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4話

扉を潜った先に見えたのは、最初に着いた街とは比べられない程の大都会だった。

高層ビルが立ち並び、それを繋ぐように透明なチューブが間を通っており。時々その中を何かが通り抜けている。
地球で似ている所を上げるとするならば、東京やニューヨーク辺りを思い浮かべるが、あまりしっくり来ない。
1番近い物で上げるなら、漫画やアニメに出てくる、未来都市とかだろうか。

「えった、高い!?」

ちなみにココロは、それらを僅かに見下ろしていることに気づくまで多少時間がかかった。
つまり、高層ビルの中の一つの中にいるということだろう。目線を遠くへ向けると、いくつものビルの屋上が見える

「ここは中央国家のさらに中央に位置する、この世界で1番高いビルだよ。そして、現導き手のいるところ」

行こうと言うハロルドに、置いてかれないように急いで着いていく。


中はあまり広くなく、少し歩けば大きな扉の前にたどり着いた。
ハロルドが手をかざすとその扉は僅かな光を発し、音もなく上に登っていく。
扉が見えなくなり、中の様子が伺えるようになった。
扉の規模からするとあまり広くない部屋の中、その中央に、誰かがいた。
その人の前に向き合うように椅子が一脚置かれている。

「あそこにいるのが曾祖父さん。君が会うべき、本当の導き手だ」

部屋の中は少し薄暗いが、彼が手招きしているのが見える。
それに引かれるように足が進み、気がつけば置かれていた椅子へと座っていた。
その瞬間、淡い光がココロを照らす。
その光は足元からで、不思議なもん…恐らくは魔法陣と呼ばれるもの…が描かれていた。

「さぁ、手を出して」

いつの間にかハロルドが近くまで来ていた。
紋様の外にいるが、その声はハッキリ届く。
言われるがまま手を差し出すと、紋様よりも強い光が手の中で光り出す
光はくるくると周り、しばらくすると輝きを失いながら手の中に消えていった。
そして手の中に、少し大きめな四角い何かが残る。
それをよく見ようと腕を引いた途端、ガタンッと物音がしあ

「!?」
「っと。危ない危ない」

気がつくと辺りは明るくなり、目の前にいた人はハロルドに抱えられていた。恐らく椅子から落ちたのだろう

「だ、大丈夫なの?」

突然のことに何かしてしまったのかとしどろもどろに問うも、ハロルドは慣れた手つきで抱え直す。

「大丈夫大丈夫。もう歳だから、力使うとすぐ寝ちゃうんだよ」

耳をすませば、小さな寝息が聞こえてくる。
ハロルドはココロより歳上なのは確かだ(ちなみにココロは大卒の社会人数年目)。そのハロルドの曾祖父さんと言うからには、疲れやすくて当然だろう。

部屋で休ませてくると言うハロルドを待ちながら、ココロは手元に残った物を見る

「タブレット…だよね?」

それは明らかに、見慣れたタブレットと同じ形をしていた。
唯一違うところをあげるとするならば、充電端末を繋げるところが無いという事だろうか。
画面…と思われる所へ触れても反応は見られない。バッテリーでも切れているのだろか


しばらくすると、ハロルドが戻ってきた。

「お待たせ。さ、忙しないけど次行くよ」
「え、待って。さっきのってやっぱり…」
「能力を定着させたんだよ。だけどまだ、不十分な所があるから補完させないと使えないんだ」

そう言いながらココロの手を引き、部屋を出る。
気になって後ろを振り向くと、扉がしまり部屋の中は見えなくなっていた。

廊下を少し進むと、別の扉が見える。
先程とは別に、扉の横に何かがついている。それは見知ったもので、その扉は恐らく…

「さぁ、乗って」

やはりというか、エレベーターだった。
扉が閉まり、その横についている機械をハロルドは操作している。
直ぐに上か下へ移動するかと思っていたが、あの慣れた振動はやってこない。
首を傾げていると、直ぐに扉が開いた。

「さぁ、どうぞ」

その扉を潜った先は、ベッドがあるところを見るに寝室だろうか。
いや、それにしては誰かが使っている様子はない。
どちらかと言うと、ホテルの部屋に近いだろうか。

「??」

何故こんな所に?と疑問に思っていると、ハロルドは気にした様子もなく部屋の使い方を教えてくれた。
それを聞くに、ここはホテルだと思って間違いないようだ。

「食事はこのテーブルで注文すれば届くから。後、それはこの机のこの囲いの中に必ず入れる事。それ以外は自由にしてていいよ」
「え、あの…」
「もう遅いし、一気に進めると負担になるから、今日はここまで」

どうしてここに来たのか、能力の補完をしないといけないんじゃないのか、等と聞こうとしたが、一言で止められてしまった。
確かに、急に色んな事があり過ぎて疲れているような気がする。

「じゃあ、明日は準備出来たら連絡するよ」

最後にそう言って、ハロルドはエレベーターに似た何かに乗って行ってしまった。

「……」

急に置いていかれたような気がして不安になるも、疲れが勝る。
ハロルドに言われた通り、タブレットを囲い(机の上に四角くテープみたいなもので囲ってある)の中へ置く。
それから用意されていた部屋着に着替えて、ベッドに潜り込む
フカフカとしたベッドに誘われるように、ココロはゆっくりと目を閉じた

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