限定的な加護
れいはそれから魔木と相談したのだが、装備や加護や迷宮の弱体化など色々と案が出たものの、最終的には迷宮の中に入る際に特定の者達に対してのみ、迷宮内限定で機能する加護を与えるということで決着した。
では、その選別方法をどうするかだが、これも色々と話し合ったのだが、迷宮内でのみ効果を発揮する装飾品でも身に着けさせればいいという結論に達した。
次はどんな装飾品にするかで話し合った。その結果、腕輪ということに決まる。指輪とかネックレスとか他にも色々案は出たのだが、腕輪はあまり邪魔にならないということが決めてであった。頑丈にすれば、もしもの時の防御にも使える。
最後にどうやって渡すかだが、これはその国で最も影響力がある管理側の者が、その国のトップに直接渡せばいいだろうということで決まる。とりあえず試しに、北の森からずっと南下したところにある、最初の国に向かうことにした。ここは主座教が国教なので、主座教での主神であるれいの影響力が強いという判断から。
それに、この国は迷宮を最も多く攻略しているので、その褒賞という意味合いもある。
そうして訪れた王城で、れいは現在の王に会って説明と共に直接腕輪を渡した。全員れいの説明を一切動くことなく静聴していたので問題ないだろう。多分。
れいは王城を出た後、迷宮の方を見に行く。腕輪を渡したからと言って、即座に兵士全員に行き渡らせて迷宮へと出撃とはいかないので、用事はそちらではなく、現状の再確認だ。
「………………ここもまぁ、似たようなモノですね」
迷宮が身近にあり、攻略が旺盛な国ではあるのだが、それでも攻略を目的として迷宮に潜る者は全体の半数ほどだろうか。いや、もう少し少ないだろう。
それでも他の国と比較すると多い方であった。
迷宮に潜る者の総数からして多いというのにそれだけ攻略者が多いのは、やはりれいが迷宮攻略を望んでいるというのを知っているからなのだろう。他の場所では、多くとも三割ほどしか攻略に乗り出してはいない。
それでも迷宮攻略はなされているのだが、やはりそれでは回転率が悪い。迷宮の在庫が増える一方なのもそういった部分も影響している。
では何故迷宮攻略がなされないかと言えば、やはり危険だからというのがあるのだろう。それに迷宮攻略は時間が掛かる。いくら攻略されるのを前提に設計されていると言っても、日帰りでの攻略など不可能なのだから。
後者はしょうがないとしても、れいによる施策によって攻略速度は上がるだろう。元々積極的に攻略していた者達が対象なので、劇的にというほどではないだろうが。
ただ、迷宮が攻略されるようになればそれだけ貴重な素材も出回るようになるので、それで装備や薬品関連が充実していけば、迷宮を攻略しようとする者も増えていくだろう。たとえ割合が変わらなくとも、全体の数が増えてくれればそれでいいのだ。
そのためにも、まずは試験運用の結果を待つ必要がある。現王もれいの威光にひれ伏していたので、その結果はそう遠くない内に出てくることだろう。