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「いいえ、私も今着いたばかりなので」

 ニコニコしながら彼の身だしなみをチェックする。
スーツは、ブランド品。腕時計は、お洒落な高級時計。
 いかにもお金持ちって感じの服装だわ。
そりゃあ、年収7000万も稼いでいるのだから当然よね。

「では、行きましょうか」

「はい。どちらに行く予定なんですか?」

「ここから少し行った場所にホテルのレストランです。
美味しいと評判らしいですよ」

 ホテルのレストランか……。
するとフッと課長の顔が浮かんだ。
 そういえば……連れて行ってもらったのもホテルのレストランだったな。
 課長は、今頃どうしているのかしら?

「菜々子さん?」

「あ、いえ、何でもありませんわ」

 フフッと笑って誤魔化した。
いけない……こんな時に課長の顔を浮かぶなんてどうにかしているわ。
 気にしない、気にしない。
気を取り直してタクシーに乗り目的地に向かった。
 そして着いた先は……。

「ここって……」

 課長に連れて行ってもらったホテルだった。
まさかのデジャブ!?
 まさか、また来ることになるとは、夢にも思わなかった。

 これは言えない……この前行ったレストランだなんて。変な誤解をされかねない。
 私は、なるべく初めてのふりをしようとする。
エレベーターに乗り最上階に上がる。
 課長と一緒に行ったレストランが見えてきた。
そして中に入ると……。

「予約した安西です」

「はい。お待ちしておりました。
ご案内致します」

 出迎えてくれたのは、以前案内してくれたイケメン店員さんだった。
 あぁ、やっぱりイケメンだわ。……じゃなかった。
以前の時と相手が違うから変に思ってないかしら?

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