vsヴェサリオ
オレオレ、俺です。久し振りのノーコンです。そんな気がしたまでです。現在クロード家vsヴェサリオです。
(ちょ、気が散る! アンタ黙っててくんない!? ああっ! お父様! お祖父様!)
「どしたどしたぁ!」
「うぬっ!」「くっ!」
ヴェサリオ一人に対し、鬼将軍ずは劣勢を強いられていた。
(嘘でしょおぉぉ!?)
「はぁっはあ! 鬼将軍だとかご大層な名前がついていてもその程度かぁ!?」
「むぅう!」「確かに強いな……」
「俺様が強えんじゃねえよ。テメエ等が弱えんだ」
暑様が少しがっかりしたような顔をして二人を見やる。
(暑様って何さ? もしかしなくても暑苦しい俺様の略か?)
ずびっと名前にしてみました!
(頭尾っとってことね。わぁよく考えられてるぅ、じゃねえよ! だぁっとけ!)
「はぁふぅ……どう思うゼオルグ」
「そうですねぇ。あの悪童よりマシでしょうか?」
「悪童ぉ?」
「メアラの事じゃよ」
「……確かに俺様でもアレはまだまだ無利だなぁ。あの野郎、人体構造が人を辞めかけてやがるからな」
(そうなの!? すげえ!)そうなの!? すげえ!
「でもテメエ等は違う。魔力で身体強化してる割合が高ぇ。それが効率良すぎて魔法が使えなくなると途端にそこらのゴミと変わらなくなっちまってる。ああ、詰まんねぇなぁ?」
「そりゃ済まんかったの。じゃが暫くは付き合ってもらうぞ」
「ああ、そうですな。私達の可愛いフローラに指一本触れさせるわけには行きませんし」
「……はっ。指一本だぁ? そんなもん、ふぅりゃああああ!!」
ヴェサリオが気合と共に、槍で二人を大振りに薙いだ!
「ぬっ!」「……!?」
「俺の指が触れると言わず! 奴の指なり腕なり切り落としてやんよぉ!」
「ぎゃあ!? ヘンタイ赤○キが突っ込んできた!」
「誰が変態の虫けらだごるぁ! ……っっとと、ああん?」
ヴェサリオがフローラへ突っ込んでいくのを止め、軽いステップで後方へと飛び退る。見ると、さり気なく将軍の槍が軌道上の地面すれすれに添えられ、ゼオルグは鋭い突きを放てる体勢を取っていた。
「流石にそんな見え見えの手に乗らんわな」
「坊や、ガキの喧嘩か何かと勘違いしてないか?」
「……ほぉ? 言うじゃねえか。じゃあ見せてみろやぁ! 大人の戦いってやつをぉ!」
槍を中程に構え、コンパクトに扱う姿勢を取るヴェサリオ。同じく槍を扱う将軍は何故か構えず、石突を地面につきたて片手に持った完全に休めの姿勢で、空いた手は腰に添えている。門番か?
(ちょっと思っちゃった)
「……おいおい、やる気あんのか?」
「なんじゃい? お前さん相手にやる気にならんといかん理由でもあるのか?」
「……忘れてねえか!? 日が沈む前に俺様から取り返さねえと、グレイスは高い所から落とされて粉々にされんだぞ!?」
「それは君も同じだろうが。壊される前にうちの可愛いフローラを殺すか脅して解除しなければ、欲しい物は手に入らない。違うか?」
「ぐぬっっ!?」
(殺されるのも脅されるのもグレイス様が壊されるのも全部ダメなんですが!)
そうよね。
「は〜あぁ、やる気のねえ奴を殺すのは気が乗らねえが、邪魔なテメエ等は皆殺すとしよう。そしてグレイスとしっぽりしけこむってなぁ!」
「下半身から生まれてきたのかあんたは! それとも頭ン中も玉かこらぁ! このゲスリオが!」
「おまっ……!?」「(あんぐり)」「(あんぐりその2)」
ゲラゲラ。所でこの中で一番下品なのは誰なんですかね。皆の視線を辿ると……全会一致!
(え? あれぇ?)
「……おい、アレも一応貴族なんだよな? って、そういや中身が違うんだったか? 良いのか? あれ」
「あいや……どうなんじゃ? ゼオルグ」
「……フローラ? もうちょっと、こう、女の子なんだから……ね?」
「あ、いや、お父様、お祖父様御免なさい。そこのクズリオがゲス過ぎてつい……」
「テメエの言動を全部俺様になすりつけてんじゃねえよ。ドン引きだわお前」
「クズでゲスで下半身男からドン引きされた!?」
「お前どんな悪口の引き出し持ってんだ!? 悪口でできてんのかその残念な頭はぁ!?」
「話しかけんな! 色々伝染るだろうが!」
「あー、うちの女共とどっか似てんなあの野郎。ただ一つ違うのは……」
ヴェサリオが姿勢を低くして溜めを作り……
「ぶっ殺していいってこったぁ!」
「させるわけなかろうて?」
鬼将軍が石突付近をコンと蹴り、槍を軽く回転させながらヴェサリオの進路を塞ぎ、
「邪魔だ、あぁっっ!?」
自身の槍でヴェサリオの槍を絡めとり、ヴェサリオごと天井付近まで放り投げたっ!
(お祖父様素敵っ!)
言ってやれば良いやん?
(今デレたら『もしも』の隙を生みそうで怖い!)
