友人とのいさかいpart1
5畳一間の小さな部屋に夕日が差す。片付けの行き届いていない部屋は、夕の光を受けて今日の休止時間を告げていた。
まばらに服や雑誌などが床に散らかっている部屋のドアが鳴いた。
ワンルームに2人の男が入ってくる。
「あー疲れた」
「俺トイレ行ってくる」
「おう」
玲は床に腰をつける。頭がボーッとして、濁った瞳が
狭いワンルームにこもって聞こえてくる小音。それに混じって玲の腹が鳴る。
腹の虫の音を自覚し、口はより欲していく。
目的を持った目が真っ先に部屋の中のサイドチェストに向いた。棚の上には菓子類が雑に置かれている。
玲はいつものように手を伸ばす。数ある菓子類の中から適当に手にした。
大きな袋を両面の上を引っ張り、袋の中からクッキーを取る。2枚入りの透明の包装袋の端を切り、クッキーをパクリ。小気味いい音を鳴らしながら
玲は何気なしに40枚入りの袋を持ち上げ、回しながら印字されたものを見ていく。すると、玲の目が袋の表面の右下に印字された数字に留まった。一点に。
今まさに口でいい音を出すクッキーが……。
「おーいー、勝手に食べんなっていつも言ってんじゃ~ん」
優志はトイレから出てきてサイドチェストの前に立つ玲を注意する。だが、玲は険しい表情のままクッキー入り大きな袋に釘付けになっている。
パニック。そして怒り。熱情は沸々と湧いてくる。
「お前これ、賞味期限切れてんじゃん」
そう言ってクッキーが何枚も入った袋を優志に見せる。
「え?」
優志は近づいて袋を手にし、賞味期限を確認する。数秒後、言葉が呑気な具合で出される。
「ああ~、切れてるね」
「ああ~切れてるね、じゃねぇよっ!」
玲の激高は唐突だった。数回の瞬きを刻むごとに擬音が聞こえてきそうなほど、優志から驚愕があふれていた。
「なんで俺が怒られてんの!?」
玲は熱を帯びる口調で声を荒げる。
「怒るに決まってんだろ!
玲の口の中にはほろ苦いビタースイートがまだ残っている。
舌の上で踊る腐敗した味気は、唾液に染みてうすーく引き伸ばされていく。いわば何年も使った濡れ雑巾で舌を磨いているようなもんだ。君は確かに賞味期限切れのものを食べたと、舌が証明してくれるせいで、たかがお菓子のことでマジになっていく。