最終話
別れは突然きた。
あ、彼女と別れたとか、病気になって亡くなったとか、そう意味じゃないから安心して。
彼女はテレビドラマ、長編映画と出て、大活躍したのだけれど、一年くらい経っ時にハリウッドから映画の出演を打診されたのだ。
これはいつか世界に出て演技したいと思っていた彼女にとって願ってもないことだったらしい。
彼女はこれを承諾すると、準備を始めた。
英語の勉強も始めた。アメリカ人の教師をつけての猛特訓。
私と会える日はどんどん減っていったど、私は嬉しかった。
スカイプで会話する日が増える。
コロナの感染者もどんどん増えていって、外に出れる日がほとんど無くなっていたから、彼女とパソコン上でも一緒に会話ができてよかった。
彼女の英語の発音を聞かしてもらってけど、とても上手だった。
私にはとても真似できない。
出発の日、彼女の事務所のマネージャーと共に空港でお見送り。
寂しくないって言ったら嘘になる。
撮影は1年以上かかるから、私も覚悟しないといけなかった。
アメリカでもコロナは猛威を奮っているから、撮影は長引くかも知れない、とのこと。
彼女は絶対帰ってくると約束してくれた。
でも彼女の大きな夢を叶えるためなんだから、全力で応援しないと。
空港の出発ロビーで最後に抱き合う。
絶対に泣かないぞって思ってたけど、泣いてしまった。
「もう、カナは泣き虫なんだから」
そう言うアヤカも、泣いていた。
「アヤカも泣いてるやん!」
「約束だよ、絶対帰ってくるって」
「うん、必ず帰ってくるよ、カナのために」
「じゃ、指切りげんまんしよっか」
2人で小指を引っ掛けあって、上下に振る。
お互いに、おまじないの言葉を唱える。
「ゆーびきりげーんまん、針千本呑ーます!」
「これで、大丈夫だね」
「うん、じゃあ行ってくる!」
抱き合って、再会を誓う。
そして、彼女は手を振りながら去って行った。アメリカへ。
私も彼女の姿が小さくなるまで手を降った。
空港の屋上に行って、飛び立つ飛行機も見送った。
コロナ禍が始まった時は、こんなことが私に起きるなんて思わなかったな。
彼女がアメリカに映画の撮影に行ってから、三ヶ月が経った。
コロナの勢いは衰えない。
彼女が帰ってくるまで、待っている。
今、私は自分のパソコンの前にいる。
もう少しで、彼女とのスカイプコール。
アメリカは今夕方4時で、日本は朝の9時。
時差があるから、調整するのが大変だけど、彼女の声を聞いて、顔を見るためなら。
あ、彼女からのスカイプが鳴る。
ボタンを押して、彼女が出る。
ホテルの一室を背景に、元気そうな彼女の顔。
インターネットって本当に便利だ。海の向こうの彼女とこんな簡単に通信することができるなんて。昔の人は長い航海や、手紙を使ってでしか、お互いの連絡が取れなかったのだ。
「元気そうだね、カナ」
「うん、アヤカも! 撮影、順調?」
「順調だよ! この前監督さんにアヤカの演技が良かったって褒められちゃった」
「すごいじゃん! コロナはそっち大丈夫?」
「対策してるからね。キャストもスタッフも一つのホテルに泊まって、撮影終了まで外に出ないようにしてるの」
「うわー。完璧だね」
「日本はどう?」
「まだ感染者が出続けてる・・・・・・」
「そっか・・・・・・」
「でも負けないよ。どんなことがあっても」
彼女とのスカイプが終わった。
いつか彼女と結婚できる日が来ることを信じてる。
だって、東京タワーでデートした時、神様に祈ったんだ。
いつか彼女と一生一緒に暮らせますようにって。
最後に。
この話を聞いてくれた人へ。
コロナ禍で大変だけど、私の話を聞いて少しでも元気を与えれたらいいな。
いつか、コロナにも終わりがくる。
勇気を出して、頑張ろう!
今、片思いでも、恋人でも、家族でも、「愛してる」と伝えたい人がいたら、すぐに伝えてみて、私みたいに。
応援しています。
完