第1話Part.4~特別任務・荷物を配達せよ!~
ロデードのギルドには今日も昨日と同じ女性が受付に立っていて友好的に迎えてくれた。彼女は俺たちが新しい仕事の受注をしないので気を利かせて受注はしなくても大丈夫かという確認をしてくれた。
だが俺たちはもうこのロデードの町を出て、パリッシュ王国へ向かうつもりだったのでその旨を伝えた。
「パリッシュ王国へ……。それでしたら1つお願いがございまして」
「お願いですか?なんでしょうか」
「パリッシュ王国への通り道にランヌという街があるのですが、そちらに荷物を届けてはいただけないでしょうか?」
「はあ、荷物……ですか?」
「パリッシュ王国に魔王の配下が現れたという話が出てからパリッシュ王国へ向かう人が減ってしまって、私たちも少し心配があるので腕の立つ方に運んでいただけたらと思い、イングジャミを倒したブレイド様、ベルナール様であればと思い今お願いさせていただいています」
俺たちがパリッシュ王国へ向かうと聞いた受付嬢の眉が瞬間的に動いて興味を示してきた。そして彼女は受付台の中から1つの小包を取り出して台に置きながら、これをランヌの街に届けてほしいとお願いしてきた。
通常ならば街から街へ行き来する商人などにお願いしたりするのだが、今パリッシュ王国の方角は魔王の配下が現れたという情報でいつもより行き来が減ってしまったようだ。
そしてランヌの街はまだガルヴァン王国領内だが、その魔王の配下の影響が少し心配なようで腕の立つ冒険者に運んで貰えたらと考えており、それでイングジャミを倒した実績がある俺とミリアのパーティーがパリッシュ王国へ向かうと知ってその白羽の矢が立ったようだ。
相当困っているらしく受付嬢は眉尻が下がった浮かない顔をしていた。
「分かりました。通り道ですしおそらく1泊はするだろうとは考えていたので、お受けします」
「よかった!ありがとうございます。そう言って下さると思っていました。届けた際に向こうのギルドで報酬とこっちのギルドに使いが出ると思いますので、報告に戻っていただかなくても大丈夫です」
通り道である上、ランヌには中継することになるだろうと最初から考えていたので俺はそのお願いを聞くことにした。すると曇り空だった受付嬢の顔は一気に雲一つない快晴となって看板娘らしい人懐っこい笑顔が戻って来ていた。
俺は小包を受け取って、今日の朝に少し荷物を多めに持ち運べるようにと購入したばかりの木製の背負子に小包を紐でしっかりと括りつける。既に背負子にはここで買った水と食料などの物資が括りつけてられている。
前までは俺とシューインで荷物運びをしていたので背負子までは必要なかったのだが、前のパーティーは解散してしまい、思いもよらない加入となったアンはともかくとしてミリアは魔術師で重量物を持つというのは不得手。そのため2人分の水や食料、物資を運ぶため購入していたのだ。
まるで1人でさすらう行商人のような風情になってしまっているがこれはもう仕方がない。それに重い荷物を背負って移動すれば肉体の鍛練にも繋がるだろう。まだまだ魔王を倒すには程遠いが、こうやって地道に鍛え上げていくしかない。
「小包、たしかに受け取りました。必ず届けます」
「ありがとうございます。御武運と旅のご無事を祈っています。勇者ブレイド様とそのお仲間のお2人」
「はい。それでは」
俺たちは受付嬢に武運と息災を願われ、このロデードの町を去った。