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新たなもふもふ?

 変態と乙女様が何やら分かり合った後、流石に痛々しかったからか、喪女さんが光魔法による治癒魔法によって変態を治した。それを見ていた乙女様から、治癒魔法をどうやって覚えたのかを聞かれ、喪女さんは丁寧に一から説明したのだった。すると乙女様はなにかピンとくるものでもあったのか、暫く何かをブツブツ呟いていた。
 その後、前述の通りガッツリ訓練させられて動けなくなったのはまぁ仕方ない。光魔法で回復できるのは傷だけらしいから。

(あー……きつかったー。いつか光魔法でスタミナを回復する魔法持ってる子が現れますように。にしても乙女様って意外にスパルタなんだねぇ)

 そうだな。フローラはやればできると絶対手を抜かなかったもんな。
 光魔法による肉体強化魔法については、乙女様が乗り込む前のジュリエッタよろしく、フローラに直接触れて流しこんだ。コレにより感覚的というか直接的に覚えこませたのだ。乙女様がピンときたのはこういう事だったようだ。使い方さえ分かれば、後は出力調整の問題だけだったのだが、ジュリエッタを大きく上回る魔力故か微調整が全然できない喪女だった。

(下手な強化の仕方すると爆発的な一歩を踏み出すことになるから、何処に突っ込むかわからないのよねぇ)

 その際役に立ったのが当たって安全、変態の肉壁だ。

(ヤメロよ、その言い方。当たりたくもねえしな)

 フローラの進行方向に大手を広げて仁王立ちにて待ち構えるアレを、変態の壁と呼ばずして何と呼ぶ?

(……うん、確かにそれ以外の表現をしようが無いわね)

 かくして変態の肉壁に、届かぬ思いを秘めて突撃を繰り返す事になったフローラだったが、

(あれぇ? 何か酷い悪意のフィルターが急に入った気がするぅ?)

 その都度グワシと抱きとめられることが癖になったのか、中々調整が上手く行く気配は無かった。

(ハイハイ! 異議あり! 超・異議あり!!)

 喪女は却下!

(意見所か全否定だと……!?)

 ま、そんな事はどうでも良く、毎日の訓練に加えて光魔法の幅を広げていく事に勤しむのだった。

(乙女様が光魔法の使い手を、あっちこっちから集めて来てくれるからね。中にはどんぐりの雨を降らすとか割とどうでも良い魔法とかも多いけど)

 魔法で出てきたどんぐりならあのもふもふ、モモンガにやれば喜びそうだけどな。

(勿論喜んで食べたけど、ベルが私を刺殺さんばかりに睨んできたから、どんぐりは全部ベルに預けたわ)

 そう言えば動物と触れ合える場所とか探してもらってるって話はどうしたのよ?

(先輩も探してはくれてるんだけどね。馬とかなら幾らでも居るんだけど……)

 ベルなら馬の世話も喜んでしそうだけどな。

(実際もうやってるわよ……)

 ある意味ブレのねえ存在だな。

「ということなんだけど、動物と触れ合えそうな場所って何処か知らない?」

「急に脈絡もなく、何が『ということ』なんですの……」

「フローラはいつも唐突」

「だってフローラだしね……」

 何時もの通り女子ーずが揃ったタイミングで、まるで今まで話してたかのような素振りでフローラが3人に相談を持ちかける。それに対し、ミリーがはぁ? って感じで眉根を寄せ、ベティがふんっ、と興味無さげに塩対応。そしてメイリアは、やれやれとばかりに呆れた顔してフローラを見つめる。

(皆そこまでドライじゃないですー。後、何時もやってるみたいに言わないでー?)

 思い返してみろ。殆どそうだから。

(はっはっは、あんたの言葉に惑わされたりしないわ。何時もそんな事言ってるわけじゃ……あれぇ?)

 身に覚えありまくりだったようだ。まぁ恐らく半分は俺のせいだがな!

(あー、まぁそうよね。あんたとの会話を引きずっちゃってるのはあるでしょうね)

「で、動物の事に触れられてましたけれど、それはやはりベルさんの事ですの?」

「ええ、そうなのよ。ベルの魔力じゃもふもふ……じゃない、モモンガのお腹は満たしきれてないのよ。まぁ、最近覚えたおやつ……じゃない、どんぐり魔法のお陰で、魔力という餌不足の問題は解消しつつあるんだけど」

「じゃあ何が問題?」

「モモンガだけじゃ、もふもふ成分が足りてないみたい。アレは割といろんな人に懐くけど、ベルにはご飯をくれる時しかもふもふ振って懐かないから。せめて猫か犬がいたらなぁって思うんだけど……」

