4話
眩しいほどの眼前緑色。
今出てきた森に生える木々の葉っぱが深緑なら、眼前に見える草原は浅緑だろうか。
暗い緑と明るい緑を間近で見比べると、違いがよくわかる。
一つ言えることがあれば、これを見続ければ目がよくなる事間違いないだろう。
「視力毎回2.0だったから意味ないか」
最近?では数値で表現することは無くなったらしいのを、たまたまTVで見て知ったが、やはりこちらの方がなじみがある。
ゆっくり進む馬車から草原を眺めていると、ポツポツと緑以外に目につくものが増えてくる。
それは建物だったり柵だったり、動くものであれば当然、人や動物もいる。
どうやらこの辺りは、畜産が盛んなようだ。近くの街で販売所があればありがたいのだが。
こちらの国では、他に狩りや漁業も盛んで、街によってはそれぞれに特化しているところもあるのだとか。
ちなみに、1番最初にたどり着いた街は、中央寄りに位置するのが、地図から分かる。ここからでは距離があり過ぎるので、行けるとしても時間がかかる。乗馬出来るようになったらか、もしくは国間を行き来出来るあの扉を使ったほうが早い。
行くかどうかは、勿論別として。
「あ、街見えてきた」
そんな事を考えている間に、街が見えてくる。
今まで見えていた建物が、一定の距離を置いてポツポツと建っていたのは、恐らく畜舎で間違いはないだろう。
そこから1番近い街なら動物達の購入場所、無くても情報を得る事は可能なはずだ。
その街に近づくにつれ、他にも馬車が街に向かって行く。
前に何台も並んだと思えば、後ろにも列を成している。
街までもう少しというところで、クッキーが歩みを止めた。
「ん?渋滞してるのかな?」
ずらりと並んだ馬車の列。1台分進んだかと思えば止まり、また進んで…。
街の出入り口で何かしているらしい。
出入り口が見えた所で、馬車が左右どちらかに誘導されているのが見えた。
しばらくしてココロの番が回ってきた。
男性が1人、こちらへやって来る。
「お待たせしました。許可証はお持ちですか?」
「え、許可証!?」
何だ、こちらでは街に入るのに許可証がいるのか。マズイ、持っていない。どうしよう。
と、一瞬で考える。
けれど、こんなココロの様子を怪しむでもなく、声をかけてきた男性は、サッと左手で進む方向を示してくれた。
「では、右手にお進み下さい。馬車を止めた先で、案内と表示されたブースへお入りください」
「あ、はい」
どうやら、許可証の有無で進む先が決められるようだ。
この先は何が有るのだろう。むしろこの街はどうなっているんだらうと考えながら少し進めば、見慣れた駐車場が見えてくる。
言われた通りに馬車を止め、案内のブースを探す。
少し離れた位置に、それを発見した。
近づけば、案内と腕章を着けたお姉さんが、こちらに気が付き、ニコリと微笑む。
「あの、ここに来るように言われたんですが…」
「はい、こちらは初めてですか?」
「そうです」
「こちらへは、出店しに?」
「?いえ、買い物です」
「では、右手側の通路をお進み下さい」
「わ、分かりました」
いや、まだ良くわかってないけど。結局、許可証は何だったんだろう。
示された通路を進んでいくと、ザワザワと音が聞こえてくる。しばらく進むと、扉が1つ。
他にはなにもないからココだろうかと、扉を開けると、賑やかな場所に出た。
「わ、な、何!?」
人々が行き交う。声も飛び交う。一体何が起こっているのか。
扉を開けた状態で固まっていると、あとから来た人がココロを追い越していく。邪魔にならないように場所を移動した。
「お祭り…じゃないよね?」
雰囲気は似ている。けれど、どこか違う。
はっきりと分かるのは、今が昼間だから。祭りは夜というのは、偏見だろうか。
しかし空腹を誘う、いい匂いが漂っているのは間違いない。
少し見て回ることにした。
「採れたての魚、見てかないかい?」
「新作の香水、お試し出来まーす!」
「今なら特別価格だ!」
あちこちから、いろんな声が飛んでくる。
しばらく見て歩いている間、聞こえてくる声から察するに、市が開かれているようだ。
聞き齧った情報では、この世界最大の市だそうだ。
一月に一つの国、転送ゲートが設置されている大型の街で、月の最終3日間開催される。
開催する国は順番が決まっていて、4月に東、5月に西、6月に南、7月に北、以降この順番で持ち回り。
開催する街は、特に順番は決められていないが、各王家が取り決めるのだそう。それでも、この街は、最近全然やらないーだとか、あの街ばかり…だとか、不満が起こらないようにある程度順番は決められているらしい。
出店は、出して問題ないと判断されれば許可証を発行され、どの国の市に出しても良い。先程の許可証はこのためだったようだ。そう言えば出店がどうのと聞かれた気がする。
出店の種類も様々で、野菜や畜産物が売られているかと思えば、両国間でタッグを組んだような屋台があったり、店舗を貸し切って中でファッションショーが開かれていたり。
少ないけれど、装飾系のお店も出ていた。
ちなみに市が開かれている間は、通常のお店は休みになる。
途中、街の案内板を見つけて、家畜屋がある事は分かったが、今日は買えそうに無かった。
「んー、タイミング悪かったかなー。あ、これ美味しい」
残念に思いながらも、チャッカリ串焼きとフレッシュジュースを買って食べ歩きしているココロである。
丁度お昼時で、匂いの誘惑に勝てなかったのだからしょうがないと思いながら、串焼きの肉にかぶり付く。これこそ祭り(違う)の醍醐味だ。
途中見かけた、好みの服を数着買って、目的の物は買えなかったが満足して帰ることにした。