死にたいのに死ねない少女
どうして、私は死ねないのか?
死にたいと願っているのに、死にたくないと願ってる人間は簡単に死んでいくのに、死にたいと願っている私は自ら死ぬ事が出来ないなんて、世の中はなんて理不尽で、神様はどうしてこうも不公平なのかと、死にたがり少女のシャルル・フランソワは考えていた。
見た目は15~16歳位に見える。
金髪碧眼の美少女の彼女が、何故死にたいのかは彼女にしかわからないのだが、彼女は幼い頃から早く死にたいとずっと願っていた。
自分が生まれ育った世界には、自分を殺してくれる人物も、自分を殺せる程の人物も存在しなかった。彼女は自分の世界から異界へと渡る事を決意した。
決意して、異世界を渡り歩きながら自分を殺してくれる人物を探していたが、今まで渡り歩いた数多くの世界に自分を殺せる人物は、誰一人としていなかった。
その事が、彼女には悲しかった。
どうしてどの世界にも、自分を殺せる人物が存在しないのか、その事が不思議であり、そして悲しかった。
どの世界にも、老若男女が数億から数十億と言う数の人間が存在していたのに、その中には数多くの人間を殺してきたシリアルキラーが、殺人鬼も多く存在していたのに、そいつらでさえ自分を殺す事はおろか、傷一つつける事すら出来ないのだから、それだけで自分は本当に人間なのか? もしかしたら別次元の生き物なのではないかとフランソワは思ってしまう。
見た目は人間の少女だが、中身は悪魔か化け物なのではないかと……
もしそうなら、それこそさっさと殺してほしい。
そう願っているのに、誰も自分を殺せない。
そして、自分で死ぬ事も出来ない。
私は、一体なんなのか……誰か教えて……お願いだから……
目を覚ますと、うっすらと目元が濡れていた。
「昔の夢を見て泣くなんて」
自分にもまだ人間らしい部分が残っていたんだと、フランソワは窓から外を覗き込む。
この場所が、自分の旅の最後の場所。
沢山の異界を旅して来た。そして、異界を渡る力が無くなった。正確には、その力を溜める必要があるのだが、溜まるには、相当な時間が掛かるので、フランソワはこの世界を最後の場所にしようと考えていた。
面倒臭くなったのもあるし、どうせ自分は死ねないのだろうと言う諦めも、僅かに含まれている。
明日からは、久しぶりに学生としての生活が始まる。
見た目が、子供のフランソワが大人として仕事を探す事は難しいし、働かなくてもお金には困っていないので、彼女は久しぶりに学生生活をエンジョイする事に決めたのだ。
彼女が学生生活をする事に決めたのには、学生生活をエンジョイしたいが大半だが、他にも理由はあった。
今までの世界では、自分を殺せるのは大人だと決めつけて行動をしていたのだが、それが裏目にでたのか誰一人自分を殺せる人物はいなかった。
そこで、フランソワは考えてみたのだ。
もしかしたら、自分を殺せるのは大人ではなくて、まだ成熟していない子供なのではないかと、子供の純粋さや子供と大人の境目で揺れる心などが、自分を殺せる力になるのではないかと、その考えが正しいかはわからないが、彼女は、そう考えて今回は学生を選んだのだ。
どうせ異界を渡る力が貯まるには、数年掛かるのだから、その間は学生として過ごしてもいいだろうと、素敵な出会いがあるかもしれないし、死にたがりだが、女の子なので恋愛には興味津々なフランソワだった。
自分を殺してくれる人が見つかります様に、そして素敵な恋愛が出来ます様にと相反する考えを抱きながら、フランソワは、早く学生生活が始まらないかなと心を踊らせていた。