バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

10


「そう……可愛らしい名前ね。
 私の娘も同じ名前だったわ。
これぐらいの年齢だった時が懐かしいわねぇ……」

 お母さん……。
私の事を思い出しているの?
 思わずお母さんと言いたくなったが、グッと我慢する。
今は、転生して昔の姿じゃない。
 急に呼ばれても驚くだけだから……。

「今娘さんは、おいくつなんですか?」

 するとルイは、唐突な事を聞いてきた。
えっ?知っていて、それを聞くの!?
 母は、驚くもまた寂しそうな表情をしてきた。

「16歳……でも亡くなったわ。病気だったの。
可愛らしくて、優しい子だったわ。
 今日もあの子が好きだったカプチーノがフッと飲みたくなって寄ったところなの。
 あ、ごめんなさいね。
暗い話をしてしまって……日本語上手なんですね。
ではまた……」

 母は、ニコッと微笑むと頭を下げて行ってしまった。
私は、母の言葉に涙が溢れていた……。

 私が亡くなった後も時々思い出しては、私の好きだった飲み物や食べ物を食べているのだろうか?
 今でも愛してくれていたことを再確認して、どうしようもない感情が生まれる。

 嬉しくもあり、切なくなった……。
しくしくと泣いてしまう。
 するとシンは、ルイから私を受け取ると肩車をしてくれた。

「さて、買い物でも行くか?
カレンの服を買いに行かないとな」

 ニッコリと笑いながらそう言ってくれた。
シン……私を励まそうとしてくれてるの?
 その気持ちに嬉しさが込み上げてくる。
ギュッとシンの頭に抱きついた。

「うん、いくぅ~」

 私は、ニコッと微笑み返した。
母とは、悲しいお別れになってしまったが、会えて良かった。
 母のもとに生まれて良かったと思った。

 それに今は、ルイやシンが居る。
新しい世界で、母の願いが叶うだろう。
 元気で走れる自分を見せられないのが残念だが……。

しおり