バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

16話

ハロルドに聞いた話を要約すると、実の姉と言う訳では無い。
けれど血の繋がりは確かで、彼らの母親の妹の娘。つまりは従姉弟同士と言うことになる。

年齢は少し離れており、ハロルド達の長兄と同世代。
ライラ陛下の母親はライラ陛下の産後少しして体調を崩し、(今は元気)ハロルド達の母親が乳母として長兄と一緒に育てたという。
その後もライラ陛下の両親(先代陛下と王妃だから)が忙しいため
、頻繁にハロルド家に預けられている。

リックの自我が芽生えた頃、末っ子を妊娠していてリックの世話が出来なかった母親に変わり、ライラ陛下(当時は王女)が世話を買ってでたため、リックはライラ陛下を姉と呼び慕っている。その過程で、リックもジャム好きが芽生えたらしい。

「僕は、あの家でジャム専門のカフェを開きたいんです。でも、レシピはいっぱいあるんですけど、これだと思えるジャムに出会えなくて…。自分で作ってたら時間も無くて……。そうしたら、ココロさんに頂いたジャムを食べた時にコレだ!って、思ったんです!」

そう力説してくるリックに僅かながらたじろぐ。
キラキラした目で懇願されれば断れる訳もなく(断るつもりも無いが)、了承した。

「あ、ありがとうございます!種類はライラ姉さんのと同じで大丈夫です!もちろん報酬もお支払いします!ただ…」
「あ、もしかして配達の事?気にしないで。全部送るだけだと出不精になっちゃう可能性あるし、買い物も済ませられるから」
「あ、なるほど。では、お願いします」

という事で、1日に2つ(内容は同じ)の仕事を引き受けた。
そしてライラ陛下は仕事道具として、深めの大鍋と、大きめの瓶2つを頂いた。
そのお礼も兼ねて、次の月曜日までには日数が空くので、マーマレードとラズベリーのジャムを渡したらかなり喜ばれた。


「へぇー、それじゃあその耳はお祖母さんの」
「はい。まだ僕が小さい頃に亡くなったので、あまり覚えてないんですが、お菓子作りの能力で、とっても美味しかったのは覚えてます!それとジャムを合わせれないかなって、ずっと考えてて」
「そうなんだ」

南の国の家に戻り、せっかくだからジャムを使ったお菓子があるからと、リックの家兼開店の目処がたったカフェに引き止められた。
ハロルドは、こちらに戻る前に用事が出来たとどこかへ行ってしまったので、今はリックと2人のんびりオヤツタイムである。
そこでリックの犬耳が、お祖母さんから引き継いだものだと知った。
今まではどこか遠慮がちだったリックも、今回の件で大分打ち解けられた気がする。

しばらく喋って、お昼も少し過ぎた時間になったため、お暇する事にした。

「じゃあまた、月曜日…の前にも来るかもしれないけど」
「はい、よろしくお願いします!」

別れを告げてクッキーの引く馬車に乗り込む。
帰り際、カフェとなる建物の入口を見て、フワリと何かが浮かんできたが、それが何なのかわかる前に消えてしまった。


「さてと、今日は何にしようか」

家に着いた時にはもうオヤツの時間が近づいていた。
オヤツの準備はしていない。いつ頃帰れるか分からなかったのと、出かける前に時間があまり無かったからからだ。
けれど、以外にも早く帰宅できた。
オヤツにしようにも、リックと共に少し食べてきているので、甘い物の気分では無い。

「あ、たまにはスナック系でもいいかな」

オヤツというと甘いものだと、妖精達が思ってしまわない前に、こういうのもあると知ってもらうのも良いだろう。

「んーそれならやっぱり…」

スナック菓子でメジャー、尚且つ簡単に出来るものと言えば。
収納箱から大きいサイズのジャガイモを1つ取り出す。

「ポテトチップスだよね!」

先ずは外に設置した水道でジャガイモの土を落とす。収穫するさい、土等の汚れはそのままになっている。
キッチンでも改めてキレイに洗い、塩水を作ってその上でスライスして行く。
全部スライスし終えたら、少しの間塩水につけておいてから、表面を綺麗にしていく。
水分を飛ばす時は、スイとリンの力を借りた。
スイに水分を取ってもらい、リンに乾かしてもらう。天日干しの代わりだ。

油を温めて少しずつ揚げていく。
全部揚がったところで、お皿2つ分。
一方は塩だけ、もう一方には青のりと塩を、それぞれまぶして、完成だ。

「皆ーオヤツだよー!」
「はーい」
「ミー!」

妖精達が集まってくる中、ユキも一緒にやって来る。
遊び回ってお腹が空いたのだろう。ユキにもオヤツを用意する。

「じゃあ少しだけね」

オヤツというより、小分けにあげているキャットフードだが。
リアラが言うには、食事を阻害してしまう可能性があるので、まだあげない方がいいらしい。
ここはプロの言う事に従っておく。

「はい、どうぞ」

お皿に少しだけよそってあげれば、すぐに食べ始めた。
そのユキの傍らで、ココロ達も食べることにする。

「こっちがうす塩味で、こっちがのり塩。好きな方食べて」
「はーい!」
「いただきまーす」
「いただきます」

こっちがいい、こっちにすると、わーきゃー言いながら1枚ずつ手に取り、そのままかじりつく子もいれば、パリンと割ってから口に入れる子もいる。
1枚食べ終われば、それぞれ食べていない方のポテトチップスを手に取り出す、同じ光景。
今までが甘いお菓子ばかりだったが、スナック系も好評のようだ。

「こっちがすきー」
「どっちもおいしー!」

好みはやはりバラバラで、どちらか片方の子もいれば、両方好きと言う子もいる。
その様子を見ていれば、ライがやってきてココロに尋ねる。

「ココロはー?」
「んー私もどっちもかな」
「どっちもだってー!」
「おそろーい!」

そんな話をしながら、楽しいオヤツタイムは過ぎていった。


大きなジャガイモから作ったポテトチップスは少し残ってしまった。
せっかくなので砕いてサラダにかければ、そんな食べ方もあるのかと驚いていた。
ちなみにFPが、いつもより大きく回復していたが、その理由を探るのはまた今度にしておいた。

しおり