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第2話 ようこそエレメントスへ

狐の神様が俺の前から突然消えてしまった。

まだ聞きたいことはたくさんあったのに。

何故、俺がその世界で100年も生きなきゃいけないのか?

何故俺が選ばれたのか?

俺がもらったという能力は何なのか?

今からどこに行けばいいのか?

はっきり言って、こんな状態でここに取り残されても本当に困るんだよな。

そんなことを考えながら途方に暮れていたら、また目の前が真っ白になった。

ここに来た時と同じだ。

またどこかに飛ばされるのか!

やがて目の前の霧が晴れてきた。


「おい、そこのヤツ、お前どこから現れやがった? 怪しいやつめ、こっちへ来い!」

すっかり霧が晴れた目の前には、映画で見たような街の風景が現れてきた。

そう、戦国時代くらい?

自衛隊がタイムトラベルして戦国武将と戦うやつ?

その時に自衛隊員が訪れる農家の風景に似ている。

「おい、お前だ。聞こえないのか? ますます怪しいやつめ。
ちょうど良いか。
奉行所へ引っ張って行ってやる!」

突然頭を鈍器で殴られ、腕を掴まれたまま膝を蹴られた俺はその場で膝をついて倒れる。

手を後ろ手に荒縄で縛られ、無理やり立たされた。

「さあ、早く歩かないか! まだ殴られたいのか!」

意識が朦朧とする中で、これ以上殴られるのは命にかかわると直感した俺は、ふらつく足を何とか動かして背中を押す男の前をよろよろと歩き出した。


畑の間をしばらく歩くと、大きな建物が見えてきた。

石造りの頑丈そうな建物でここだけ見ると中世ヨーロッパに出てきそうだ。

「おい、こいつがお奉行様殺しの下手人だ。牢に入れるから絶対逃がすんじゃねえぞ。

それと、尋問も禁止だ。妙な神通力を使いやがるからな。惑わされちまうぞ。

分かったか。


さあ、お前は早く入るんだ!」

腕に括られていた荒縄を引かれてその建物に引きづりこまれる。

ドンと背中を押されて、つんのめり前に数歩歩いたところで前のめりに倒れる。

ガチャ! ガチャ! ガチャ! ガチャ!!

大きな音に何とか後ろを振り向くと、鉄格子の扉が締められたところだった。

おいおい、狐の神様、いきなり命のピンチじゃないの。

土の床で打った額から流れる血を頭を振って振り払う。

手は荒縄で縛られたままなので、うまく起き上がることすらできない。

俺はどうなってしまうのだろうか。お奉行殺しとか言っていたけど、まさか罪を着せられているんじゃ。

大きな不安が俺を襲う。

寒い。息苦しい。喉が渇く。これら全てが更に不安を掻き立てる。

結局その晩は一睡もできずに朝を迎えた。

外からかすかに聞こえる鳥の声だけが朝の訪れを教えてくれる。

あー腹減った。

寒さ、喉の渇き、空腹が全身の感覚を徐々に失わせていた。

ガチャ! ガチャ! ガチャ! ガチャ!!

意識が朦朧とする中、背後で大きな音がする。

「ほら、いつまで寝てやがる!起きねえか!」

ドン!

背中を思いっきり蹴られ、薄れていた意識が一気に覚醒する。

「ゴホッ、ゴホッ、ゴホッ。」

息が詰まり激しくせき込む俺を見て笑い声が聞こえる。

「ハハハハー。 何処の誰か知らねえが全くいいところで現れてくれやがった。

こいつを殺人犯に仕立ててこのまま死刑にしてやったら、万事うまくいくじゃねえか。」

「全くその通りでございます。荒又の旦那も上手いことやりなさった。
これでなんの嫌疑もかけられず旦那もお奉行様でさあね。」

「全くだ。越後屋、奉行の呼び出しご苦労だったな。」

「いえ、簡単なことでしたよ。ちょっと甘い話しを持ちかけるだけの簡単な仕事でした。」

「何はともあれ、こいつをとっとと殺して全てはおしまいさ。」

俺は殺されるのか。

100年生きるとかって言っていて、2日と持たなかったじゃねえか。

「さあ出るんだ。」

牢から引き出された俺はそのまま表に連れ出され、道端に用意されている磔台に乗せられた。

ようやく解かれた後ろ手の縄は解かれたと思ったとたん、磔台に再び括りつけられた。

槍を持った処刑官がすぐ横に控えている。

足元には薪の束があり、油のにおいがする。

わずかな炎でも俺を焼き尽くすのに充分だろう。

「やれっ!」

無慈悲な槍が俺の脇腹から斜め上に突き刺さる。

朦朧とする意識の中で、俺はパチパチという音を聞いていた。








「もう帰って来たんだねー。想像よりかなり早かったなー。」

意識が戻ってきたのでゆっくり目を開ける。

あれっ、俺って槍で突かれて火に焼かれたんじゃなかったっけ。

「おっ、気が付いたねー。気分はどうだいー?」

「まだ体中が自由に動きません。」

「そうだよねー。でも戻ってくるの早すぎー。」

そんなこと言われたって。

これ俺の素直な気持ち。何も知らされず、何もしないうちにあっという間に拉致られて、処刑されて。

「しょうがないなー。ちょっとだげ教えてあげるからさー、もう一回頑張ってねー。

君が行く世界、星って言った方が良いかな。この星エレメントス星は、バイオレンスな世界なのー。

命の価値が軽すぎて、平均年齢が20歳くらいしかないのー。

その中で100年生きられたら、ゲームコンプリートって感じー?

100年生きられたら創造神様からとーっても素敵なプレゼントがあるんだよー。

もう既にその一部は君ももらっているんだけどねー。

ほら、最初に僕が能力をあげたでしょー。あれのことだよー。

どんな能力だって?

それは自分で見つけて欲しいなー。まあヒントは教えてあげるよー。

あることをすると特殊な能力が手に入る上に、運ポイントが飛躍的に向上するんだよー。

運ポイントが上がると、トラブルにも巻き込まれにくくなるし、長生きするための能力や道具を手にすることが出来るんだよー。

何をしたら運ポイントが上がるんだってー?

それは言えないなあー。でもねー、ヒントをあげるよ。生理現象だよー。じゃーあーねー。また頑張ってきてねー。

あっ、そうそう運ポイントは、君に危害を加えようとする奴等を倒しても入るからねー。

でも今の君はまだ弱いから、すぐに戦うのはお勧めしないけどねー。」



そしてまた白い霧に包まれた俺はエレメントスに戻っていくのだった。




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