「もふもふって……その流れだと尻尾の事ですわよね? ああ、それと猫ならうちに居ますわよ?」

「中々居ないよねぇ。私こっちで動物を殆ど見てなんだってぇ!?」

「わっひぃっっ!?」

 おいこら、そこの悪い喪女め。俺の癒やしをいじめるな。

(私の癒やしでもあるけどね……っつか、悪い魔女みたいな言い方すんな?)
「ああ、ごめんごめん。私、動物って馬位しか見たこと無くってさ」

「はぁはぁぁ……だとしても急に大きな声を出さないで下さいまし。とても心臓に悪いですわ」

「ごめんごめん。思いも寄らなかったもんだからさ」

「でも珍しいね? 猫飼ってるの?」

「珍しい」

 メイリアやベティも興味を惹かれたらしい。

「飼ってる、と言うより預かってるのですわ。もっと的確に表現すれば、扱いに困ってるって感じですわ」

「扱い?」

「アシュカノン帝国は、ご存知の通り国土全域に光魔法の恩恵がありますわ。その影響を受けてか、普通の動物は殆ど居りませんのよ。……わざわざ言うまでもない事ですけれど」

 と言いながら、ミリーは喪女さんをじっと見る。当然喪女さんは……

(はい! 知りませんでしたとも! いや、フローレンシアの記憶にはちゃんと情報あるんだけどね)

 普段気にしない事はわざわざ調べもしないんだね。流石喪女さんも全くぶれないね。

(うっせうっせ)
「でもまぁ、猫が居るって言うならミリーの家に寄らせてもらっても良いかな?」

「はぇ!? ……か、構いませんけれど」

「じゃ、ベティもメイリアも一緒にどお?」

「勿論行くー」

「あ、お邪魔でなければ」

「……お邪魔だなんて! 大歓迎ですわ!」

 おお、ミリーがめっちゃキラキラしてる。お友達を家に招待するんだ、すんごい楽しみってオーラが教室の外まで溢れそうな程。

(教室の皆までが微笑ましげに見守る位になってるもんね……。あ、そーだ。もいっちょ爆弾を)
「じゃ、お泊り会ってことにしちゃいましょう」

「お泊り会っ!? 我が、エッシャー家に、ですの!?」

「おお、良い考え」

「あはは。二人共ダメだよ? ちゃんとミリーが良いって言わなきゃ」

「嫌じゃ御座いませんわ! ええそれはもう! 大歓迎ですわ! ……ああ、いけない。こうなったらアレもコレも用意しなければ。ああ、何からやったら……」

 ミリーがなにか暴走し始めた。

(ああ、こりゃいけねえなぁ、いけねえよ)

 ぎゅっ

「いにぇっ!?」

「はーい、ミリー落ち着いてー?」

「は、は、ふぁい……」

「ミリーは、友達、ないし親友達がお泊りしに来たい旨を、家を取り仕切る方にお伝えして?」

「はっ! そ、そ、そうですわね。一番大事なことでしたわ……」

「その上でできる事を手伝えば良いと思うの。私達もミリーの負担になりたい訳じゃないのよ?」

「……そうでしたわね。有難う御座います、フローラ。お陰で少し落ち着きましたわ。……ですからそろそろ開放して下さらない?」

「(ぎゅー)えー?」

「ああもう! 今日という今日は流されませんわよ! 何時も何時もフローラは……」

「ああ、私のミリーがすれちゃった……」

「すれてませんわ!? 変な言い方しないで下さいまし!」

「ちぇ、しょうがない。今日の所は可愛いミリーを見るのは諦めるとするかぁ」

「んもう、んもう!」

「しかしね、ミリーさんや? 泊まった夜には覚悟しておいてね」

「……はい?」

「うふふ、容赦なんてしないわ」

「ちょっと待って下さいまし。フローラ? 何をなさるおつもりですの?」

「あー! その日が楽しみだなぁ!」

「ちょっと!? フローラぁ!?」

 特に何にも考えてないくせに、不安を煽るだけ煽る喪女さんだった。

(せめてこれ位無いとねぇ)

 ベティとメイリアが、今度こそ呆れた顔でお前を見てんぞ?
 んで、この後はベルを連れて転生者会議だったか?

(そういう名前が付いてるわけじゃないけど、メンツや議題からして名付けたならそうなるわね)

 いつか喪女さんも断罪されたり、婚約破棄されたりするんだろうか?

(色恋絡みで恨みは買ってないし、婚約破棄も何も婚約なんてしてないし。フローレンシアというキャラクターが原因で婚約破棄になる子は或いは居たかも知れないけど、あくまで一人の人間として見た場合のフローレンシアならそういうことは無かったと断言できるわ)

 ほーん。

(興味なしかよコンニャロが)

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