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それぞれの幸せ

カケルは1階で慌ただしく準備に追われていた。
鷹弥は準備された新郎新婦用のテーブル席を見て少し引く。
鷹弥「ものすごい派手だな…」
カケル「アキが張り切ってたからな~!一生に一度くらいいいんでない?」
カケルは楽しそうだ。

(今日あそこに座るのはお前だよ)
鷹弥は心の中で思って顔がニヤけた。

カランー…
ドアが空いて数人がゾロゾロと入ってくる。
圭輔たちだ。
「あれ?早くない?」というカケルにみんなは「手伝うよー」と言って動き出す。
カケルは「助かるわ!」と自然に受け止める。これも鷹弥の作戦のうちだ。

鷹弥が目配せをして、スタッフが表の看板を書き換える。
『カケル&アキ
wedding party!!!』

店内では圭輔が鷹弥に近付いてきた。
「鷹弥、おめでとう。」
目を合わせてそっと鷹弥に告げた。
鷹弥も「ありがとう。」と返すと圭輔は

「んじゃ俺はちょっと行ってくるわっ」

と上を指さして目配せをするとカケルにバレないよう2階へ上がった。

「ドレス着れた~?」
圭輔は奥に向かって声をかける。
茜がひょっこり顔を出して
「あ、圭ちゃん!準備OKだから入ってー」
と言った。

圭輔が奥に入ると、ドレス姿のアキが圭輔を見てまた泣く。

「アキ、キレイじゃん。」
圭輔は持ってきた荷物を開けながら
「さてと…俺の出番だな。アキ、もう泣くなよ。お前、俺の腕は知ってるよな。安心しろ。誰よりキレイにしてやるから。」

圭輔の登場に全てを察したアキはその言葉に一層泣く。

「もー!圭ちゃん、もっと泣かせてどうすんのよ~」
茜の言葉に圭輔も日向も笑った。

圭輔によるアキのヘアメイクが完成した。
シンプルなドレスを引き立てるようなアップスタイルのヘアアレンジはインナーカラーがアクセントになってオシャレなアキにはピッタリのスタイルだった。

圭輔「アキ、完璧だ。泣くなよ。」

アキはグッと涙をこらえて自分の姿を鏡に映す。

日向「アキちゃん…キレイ…本当に。」

圭輔「ひな、鷹弥に俺降りて大丈夫か聞いて」
日向は圭輔に言われて鷹弥に連絡する。
圭輔が降りると上の準備はOKの合図ということになっている。
日向が「大丈夫!」という仕草をすると圭輔はニコッと笑って下に降りた。

茜「あとは下からの合図を待つだけだね!」
そう言って準備していたブーケをアキに渡す。
「今日はね、ひなちゃんと鷹弥くんが中心になってみんなが共犯者なの。」
茜が言うと日向は
「アキちゃんと友達になれて私すごく幸せ。感謝してもしきれないくらい…だから今日は思いっきりお祝いさせて」
そう言ってアキに満面の笑みを見せた。

「ありがとう…」
アキは必死に泣くのを堪えながらそう言葉にするのが精一杯だった。

圭輔が1階に降りて鷹弥と目を合わせて合図をする。招待客も揃ってフロアは賑やかになっていた。

カケルが一段落して鷹弥の傍にやってきた。
「あれ?鷹弥、お前まだここにいんの?上から降りてくるんだろ?」
カケルが不思議そうに鷹弥に言うと、いつものアパレルメンバーが盛大に声を上げる。

「さぁ!皆様!!お待たせしましたー!」

パーティが始まる合図だ。

「カケル、お前こっち来い」
鷹弥は階段の下にカケルを連れていく。
「は?」カケルは不思議そうにしながらもパーティ開始にザワつく店内を鷹弥に言われるまま歩く。
アパレルメンバーが声を張って続ける。

「事情があって新郎はもうこの場にいるので…新婦!!入場ですー!!!」

その言葉とともに音楽が変わる。
カケルも鷹弥も階段を見る。

茜「さぁ!!行くよっ!」

日向と茜はドレスの裾を持ち、アキがゆっくりと階段を降りる。

カケルは階段から降りてくるウェディングドレス姿のアキを見て声を失うと共に全ての状況を察した。

アキはカケルの横に立って恥ずかしさにブーケに顔を埋める。

日向がカケルに近付いて、アキのブーケとお揃いの花をカケルの胸元に付ける。
日向「カケルちゃん、おめでとう…」
カケル「やられた…な」

そう言うとアキを見つめて

「アキ、ごめんな。こんなキレイなお前の姿…見ようとしなかったなんて俺はバカだったよ。」

そう言うカケルは今までにないほど優しい笑顔でジッとアキを見つめていた。

どよめく店内。司会進行役がまた声を張る。
「王子ー!!これは大成功って事でOK??」

突然振られた鷹弥はみんなの注目に一瞬驚くがカケルに向かって声を張って言った。

「カケル!俺らはみんなお前を祝いたいんだ!素直に祝われろ!!」

そう言って屈託のない笑顔を見せた。

鷹弥の言葉に、より盛大に祝いの言葉が飛ぶ。カケルとアキは自分たちで準備した新郎新婦席に座ってパーティが始まった。

圭輔の隣では茜が笑っている。

日向と鷹弥は言葉を交わさずにぎゅっと手を繋いだ。

パーティは終始盛り上がり、みんな楽しそうだ。

日向「アキちゃんもカケルちゃんも…すごく幸せそう」

日向と鷹弥はいつものカウンターに並んで座っていた。

鷹弥「うん…。やっぱり、俺らにはココが似合うな」

そう言うと鷹弥は日向の顔を見てそっと笑った。

「キース!キース!キース!…」
突然カケルとアキにみんなからのキスコールがかかった。盛り上がる店内。みんなカケルとアキに注目している。

日向と鷹弥はクスッと笑って顔を見合せた。誰もカウンターの方は見ていない。

日向と鷹弥はそっとキスをして幸せに笑い合う。

「日向、アイシテル」

無口な彼は彼女の耳元でそう囁くと彼女の手をぎゅっと握って笑った。

end

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