……なるほど。
「つぁっとぉ! ……あぁ? それが大人の何とかって奴か?」
投げ飛ばされはしたものの、ダメージを負うこと無く着地した赤い奴。
「君の身体能力は凄まじい物があるが、私や義父上殿の様に前線で戦う者は、魔力が尽きて魔法が使えなくなったので戦えません、では許されんのだ」
「それにのぉ、歳を取ると全力なんぞ出し続けれるもんではないわい。じゃから力を抜く事を覚えるんじゃよ。今が全盛期の若者相手に、一から十まで全力で付き合ってなぞおれんわい、アホらしい」
ですってよ。
(お祖父様かっけー! まじかっけー!)
語彙が死んどるやん。っと、ヴェサリオが槍をくるくる回したり、身体をゆらゆら動かして何かしてるな。
(アレは羽か!? てことはゴ○リオが飛ぶのか!? こいつ、飛ぶぞ!?)
色々怒られるぞお前それ。
「なるほどなぁ、柔の構えって奴か。でもよぉ……」
音も無く、かと言って遅くもなく、むしろ今までより素早くヴェサリオが将軍との間を詰め、
「俺様が対応できないと誰が言ったよ?」
「ぬぅっ!?」
近距離からの高速の突き! それを絡め取らんと将軍が動きを合わせるが、ヴェサリオも槍をくるりと反転させ、更にそこに将軍が槍を合わせようと……
「引き抜くと思ったか?」
「何と!?」
ヴェサリオは石突の方を将軍の脇の下に滑り込ませると同時に、将軍の槍も掴んでいた。将軍は自身の槍とヴェサリオの槍を両脇に抱え、クロスの状態で構える形となる。そしてその逆側にはヴェサリオがいて……
「こうなると柔も剛もねえ! ただの力の比べ合いだぁ!」
「ぬおおおぉおぉ!?」
「義父上!」
「だあぁっりゃああ!」
ヴェサリオはそのまま力任せに槍で挟み込んだ将軍を持ち上げ、助けにはいろうとしたゼオルグへと叩きつける! 上手く脱出できなかった将軍を受け止めようと、ゼオルグは剣を納めて受け止める姿勢を取った! ……が、衝突寸前にヴェサリオが槍を離し、二人目掛けて飛び蹴りを放つ!
「っらあぁあ!」
「ぐおっ!」「ぐうっ!?」
「お父様ぁ! お祖父様ぁ!」
鬼将軍ずは二人まとめて飛ばされていく。どんな脚力してんだあいつ。
(あわわ、あわわ……魔法さえ使えたらっっ!)
そしたら回復できちゃうもんな、お前は。
(そう……なのにっ!)
アンチ喪女フィールドを広域に展開しちゃえるヴェサリオのせいで使えないと。
(ああもぅっっ!)
突っ込まない喪女は……
(だぁってろっての!)
「ああ、良いのが入ったなぁ。ありゃあ肋骨の5、6本はいったはずだぁ。お前の親父も、将軍と壁に挟まれる形で頭を強打してやがったし、詰みってとこか? 一応武器は奪っておくとするかぁ」
ヴェサリオが二人の武器を取り上げ、遠くへ放り投げる。
「さあって、待たせたなぁドン引き女」
「……はぁふぅ、かかってぇこいやぁあああ!」
「……ド素人丸出しの構え方だなぁ? そういや分かってたことだったな。テメエはすぐ殺せる。それよりやっぱ爺共だな」
「はぁっ!?」
「まとめて無力化できたのはたまたまだったからなぁ。しかしもし復活されたら、負けはしねえが面倒臭え。それに奴等との戦いは面白くねえからな」
「だからって意識もない人間をころ……」
「舐めてんのか? ここは戦場でこいつらは軍人だ。僅かな芽も摘んでおくのが正しい行動だろうが。黙って見とけ」
「こんの……殺らせるかぁ!」
フローラが堪らず飛び出すが、ヴェサリオは興味無さげにフローラをみやり、
「どっちが先でも一緒だがよ」
槍を突き出したのだった。
ヒュルンッ
「あ? ……ぉっぉあおあああああっ!?」
ズドンッ!
「がぁっはあ!」
しかし、フローラは刺されるどころか突き出された槍を避けた上で器用に絡みつき、そのまま体移動の反動だけでむしろヴェサリオを投げ飛ばしたのだった!
「お父様もお祖父様も殺らせませんよ」
「て、めぇ……」
(えっ? えっ!?)
えっ?
(えっ? えっ?)
ええっ?
(ちょ、お前まで混じってくんな! ややこしいんじゃ!)
「(御免なさい可憐さん。少しの間お借りしますね)」
(うえっ!? ……もしかしてフローレンシア、なの?)
「(はい。こうして話すのは初めてですね)」
(そう……だけど、いやいや借りてるのはむしろこっちでしょ? 私に気遣う必要なんて無いわよ!)
「(ふふ、有難う御座います)えっと、そこの変態さん」
「誰が変態だテメエ!? ……ああ? 何かさっきと様子が違うなぁ? 別人になったような……って。ああ、本体の人格が出てきてやがんのか? アレと一緒……いや逆か」
「改めて初めまして、フローレンシア・クロードと申します。身内を殺させるわけにも、可憐さんを殺させるわけにもいきませんので、ここより先は私が御相手致します」
「……中身の奴がカレンって名前か。よく言っておけ。相手をこけ下ろす前に自分の言動を省みろってなぁ!」
(ほっとけボケェ!)
「(あはは……それは少し思いますけど)」
(なんて事!? 味方は居なかった!?)
ゲラゲラ、おんもすれぇ。
「ふぅ……では尋常に。フローレンシア、参りますっ!!」
フローレンシアの実力や如何に!