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20話

「ココロ、どうしたの?」
「なやみごと?」

難しい顔をしていたのか妖精達が集まってくる。
彼らの一部にも関わってくるかもしれないので、相談してみることにした。

「えっと、これからここで生活していくために、電気や水はどうしようかと思って。」

生活に必要なエネルギー。水、電気、ガス。
ガスは、車が普及しなかった理由が、燃料なかったということから、油田が無いか限りなく少ないかのどちらかなので、無いものとして見ている。
けれど、水は当然生きるために必要で、電気も家電が広まっているのなら必要不可欠なので、普及しているはずだ。
けれど、ここは外の世界から隔離されている状態(出入りは可能だが)なので、上下水道や電線は設置出来ないと、ハロルドから言われていた。
となるとやはり、彼らの力を借りてどうにかするしかない。

そしてもう1つ。昨日気が付いた『FP』について。心の中では『フェアリーポイント』だろうと確信しているが、それ以外まだ分かっていない。
今後使い続ける必要があるからこそ、詳しく知っておく必要があった。

「まず皆に確認したいんだけど、この…FPって、何かをしてもらうと減っていくもの、であってる?」
「そうだよー」
「減り方に決まりある?例えば、大きい物作ったりしたらたくさん減るとか」
「んー?」

1つ目の質問は即答だった。しかし2つ目の質問には一斉に首を傾げる。
次第に近くにいるもの同士で「どうだったっけ?」「同じじゃない?」「たくさん減るよ」等と話し合い始める。
そして結果は、よく分からないとの事だった。

「んー、じゃあ確かめてみるしかないかな…」

念の為、今の数値を確認する。
朝起きたときにすべて回復していたのが今、900を上回っている。
昨日は家を急ピッチで建て、中も色々改装した。大きな物を作ったし、細かなところも色々やった。
そして今日は、肥料づくりと馬小屋作り。家の中を少しいじったぐらい。
これだけではいまいち、減り方が分からない。
とは言え、家のように大きな物を作ることはしばらくないだろうから、気にしなくてもいいはずだ、多分、きっと…


「と言うわけで!」

ちょっとだけ面倒な事を考えるのを放棄したタイミングで、軽く夕食を取り(HPは食事で回復した)、もう一度外へ出た。
日は沈んでおり、もう薄暗くなっている時間であるが、検証方法は1つしか思い浮かばなかった。

「朝の作業をもう一度します!」
「はーい!」

嫌がる素振りも見せず、嬉しそうにココロについてくる妖精達。
その姿にほっこりしつつも、朝行った作業を振り返る。
この広い土地を使って畑を作ると決め、最初なのでサッカーグラウンド程の広さを整備した。
草刈りして穴をほり、草を敷き詰めて火を着ける。全てに火が通ったら消化して土を被せる。
オレンジと藍の妖精が2回ずつ、グレーと赤、青の妖精が1回ずつ、計7回の工程で、どれぐらい減るのだろうか。

「じゃ、お願いします!」
「はーい!」

タブレットを確認しながら、まずは朝と同じ大きさで試す。
あまり時間はかからず、朝作った土の風景が、2倍に増えた。

「んー、いまので35減ったって事は、1度に5ってとこか。
じゃあ次は1m…これぐらいの長さで四角くお願い」
「分かったー」

そう返事が来てすぐに、掘り返された土が目の前に現れる。
広さによってかかる時間は変わるようだ。それならぱポイントも少なくなるのかと確認してみると、先程と同じく35減っていた。

「んー?大きさは関係ないのかな?念の為もう一回。最初の半分の大きさで」

結論から言って、減る数は変わらなかった。
どうやら一度に使うポイントは5で固定されているようだ。大きさは関係無い。

と言う事で、始めの問題に再びたどり着く。
生活に欠かせない電気と水を使うのに、一体どれだけ消費されるのか。
そう考え始めると、青と黒の妖精が並んでこちらを見ているのに気が付いた。

「ココロ」
「なぁに?」
「おみずと」
「でんき、つかう?」
「え?うん、どっちも、毎日家で使いたいんだけど…」

タイミングからして、聞かれているのはそう言うことだとすぐに分かった。
2人の妖精は、ココロの返事を聞いてから頷き合う。

「きて」
「え?」
「おうち」

右手を青の妖精、左手を黒の妖精に。それぞれ引かれる形で家の中に入る。他の妖精達も、後をついてきた。
パタンとドアが閉まると、妖精達が八方へ散っていく。と思ったらすぐに戻ってきた。

「だいじょうぶー」
「ぜんぶしまってた!」
「ありがとー!」
「え、何が始まるの?」

何が起こるのか分からないココロを置いてけぼりに、フッと、辺りが暗くなる。
電気は消えていない。むしろつけていない。という事は、黄色の妖精が力を止めたのだろう。
外ももう暗くなっているので、殆ど何も見えない。暗所恐怖症じゃなくて良かったと、呑気なことを考えていると、青い光が一度だけ瞬く。
青の光が消える間際に、黒い光が続けて光る。
一体何が起こったんだろうと不思議に思っていると、『カチッ』と何かを押す音が聞こえ、辺りに光が戻った。
その光の出どころは天井。いつの間に設置されたのか、天井の照明器具が煌々と輝いていた。

「もしかして、電気が通ったの!?」
「そうだよー」
「おみずもつかえるよー」
「おぉ!」

早速確かめてみよう!と向かった先は浴室。
バスタブに湯を張るために蛇口をひねると、勢いよく水が流れ出す。
しばらく眺めていると湯気が立ち始め、水がお湯に変わった事が見て取れた。

「おぉー!やっとお風呂につかれる!」

ゆっくり湯船に浸かるのはいつぶりだろうか。
以前は殆どシャワーを浴びるのみだった。浸かる時間を睡眠に回すために。
こちらに来た最初の日は…混乱の連続に疲れてそのまま寝てしまった。
昨日は…うん、あれは凄かった。妖精の能力組み合わせるとあぁなるのかと思った瞬間だった。
とは言え、やはり湯船に浸かれるのは嬉しい。

湯が張り終わり、早速浸かる事にする。
心地良い暖かさに、全身の疲れが取れた気がする。

「あ、そうだ」

忘れていた。水と電気を通すために、ポイントがどれほど減ったのか。
浴室から出て、早速タブレットを確認する。

「ん?かなり減ってる」

外にいたときと比べて、FPは丁度100減っていた。ちなみに体力は回復していたが少しずつ下がり始めている。
100という事は50ずつだろうか?他には使っていないし。
軽くのどが渇いたので水を1杯飲む。数値に変動はなかった。

「んー?これはもしかして…」

憶測だが、家全体に水と電気の力がかけられたのだろうか。それぞれ50ずつ使って。
このまま明日以降使えるのか、はたまた明日もう一度力を使ってもらう必要があるのか、それは明日にならないと分からない事だ。



まだ細々と必要な物が足りていない部分はもちろんあるが、暮らしていくのに充分な設備は整った。
1日動きっぱなしだったのですでに睡魔がやってきている。
寝る準備を整えて、ココロは再びフカフカなベッドへ潜り込んだ。

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