03
私は、呆れながらため息を吐いた。
仕方がなく課長が帰って来るまで、しばらく待っていた。
課長の事を最近“誠さん”と呼ぶようにした。
そう言ってもさっきみたいに驚いたり、うっかりしてると課長呼びに戻ってしまうけど。
ちなみに……課長は“菜々子“と呼んでくれている。
何だかくすぐったくて嬉しい。
しかし、しばらく経ってもまだ課長が帰って来なかった。
一体どこまで行ったのだろうか?
「パパ遅いでちゅねぇ~」
まだ声が聞こえる訳ではないと思ったが、お腹の子に話しかけてみた……。
課長が帰って来たのは、それから30分過ぎた頃だった。大荷物を持ってだが……。
「誠さん、何を買ってきたんですか?」
「あぁ、これか」
課長は、そう言うとダイニングテーブルに行くとドサドサっと大量の本を出してきた。ほ、本!?
私は、驚きながらも手に取ってみることにした。
育児本からマタニティー本などがたくさんあった。
「正しい子育て方にニコニコファミリー。
あ、これなんて名前の姓名判断だわ!?」
えっ!?これ……全部参考書なの?
しかも、こんなにたくさん買ってくるなんて……。
唖然としていると課長は、何だか満足そうだった。
「親になるならこれぐらい読んで勉強しておかないとな。
子供の教育は、親次第で決まる。
やるからには、プロを目指すぐらいの気持ちでやるべきだ!
ほら、菜々子もこれ全部読んで知識を学んでおけ。
言っておくが手抜きは、許さんからそのつもりで極めろ」
か、課長……プロってあなたは、何を目指す気ですか!?
プロの保育士か、子育てのプロフェッショナルでもなる気かしら?
課長の完璧主義のスイッチが、どうやら入ってしまったようだった。
妥協を許さない性格だ。
やるからには、完璧にやる気だろう。
そうなれは、私も求められる訳で……勘弁してほしい。
「おい、聞いてるのか!?」