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【フィトに勝つ見込み】

【フィトに勝つ見込み】


「甘えさえ捨てたら、オレは強くなれるんすか」


 レイフは真正面に、パパゴロドンを見据えた。彼は目を丸め、それからにやりと笑う。


「そんなすぐに強くなれたなら、修行なんかいらない感じだろー?お前の父ちゃんも、何十年とかけて強くなったんだからなー」

「今、オレは強くなりたいんすよ。じゃないと、ガリーナちゃんを追うアシスのMAや、髪が硬くなるツークンフトに勝てない」


 レイフは軍学校で、できるだけのことをしてきたつもりだ。授業も真面目に受けていたし、自主的に訓練もしてきた。しかし、実践を踏んでいない自分は、本物の軍人にまるで太刀打ちできない。


「MAなー、まぁあいつらは厄介な種族だよなー」

「···本当、ゼノヴィアシステムを操れるとか···未来人と原始人が戦うようなもんっすよ···」


 惑星の管理システムも操れる種族。だからこそ地球戦争でも駆り出されるなど、戦争で重宝されていたと聞く。


(惑星の管理システムを操れるとか···猿が、神様と戦うようなもんだろ)


 惑星トナパで、MAであるフィトと対峙し、まるで勝てる気がしなかった。ガリーナを守るためには、あのMAの攻撃を回避しなくてはならない。


「あー、それは良くない感じだなー」

「でしょ!?MA相手にどうしたら良いかとか···」

「MAは、神様じゃないぞー?地球戦争や、アクマが起こした20年前の戦争でも、だいぶ数が減ったんだー。万能の神様じゃあないー」


 え、とレイフは言った。パパゴロドンは同意してくれるものと思ったが、違った。


「さっきのエミュルブトーにも弱点があるんだー。MAにも、弱点は必ずある感じなんだぞー?最強と言われた、アクマにもなー」


 だからシオンに倒されたんだろー?とパパゴロドンは付け加える。

 地球人に作られた訳ではない、最強の種族であるアクマを倒したシオン・ベルガー。どう倒したかは知らないが、最強と言われた者を倒すことは、決して不可能ではない。


「でも、オレにはエミュルブトーも···」


 斬ることができなかった。


 彼らは水で構成されており、まるで水の中で剣を振るっているようだった。


(あの生き物は斬れんのか?MAだって、オレは倒せるっていうのか?)


 エミュルブトーを斬ることも、MAであるフィトに勝つことも不可能なことのように思える。例えアクマの剣を持っていようと、クォデネンツだからこそ斬れるーーとは、パパゴロドンも考えていないだろう。パパゴロドンはクォデネンツを自分が持っているなど知らないのだ。


「まぁ慌てんなよー。どうせ帰りにも現れるだろうしなーあいつらー」

「···パパゴロドンさん、どう倒せば良いとか」

「自分で考えろよー」

「そうっすよねぇ···」


 パパゴロドンは最初から教えてくれる気など皆無である。レイフは肩を大げさに下げ、ため息を吐いた。


「しかしあの子いねーなー。街にいっちまったかなー」

「街?」


 パパゴロドンは、んー、と言って砂漠の先を指差す。暑い空気が視界を揺らめかせるが、動物の血が半分入っているレイフには、パパゴロドンが指さした先がよく見えた。

 砂漠の先に、高層ビルが建ち並ぶ街があった。


「惑星ニューカルーの首都、アバウだー」

「へぇ···アバウ」

 アバウという都市に向かっていると、パパゴロドンは自分の頭に黒いローブを被せてきた。

「え、なんすか」

「狼の半獣なんてここでは珍しいからなー。隠しておくに越したことない感じだぞー」

 はぁ、とレイフはまだ納得はせずに、フードを深く被り、尻の尾が見えないようにローブの下に隠した。耳や尾は見えはしないが、頭や臀部の部分は膨れて見えてしまうため、半獣であることは見てわかるだろう。



(半獣の惑星って言ってたから、まぁ悪目立ちはしねぇってことか)


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