カミサマの順位
結局……ルースの出現によって、俺の立場は一瞬のうちに逆転しちまった。
この島では神様は獣人の姿をしているのは分かるが、それ以上に「白い色」は混じり気のない存在。つまりは最も上に位置するんだそうだ。
ということで、俺たちは島で一番大きな家屋に連れて行かれた。
木の皮や蔦で編まれた頑丈な屋根。壁すら無いがそこには何十人もの島民が俺たちを待ち構えていた。
この島ではルースが神様の中でもトップクラスの神。
んでもって俺は……うん。あいつよりずっと低い席に座らされることとなった。本来ならあそこに俺がいたはずなのにな。
たくさんの島民に引っ張りだこにされたのがかなりショックだったのか、タージアは俺の傍でずっと震えていた。こいつは騒がしいのも嫌いだしな……
「ラッシュ様……どこへも行かないでくださいね」
目の前には生きた神様の到来を待ちわびていたやつらが、意味不明な言葉で騒ぎ立ててるしで……分かってる。神様として振る舞えってシナリオがあることは。だが付き添いで来たはずのルースが持てはやされることになってしまって、どうすりゃいいんだか。
「いや、僕だって困ってますよ。すぐに帰れると思っていたのに、これじゃ……」
ナンバー2に落ちた俺とは打って変わって、ルースのもとには山ほど美味そうな料理や酒が運ばれてきてるし。まあ、これが俺でなくてよかったかな。酒ダメだし。と無理矢理自身に言いきかせる。
そんな宴もそろそろ佳境に差し掛かってきたところで、俺の前に二人の少女がやってきた。
「あなたの身の回りのお世話に参りました」んだと。双子のイファーとエファー。背格好からして、タージアよりちょっと下くらいだろうか。
いきなり俺のようなやつに出会ったからだろうか、二人のその顔には不安の色が見えている。
「お世話って……この子達にはちょっと荷が重すぎるのかもしれませんね」俺の後ろでタージアがボソリと。なるほどな。来客に失礼なことはやらかすまいと緊張しているに違いない。
もちろん、俺だってそんな堅苦しいことは嫌いだ。
「大丈夫、この方はこんな姿をしているけど、とても優しくて楽しいことが大好きな神様よ。できたらこの島を案内してもらえるかしら」
驚いた、あのタージアが自ら進んでこの子達に説明してくれるとは。それも俺の心の代弁までして。
「なんか、私と似た心を感じたんです……」と、彼女は俺に話した。
双子の顔がぱあっと明るくなった。
「よかった、戦いの神様、とても怖いって聞いてた。あたしたち二人とも、食べられちゃうんじゃないかって思ってたの」
イファーの方が姉だろうか。たどたどしい言葉で俺に話しかけてきた。
「食べやしないさ、俺たちはここの島のみんなと仲良くなるために遣わされてきたんだぜ」
二人の小さな頭にポンと手を置く。
これも神の力と言っていいかな? こうすればすぐに仲良くなれるんだ。
「バシャニー様、すごいおっきな手!」
「それに毛むくじゃらだ。ナウヴェルの手とは全然違う!」
「ナウヴェル……?」エファーが口にしたその言葉。初めて聞く名だ……先客でもいたのか?
「ナウヴェルね。ここに昔流れ着いた大きな鎧のひと。バシャニー様のことを教えてくれたんだ!」
な、なんなんだそれは……!?