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「そう……可愛らしい名前ね。
私の娘も同じ名前だったわ。
これぐらいの年齢だった時が懐かしいわねぇ……」
お母さん……。
私の事を思い出しているの?
思わずお母さんと言いたくなったが、グッと我慢する。
今は、転生して昔の姿じゃない。
急に呼ばれても驚くだけだから……。
「今娘さんは、おいくつなんですか?」
するとルイは、唐突な事を聞いてきた。
えっ?知っていて、それを聞くの!?
母は、驚くもまた寂しそうな表情をしてきた。
「16歳……でも亡くなったわ。病気だったの。
可愛らしくて、優しい子だったわ。
今日もあの子が好きだったカプチーノがフッと飲みたくなって寄ったところなの。
あ、ごめんなさいね。
暗い話をしてしまって……日本語上手なんですね。
ではまた……」
母は、ニコッと微笑むと頭を下げて行ってしまった。
私は、母の言葉に涙が溢れていた……。
私が亡くなった後も時々思い出しては、私の好きだった飲み物や食べ物を食べているのだろうか?
今でも愛してくれていたことを再確認して、どうしようもない感情が生まれる。
嬉しくもあり、切なくなった……。
しくしくと泣いてしまう。
するとシンは、ルイから私を受け取ると肩車をしてくれた。
「さて、買い物でも行くか?
カレンの服を買いに行かないとな」
ニッコリと笑いながらそう言ってくれた。
シン……私を励まそうとしてくれてるの?
その気持ちに嬉しさが込み上げてくる。
ギュッとシンの頭に抱きついた。
「うん、いくぅ~」
私は、ニコッと微笑み返した。
母とは、悲しいお別れになってしまったが、会えて良かった。
母のもとに生まれて良かったと思った。
それに今は、ルイやシンが居る。
新しい世界で、母の願いが叶うだろう。
元気で走れる自分を見せられないのが残念だが……。