創造と停滞
創造というものは難しい。管理者はある程度の知識を最初から与えられているとはいえ、れいが始めた指導のように、誰かしらからアドバイスを受けながら行わなければ、自然物の創造などの基礎的な部分しか行えなかっただろう。もっとも、管理者にも個性はあるので、その辺りは管理者に依るだろうが。
さて、創造するのは何も管理者、一般的に神と呼ばれるような強大な存在ばかりではない。人であっても新しい何かを創造することはある。それは暮らしが良くなるモノであったり、戦いをより苛烈にするモノであったりと様々だ。いわゆる発明と呼ばれるもの。
それとは別に、世界を創造することだってある。まぁ、頭の中でではあるが、こちらは物語というものだ。
その物語を本や演劇などという形で形にするという者も存在し、それは人々の娯楽へと昇華している。
世界の中には科学というものが発展している世界もあり、その世界では仮想世界という存在しない世界を科学で生み出して、そこに新たな世界を構築するという創造も行われている。その数はかなりのもので、人の創造性の豊かさを示しているとも言えるだろう。
魔法でもそうだ。時代と共に新しい魔法というのも色々と創造されていっている。そのおかげで、魔法の数というのは順調に増えていた。
ただ残念ながら創造性というのは、その分野が円熟するほどに落ちていくようで、そこまで行くと踏襲が主となり、積み上げてきた知識や技術をそのまま使用するか、少し手を加える程度が精々となる。
創造は天才の分野と位置付け、大多数ははじめから視野にも入れていない。その結果、文明の停滞を招き、最終的には亡んでいく。そんな世界は幾つも存在し、その度に新たな文明が芽吹いていく。
勿論、そういった場合は原始的な文明に戻っている場合が多い。もっとも、スタート地点は最初程何も無いわけではないが。
ハードゥスの場合はまだそこまでいっていないのだが、れいは最近ややそんな部分が表れてきたような気がしていた。
とはいえ、世界など長く続けば幾度も滅ぶもの。なので、れいとしてはそこまで心配はしていなかった。本体であるれいが管理している世界の記憶も持っているので、その辺りの知識もしっかりとある。
それに、それ以上に漂着物の量や増していく力の対処の方が大変で、力の方はなんとかなったとはいえ、漂着物の量については如何ともしがたい。
それは外の世界は順調に増えている証拠ともいえるが、困ったものであるのは変わりない。仮に新しい世界を創っても消費しきれない量というのは、流石に多すぎた。
かといって、破棄や返却する気はなく、世界を拡大するのは今はやるつもりはなかった。
「………………さて、どうしましょうか」
ずっと保管するのは問題ないし、保管出来る量もほぼ無制限ではある。しかし、だからといって今後も増えるに任せるというわけにはいかない。完全には無理でも、多少なりとも軽減はしたかった。
れいは世界の空きを探してみるが、漂着物を抜きにしても、ハードゥスはハードゥスでモノが増えていっている。無論、漂着物に比べれば微々たるものではあるのだが。
それでも、少なくとも自然物を置くスペースは順調に減っていっていた。流石に人がわざわざ切り拓いた場所にまた自然物を置くほどれいも無慈悲ではない。
困ったものだと思うれいは何か解決策を考えるも、安易な策以外は中々思い浮かばない。改めて保管庫を確認してみるも、大量の漂着物が並ぶばかりで、何か役に立ちそうなモノは確認出来なかった。
「………………漂着物の大半はネメシスとエイビスに任せているとはいえ、この量を判断するのは大変そうですね」
そう思ったれいだが、とりあえず現場判断は引き続きネメシスとエイビスに任せて、れいは保管庫内の処理について考えることにした。