではなく、リザードマンたちが片膝をついて控えていた。
 どうやら、ブロッホが先に転移門に入ったのは、先触れの意味も存在していたようだ。

「大げさにしなくていい。ヒューマ。それで、魔力溜まりができているのか?」

「はい。初期な物ですが・・・」

「魔物は?」

「意識なき者が湧いています」

「種族は?」

「いろいろです」

 ヒューマの言い方から、ゴブリンやコボルトなどの魔物が湧いているのだろう。
 ヴェルデもビアンコも気にしないと思うのだが、ヒューマとしては種族名を口にしたくはないのだろう。

「わかった。俺と、ミルと、アイルとリデルで対処する。アウレイアは、周辺の警戒に当たってくれ」

「はっ。我々は、周辺に誘い込まれる者がいないか、警戒しています」

「わかった。ミル。アイル。リデル。準備はいいか?」

 アイルは、ひと鳴きして応える。リデルは、アイルの上で俺を見てうなずく。魔力溜まりだと、リデルが活躍するだろう。

「大丈夫!」

 ミルは、俺の肩からアイルの上に移動した。

 アイルが場所を知っているらしいので、先導を任せる。
 20分くらい走ったら、魔物がいる気配がしている。

「ミル。どうする?俺がやろうか?単体みたいだから、魔法で仕留める?」

「うーん。リンに任せるよ。僕は、魔力溜まりを消す」

「わかった」

 どうやら、ミルの目的は魔力溜まりにあるようだ。
 さくっと、ゴブリンを倒した。リデルが、死体を燃やしている。魔石が残らないかと思ったが、何も残っていない。生まれたばかりのゴブリンだと、魔石が残る方が少ないらしい。素材として使える場所もないので、燃やすか、埋めるかの選択肢しか存在しない。埋めてしまうのは処理としては楽だが、エントや植物系の魔物が生まれてしまう可能性ある。または、魔力溜まりが発生する可能性があるために、素材の剥ぎ取りの必要がなければ、処理としては燃やしたほうがいい。

「ミル?」

 先頭を進んでいたアイルが止まる。
 ミルが、アイルの上から木に移動する。

「リン。魔力溜まりは、5メートルくらい先にある。魔物が湧いて出てくるから、討伐をお願い」

「わかった」

 ミルは、前を見据えている。

「来た!」

 ミルの言葉通りに、魔物たちが出現する。ゴブリンやコボルトだ、魔虫も含まれているが、単体で湧いて出ているので、討伐するのは難しくはない。

 ミルがどうやってタイミングを測っているのかわからないが、湧いて出る魔物の種別や数を的確に把握している。

「リン!大物が湧きそう」

 ミルが警戒の声を発する。

「アイルは、俺の横に、リデルはミルのところで防御を優先!リデル、ミルを頼む!」

 俺の言葉で、二匹は行動を開始した。

「グレートウルフか?」

「来る!」

「わかった。アイル。俺が、止める」

 アイルが横に移動して、グレートウルフの首を狙う。単調な攻撃だ。爪での攻撃を2回行ったら、噛みつき攻撃、距離が離れていたら突進してくる。ヘイト管理を間違えなければ、このまま倒しきれそうだ。
 体力が多かったのだろうか、倒し切るのに5分の時間が必要だった。

「リデル。頼む」

 リデルは、生命活動を終えたグレートウルフの横に立ってスキルを使用する。毛皮は素材として使えるのに、持って帰る予定だが、肉は食用にはならない。リデルのスキルで、血抜きをする。解体は無理だが、持てる量は減らしておきたい。

「リン!」

「どうした?」

「魔力溜まりが姿を表すよ」

「え?」

 ミルが、木の上からダイブした。
 空気の層が渦になっているように見える場所に突入していくのがスローモーションのように見えている。

 ミルの目的なのだろうけど、魔力溜まりに突入するのなら、やる前に教えておいて欲しかった。

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