03
私は、走って秘密基地に向かった。
山道を登り、途中で細い道の方に曲がる。
すると奥の方に洞窟が見えてきた。
外からでは、中の様子が分からない。
私は、小石を拾うと魔力を込めて洞窟に向かって投げてみた。すると……あれ?
いつもならバチッと結界が反応するのに。
まったく反応せずに通り抜けてしまった……。
な、何で……!?
何だか嫌な予感が私の頭の中を過る。
私は、慌てて洞窟の中に入って行く。
近くに置いてあるランタンに火をつけて奥に向かう。
すると奥には、1匹の黒い物体が倒れていた。
よく見てみるとオオカミだった。
あ、あれは……あの時のオオカミだわ!!
ずぶ濡れで怪我をした小さなオオカミを助けて、ココに連れて来たことがあった。
その時より大きくなっているが間違いない。
あの時の小さなオオカミだわ!!
「だ、大丈夫!?」
私は、慌ててそのオオカミのところに駆け寄った。
見てみると酷く怪我をしている。
頭から血がにじみ出ていて、ぐったりとしていた。
誰が酷いことを? 凄い怪我じゃない!?
どうしよう……早く手当てをして助けないと。
私は、慌ててランドセルから何かないかと探る。
た、確か……タオル。あとハンカチと……それから
するとオオカミが目を少し開いた。
あ、意識があるのね!?
しかし私は、それを見て驚いた。
こちらから見て左目が赤で、右目が黄色の瞳をしていた。
あれ?この目……煌君?
綺麗なオッドアイなのは、煌君の特徴だった。
それに彼は、獣族の皇子だ。
ま、まさか……あの時のオオカミって煌君だったの!?
私は、意外な真実に驚かされた。
『カレン……お前……何故ココに来た?』
あ、やっぱり煌君の声だ!?
初めて名前を呼んでくれた。しかし何故怪我を?
「だ、大丈夫?もしかして煌君が居るかな?と思って……」
心配そうに言うが煌君は、よろよろしながら起き上がろうとしてきた。
しかし意識が朦朧としている様子だった。