巨大建造物
れいが孤島を創造して、そこに巨大建造物を設置してから幾ばくかの時が流れた。
未だにその巨大建造物の利用方法が思い浮かばないれいは、なんとなく椅子を設置したその巨大建造物の最上階を拠点にしていた。拠点といっても、何日かに一度訪れて椅子に座るだけだが。
殺風景なその場所だが、だからといって、れいは椅子以外には何も設置していない。今でも毎日大量に漂着物があるものの、これだといった品は流れ着いてきていないから。といっても、たまにそういったモノはあるのだが、そういったものはサイズが小さいので見送られている。
「………………ここは、いわゆる巨人と呼ばれるような存在が使用する場所だったようですからね」
れいが巨大建造物の来歴を調べてみた結果、その巨大建造物は、とある世界で巨人が自分達の宗教用に建築した物で在るのが判明した。しかも完工間近だったらしく、誰も使用していない。未完だった場所に関しては、れいが建設を終わらせておいた。
巨大建造物の用途としては、塔の最上階、つまりはれいが利用している場所は祭壇で、れいが椅子を設置した場所に神像が置かれる予定だったらしい。
その下は全てが神官と信者の部屋で、祭壇に近い上層が高位の神官用、中層が一般の神官用、下層は信者が滞在する時の宿泊用が大半で、中には参拝用に祭壇を置いた場所も用意されていたようだ。
つまり最上階の祭壇は高位の神官用の本尊であり、その宗教の中心となるはずだった場所らしい。
「………………何と言いますか、何度思い出しても不憫ですよね」
総本山として気合を入れて建築した建物が、完成間近に世界の穴に落ちて消えてしまうというのは、不運というだけでは言い表せない不憫さがあった。もっとも、だからといって戻すつもりもないのだが。
そういうわけで、住居用としては些か不便なだけではなく、巨人用に造られているので色々と規格が大きすぎて使い難いのだ。
どうしたものかとれいが椅子に座って考えていると、来客があった。珍しいと思ったが、こんな辺鄙な場所に来られる者となると限られてくる。そして、今回やってきたのはネメシスとエイビスだった。
れいはなんとなく二人を最上階まで案内すると、訪問の理由を聞く。それで報告のためだと分かり、折角だからと椅子に座りながら報告を聞いた。
その後はこの場所について質問されたので、余っていたので思いつきで設置しただけだと伝えておく。それからも、ここに住んでいるのかどうかなども訊かれたので、時折来ているだけだと答えておいた。
そうすると、何故だかネメシスとエイビスの二人がここに住んでもいいかと訊いてきたので、部屋は余っているから好きにすればいいとれいは答えた。
それからの二人の行動は早く、その日の内に高位神官用だった下の階の部屋を一室ずつ自室とする。
まぁ、だからといって何か変わったというわけでもないので、れいの中ではそれで話は終わったのだった。しかし、ここが後に神の住まう聖域と呼ばれるようになるのだが、それはまだ先の話であった。
