04
「は、はい。分かりました」
私は、慌てて返事をする。
もちろんうんざりしながらだが……。
それからの課長は、参考書を読みまくり、いいと思うやり方を実戦させられる。
マタニティーのためのマッサージ。
マタニティーのための正しい栄養管理から料理レシピ。
マタニティー向きの癒しの音楽などなど。
こんなに育児や妊娠に前向きな父親は、なかなかいないたろう。
ただし限度を越さなかったらの話だが……。
「ハァッ……何だか疲れた」
お店の事務所で、ぐったりとしていた。
私やお腹の赤ちゃんを気にかけて心配してくれるのは、凄く嬉しい。嬉しいけど……。
たびたび手を抜いたり、サボると叱られる。
身体に悪いと思う行動をするものなら
「お前は、母親になる自覚があるのか!?」と言われた。
あ、もちろん。普段は、優しいのよ?
つわりが酷い日なんて代わりに家事をしてくれたり、楽になる方法を調べてくれた。
仕事も終わると真っ直ぐ帰ってくれて買い物などしてくれるし。気持ちが悪いなら背中を擦ってくれる。
なのに……あの完璧主義の性格が邪魔をする。
するとデスクに温かい飲み物を差し出してくれる手が現れる。見てみると裕太君だった。
「どうぞ。ノンカフェインなので、お腹の赤ちゃんにも優しいと思いますよ?」
ニコッと笑顔で言ってくれた。
て、天使が舞い降りてきたわ……。
「ありがとう……裕太君」
「どういたしまして。
何だかお疲れ様ですね。つわりが酷いんですか?」
私を心配して言ってくれる。
課長の甥っ子である裕太君に話していいのか迷ったけど、聞いてほしくて事情を話した。
するとアハハッと笑われる。