第1話Part.3~会ってから1日目、2日目のパーティーですよ~
「ブレイド殿、どうでしたか!」
「いや、本当に俺の指導要るの?と思った。普通に強かったよな?なあミリア」
「はい!アンちゃんかっこよかったです!」
ケンゲールを倒して笑顔で戻ってくるアン。無邪気な顔で自分の戦いぶりはどうだったかと尋ねてきた。明らかに俺より強いとまでは言わないが、模擬戦をしてみたら普通に拮抗した戦いになりそうな気がした。
そしていつの間にか彼女をアンちゃんと呼んでいるミリアも彼女の力量は並ではないと感じているようだ。
「か、かっこいいなんて……えへへ。ありがとうございます!姐さん!」
「あ、あねさん……?」
「いや、アン……何でミリアを姐さんなんて呼ぶんだ?」
「え?お二人はご夫婦では?!」
「「夫婦ゥッ?!」」
かっこいいと言われて照れている姿は15歳の少女らしい雰囲気を感じさせるが、何やらまた妙なことを言いだすアンにミリアも俺もほとんど同時に一体姐さんってなんだと聞いてみると、驚いたことに俺とミリアを夫婦と勘違いしていたらしい。
たしかに俺たちの年齢ぐらい、いやアンぐらいの年齢でも既に結婚している者は居るのだが、まさかそう見られているとは思ってもみなかった。俺とミリアは声を揃えて驚きの声を上げて
「いやぁ、そういうわけじゃない」
「そ、そうです!私たちはまだそんな……関係じゃ――」
「――そ、そうでありましたか。失礼しました」
俺は慌てて彼女の誤解を解こうとする。たしかに俺くらいの年齢で結婚している者は結構居るとはいえ、まだ自分は結婚とか妻とかそういったことは考えたことはなかった。勇者を志し、魔王を倒して世に平和を取り戻すための戦いに身を投じる、今はそれだけだ。
それよりも俺より大慌てだったのはミリアだった。顔を赤くしながら口が開いて少し唇が震え、そして体も小刻みに動き、特に手の平をこちらに向けてブンブンと振っているような状態。何か言葉を当て嵌めるなら『あわわわ』といったところか。彼女の言葉の最後の方は口ごもってしまって何と言ったのかよく分からなかった。
寝ぼけて俺の前で服を脱いでしまっていたことに気づいた時もかなり慌てていたが、今はそれよりも慌てているように見える。普通は逆じゃないかと思わないでもないが、あれは寝ぼけていたという自覚があったからなのだろう。
ともかくアンも俺たち2人の様子を見て勘違いだと分かったようだが少し不思議そうな顔をしていたものの納得した様子だった。
「と、とにかく!薬草採集の続きをしましょう!」
「お、おう」
「了解であります!」
俺たちの中で1番慌てていたミリアが何か都合の悪い話を誤魔化すかのように薬草採集の続きをと言い出す。まあほとんど終わっているような状態からの始まりだったので俺もあまり時間をかけるつもりもないが、ちょっと空回り気味のミリアの様子に苦笑いしながら答え、気を取り直して薬草採集の任務をこなしていった。
途中に魔物に何度か遭遇はしたが、昨日倒したイングジャミはともかくとしてこの辺りの魔物なら俺たちの力量であればそう苦戦はしない。何度か魔物を蹴散らしつつ依頼分の薬草をしっかりと集めることができた。
あとはその集めた薬草を納品するだけ。俺たちはもう一度ロデードの町に戻ってギルドにその薬草を納品しに行った。