第百十一話 焔の秘密(Part2)
シンは今まで散々焔には才能がないと言っておきながらも、その言葉が全て虚言であったかのような発言をした。
「フッ、やっぱり気づいてたのか」
「いやいや、それこっちのセリフ。何でバレちゃったかなー」
「ま、強いて言えば……言い過ぎたことかな。普段のシンはいい意味でも、悪い意味でもあまり他人のことを評価しない。それが焔に関してはかなり辛めの評価をしていた。しかも、俺たちになぜか言い聞かせるように、そして本人にもだ。だから、焔に関して俺たちに知ってほしくない何かがあるんじゃないかと思ったってわけ」
「なるほどね。俺の言葉が裏目に出るなんてね」
「それだけじゃないさ。実際に焔には違和感があったからね。あれほどの素質があるのにも関わらず、なぜかそれを使いきれてない。シンだったら、間違いなくもっと強く焔を育てることが出来たのにあえてそれをしなかった。それはある事実を知ってしまったから」
「で、その事実を確かめたってわけか。にしても、そんなに早く気付かれるなんてなー。気づかれるにしてももうちょい後だと思ったんだけど」
「そうだね。俺も確信はなかった。焔のある技を見るまでは」
「……疾兎暗脚か」
「やっぱりあれは疾兎暗脚か……あれは焔のオリジナルだと言ったけど、明らかにシンの技の模倣だった。シンの教えなしであの技を再現するなんて才能がなければ絶対にできない。第三試験では、シンの口車に乗せられたけど、今回のリンリンちゃんとの一戦で確信した。形は違えど、あれは疾兎暗脚だと」
「それで最後の仕上げに抜刀術を教えて自分の目で確かめたってわけか……」
「ああ、ものの10分でもう基本的な動作をマスターしていたよ。おそらく、1時間続けていれば、もう実戦でも問題なく使えるほどには成長してただろうね」
「焔には?」
「大丈夫。悟られてはないさ。目を輝かせて『どうでしたか?』って聞かれたから、嘘をつくのはかなり後ろめたかったよ。『もういいかな』って言って切り上げたらかなり凹んでたよ」
「……そうか」
「なぜ焔にこのことを教えてやらないんだ? 彼はマサさんの能力を受け継いでいるのに? このままでは宝の持ち腐れってやつじゃないか」
「……違うよ、ハク。あれは……焔が持っているのはマサさんの能力とは少し違う」
「……どういうことだ?」
ハクの顔つきが変わる。今までそう思って立ててきた推論の根底を間違っていると指摘されたからだ。その後、シンは一口茶をすすると、焔の本来の能力について説明し始めた。