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忘れていた存在

 羽の生えたくまのぬいぐるみ。何時だったかれいが放置したペット候補だが、意外としぶといようで未だに生きていた。
 その誕生の際に不純物を取り込んでしまったからか、ペット候補にしては珍しく成長の要素を持っていたようだ。もっとも、そこまで強い要素ではなかったようで、成長速度はかなり遅い。
 その証拠に、あれからかなりの年月が経過したというのに、成長したのは能力的に一割ほど。元の強さが大したことないので、それの一割程度ではどうしようもない。
 もっとも、それでもれい以外の管理者にとっては中々手強い相手のようだが。
 まぁ、生まれたばかりのラオーネ達でも瞬殺出来る程度の強さしかない管理者が、手強い程度で済む時点でお察しの強さであろう。それでも複数人で協力しなければ討伐は難しいだろうが。
 その羽の生えたくまのぬいぐるみだが、今でもたまに何処かの世界を襲っては破壊しているらしく、管理者を纏めている組織で対処しようとしているらしいが、少し前の元管理補佐の討伐や、管理者間の諍いの仲裁などで中々人手が回せなかったようだ。それも元管理補佐討伐のメンバーを再編することで何とか目処が立ったようだが。
 そういった情報が耳に届いたれいは、あの程度の強さで結構な騒動になっていることに驚いていた。
 れいの脳裏に浮かぶのは、ただただ震えるだけの相手。興味をなくした相手なので、そこまで印象に残っていない。その話を聞いて一応調べてみたが、やはりどうでもいいような相手だった。
 ただ、どことなくポイ捨てしたような気分になったれいは、討伐隊がまだ完全に再編成を終えていないのを確認したところで、後処理はしておくことにした。といっても、れいが行くまでもないので、今の時間に行けそうなエイビス辺りを派遣するだけだが。
 呼び出したエイビスに、相手の位置や強さなどの情報を伝える。正直、エイビスであれば前情報無しの初見でも問題ないだろうが、念のため。
 情報を伝えた後、相手の場所まで送るのはれいが行う。エイビスでも移動は出来るが、急遽依頼したのでそれぐらいは行うことにした。
 エイビスを羽の生えたくまのぬいぐるみの許まで一瞬で送った後、れいは討伐隊を編成している組織の取りまとめ役にその旨を連絡しておく。
 連絡したらかなり感謝されたが、とりあえずそれで連絡は終わる。これで先方も徒労には終わらないだろう。編成していた部隊も、別の用件に回せばいい。組織の人員は順調に増えているのだが、世界が増え続けているので、人手は常に足りていないのだ。
 そうしてれいが連絡を終えたところで、羽の生えたくまのぬいぐるみの討伐を終えたエイビスが戻ってくる。一緒に狩った獲物を持ってきたが、必要ないので処分しておいた。
 討伐の労をねぎらった後、れいはエイビスに褒美として力の実を渡す。今回は急な依頼だったので、褒美はいつもの薄めた褒賞用の実ではなく、れいが力を封じたオリジナルの実の方だ。
 エイビスは何故か感涙しながらそれを恭しく受け取っていたが、れいは気にしないことにした。エイビス達と付き合っていくうえで、そういうスルー能力は必須事項らしい。
 褒美を渡した後、そのまま帰すのもなんなので、れいはエイビスと少し話をしてから下がらせた。
 とりあえず、覚えてもいなかったやり残しを一つ片付けられたので、よしとすることにした。
 自然発生した相手なので、本来れいがそこまで背負う必要も無いのだが、管理者達を取りまとめている組織に対しては、今まで何度か助けているので、その貸しを一つ返してもらったということにしておいた。どうせ貸していても返ってこない貸しなのだから、そちらも丁度良かったのだろう。もっとも、まだまだ貸しは大量に残っているのだが。

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