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9話

保護した子猫を連れて、家に戻った。
いつの間にかいなくなっていたロズは、用が済んだ所で自動的に帰ってきたらしい。
…実際、どうやってあそこまで来たかも分かっていないが、助かったことに間違いはないが。

「わー、このこなーにー?」
「このこおむかえにいってたのー?」

馬車の振動は気にせず眠っていたが、やはり馬車を降りた時に起きた子猫は、最初にロズを見ているからか妖精達に対して驚いた様子はない。
猫は警戒心が強い動物ではあるが…。そういえば、猫は霊が見えるという意見もあったが、見慣れてるとか?いや、幽霊と妖精を一緒にしてはいけない。
とにかく、長時間木の上で動けなくなっていたのだから、お腹もすいているだろう。何か用意しないと…

「って、猫にあげれるのなんて家にはないよ…」

予定もなかったのだから当然だ。
今いる動物は草食動物(と鶏)ばかり。対して猫は肉食なので、食べるものは当然合わない。
しかも子猫。卒乳しているかどうかも分からないのだから、何をあげるのがベストなのか…。

「ん-、牛乳はあるけど猫にはあげれないしな…」

飛び回る妖精たちを追いかけて飛んだり跳ねたりしている様子(元気が出てきたみたいでよかった)を見て、さらに悩む。
このままではすぐにお腹を空かせてしまう。いや、もうすかせてるかもしれない。
さてどうしようかと考えていると、タブレットが通知を知らせた。

「?って、リアラから?」

連絡先を交換しただろうか。記憶にない。しかしそう表示されている(のは仕様らしい)。
何かあっただろうかと出てみることにした。

「…もしもし?」
「あ、ココロさん!さっきハロルドさんから連絡があって、子猫保護したんですって?」

なんと天の助けだった。もしかしたらハロルドが気を利かせて連絡をしてくれたのかもしれない。
以前の会話から、リアラと知り合ったことは話してあったから。

「そうなんです。今は元気に遊びまわってるので、病気とかはしてなさそうだけど…」

リアラなら子猫のご飯について相談出来る。何せブリーダーで動物の事には詳しいから。
今手元にある動物用の餌は草食用と鶏用しかなく、牛乳もあるがあげるのをためらっていることを話した。
何故猫に牛乳が良くないか、理由は知らなかったけれど詳しく教えてくれた。
一つ訂正するならば、あげてはいけないではなく、控えた方がいいのだそう。
与え方も間違えなければ、少量だけなら可能なのだとか。

けれど、乳牛しかないのかと聞かれて、ヤギのもあると答えたところ、それなら与えて大丈夫だという朗報を得た。
感謝と、明日見てもらうため店に行くことを伝え、通話を切る。
早速少量取り出して常温に温めて、大きさからして卒乳は終わっているだろうからとの事で、お皿に入れ替えながら、妖精達へ声をかける。

「さぁ、その子お腹すかせてるから連れてきて」
「はーい」

未だ遊びに夢中な子猫と妖精達に声をかける。
子猫は何かを察したのか、たたたっとこちらへ駆けてくる。

「みーみーみゃー!」

まるで"お腹すいた!早くちょうだい!"とでも言っているように、足によじ登り始めた。

「待って待って、今あげるから」

零さないようにそっと床においてあげれば、飛びつく勢いで飲み始めた。
ミルクが周りに飛び散る。お皿から飲むのが初めてで上手に飲めないのか、勢い余ってなのか。…多分両方だ。
しばらく眺めていると、お皿まで綺麗になめとって満足したのか、満ち足りた顔をあげた。

「みゃー」
「って、あー!顔中ミルクだらけにして!」

急いでタオルで拭いてあげる。
そのタオルでそのまま床に飛び散ったミルクもふき取る。これは今後掃除用だ。

「ん-、やっぱり少し体も汚れてるか。洗ってあげたいけど…」

子猫特有のフワフワの毛だけれど、所々土や何やらで汚れている。
このままにしておくわけにもいかないので、軽く洗ってあげたいが…。

「ロズ、この子シャワー大丈夫かな?」
「あらうのー?」

ロズに問いかけたが、スイが答えてきた。
洗うと言っても軽く流す程度だ。猫用シャンプーなんてもちろん持っていない。
買えるなら明日でもいいが、一晩中にいるとなると…

「うん、土で汚れちゃってるからね」
「きれいにできるよー」

今度はルトが入ってきた。
何をと思ってみていれば、子猫についた土汚れを綺麗に取り去り、外にポイっとした。
まさかそんなことまで出来るなんてと驚く。土関連なら何でもありなのか?
そんなことを考えながら、綺麗になった毛に触れる。さすがに土以外はとれていないので、やはり洗う必要が…

「きれいにするー」
「え?」

なさそうだった。考えている間にスイが洗い始めた。
子猫の全身をわしゃわしゃと床の上で洗っているのに、不思議な事に床が濡れていない。それに子猫が嫌がっていない…ん?洗われてることに気づいてない?キョトンとしてる。
洗い終えて全身の毛がペタンとなった。

「じゃあ風邪ひかないようにタオルで拭いて…」

全身しっとりしてる状態から、今度はタオルでわしゃわしゃと拭く。
だいぶ拭き取れてきたと思ったところで。

「「かわかす―」」

リンとフウが前に出て、子猫を温かい空気で包んだ。
空気は絶えず動き回りながら、水分を飛ばしていっている。
しばらくして風が止むと、ふわっふわな銀色の毛に包まれた子猫になった。

「おー、これはすごい」

一体何に驚いたのか。
妖精達の知られざる技(連携による猫のシャワー)か、土で薄汚れていた子猫が綺麗な銀色の毛をしていたことか。
その間にも、遊んでお腹を満たして身体をキレイにして満足したのか、子猫はウトウトし始めた。
今日はココロのベッドで寝て、必要なら買ってくれば良いだろう。
フカフカの布団に身体を預けて、子猫はまた、眠り始めた。

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