08
「実は……あの人とは、離婚したの」
頭の中が混乱していると綺麗な女性は、悲しそうな表情でそう言ってきた。えぇっ!?
こんな綺麗で上品そうな女性と別れるとか、その人の頭大丈夫なの!?
驚き過ぎて失礼なことを思ってしまった。
「何で……?あんなに仲良さそうだったのに」
課長もかなり驚いていた。
私も同じように驚いているけど……。
「フフッ……大人になると色々あるのよ。
すれ違いって言うのかしら?
お互いに仕事が忙しくて気づいたら何日も顔を合わせない日なんてしょっちゅう。
あの人は、仕事を辞めて家庭について欲しかったみたいだけど……。
私は、今の仕事に誇りとやりがいを持っているわ。
だから、お互いのために……別れたの」
その事を話す時の表情は、とても切なそうだった。
確かにそれは、キツい選択だろう。
私だって大好きで始めた喫茶店を辞めろと言われたら辛い。誇りも持っているからこそだ。
考えたらだけでもズキッと胸が痛んだ。
「そうだったんですか。
すみません……そうとは、知らずに失礼な事を言ってしまって」
「いいのよ。もう2年前の話だし……今は、仕事を生き甲斐に頑張っているから。
本当……相変わらず不知火君は、真面目なんだから」
そう言いクスクス笑っていた。
ちょっと申し訳なさそうに話す課長は、普段の課長と違い遠慮がちだ。
それが何だかチクチクしてモヤモヤする。
先輩だから?にしても……ちょっと親しくなり過ぎてない?
「あ、そうだ。ねぇ、それなら今日の食事私も参加してもいいかしら?
1人だと寂しいし……せっかくここで会ったのも何かの縁。もっと話がしたいわ」
するとその女性は、さらに驚く事を言ってきた。
えぇっ!?この人は、突然何を言っているの?
一緒に食事とか……いくら何でも図々しくない?
「……分かりました。どうせ断っても来るでしようから」
はぁっ~!?
「あら、分かっているじゃない?ダメもとで言ってみて良かったわ。皆で食べる方が美味しいものね。
場所は、何処に行くのかしら?
お酒が飲みたいし……居酒屋か小料理とかもいいわよね」
「今日は、ウチで食べようかと思ってまして。
美味しいサツマイモが手に入ったので」