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帰るという叔父を車寄せまで送る。
アレックス達は気を遣って、真理と叔父を二人きりにしてくれた。

二人で手を繋ぎ、送迎用の車の前まで来るとロナルドは姪の身体を抱きしめた。

ひとしきり無言で抱きしめ合うと、身体を離して叔父は真理の頬を撫でた。

お互い、愛情あふれた顔で見つめ合うと、フッと叔父は顰めっ面をした。

「アメリア、俺の考えはこうなっても変わらん」

その言葉に真理はふふっと笑った。

「分かってる、叔父様」

ロナルドは王子と姪の恋愛に反対だからだ。
思い出したように、急にロナルドは怒り出す。

「あの王子、世界中に生中継されてる中であんな事お前にしやがって!!ダーツは卒倒するわ、ソフィアは腰抜かすわ、ランディは大笑いするわ、サナー達は大喜びするわ・・・もうめちゃくちゃだ。王室府からコメント出て、一層ドルトン中、大騒ぎさ」

確かに・・・真理は顔を赤くした。
連日、連夜、何かにつけて自分たちの「あのシーン」が世紀のロマンスとして流れている。

「色々ごめんなさい・・・」
苦笑して謝るしかない。

その笑みを少し気まずさを滲ませて見ながら、だが、とロナルドは続けた。

「俺が反対していた理由は、もうあまり意味をなさない。なぜなら戦地で活動する以上、王子の恋人であろうがなかろうが、今回のように不測の事態に巻き込まれることは実証されたからだ。そしてこの最悪ともいえる状況から・・・あの王子は確かにお前を助け出してくれた」

真理は叔父の顔を真剣に見つめる。

「お前が王子の恋人と世界中に知れ渡った以上、危惧している通りお前の活動に対する危険度は上がるだろう、ただ・・・」

そこまで言ってロナルドは少し言い淀んだ。

「あの王子なら俺に約束してくれた通り、お前を守り通してくれるんじゃないか、今回の話しを聞いてそう思えるようになった」

真理は叔父の言葉が嬉しくて、思わず笑みを零す。叔父の頬にキスを送りながら「ありがとう」と言うと、ロナルドはふんっと鼻息荒く続けた。

「だからといって、女好きで派手な遊び人の部分は信用出来んし、王族や貴族を取り巻く人間の欲の中でお前を守れるかはまた別だからな」

絶対、許せん、そう息巻く叔父の心配に、真理はなんと答えたら良いか、少し言葉に詰まった。

アレックスが好きなのは変わらない、ザルティマイの件で、その想いはさらに深くなっている。
そんな姪の様子をロナルドは見ながら溜息を吐いた。

「今回、お前の護衛に近衛が付いた、その意味はわかってるんだろ?」

ロナルドの言葉に息を飲む。当然ながらジャーナリストの叔父は気づいていたのだ。

真理は叔父の顔をひたと見詰めると頷いた。

「うん」

真理の返事に彼は苦笑すると、頭を幼い頃良くしてくれたようにポンポンと叩いた。

「なら、もう俺は何も言わん。どうせ外堀は埋まってる。お前が・・・アメリアが幸せだと思う道を選べ。今まで通りな」

いつだってお前は言うこと聞かないんだから、と付け足された言葉に真理はクスっと笑うと叔父に抱きついた。

温かい叔父の言葉にホロっと涙が溢れる。

「ありがとう・・・ロニー叔父様」

姪の背中を撫でながらロナルドは叔父らしく言い聞かせた。

「とにかく今はゆっくり休んで、怪我を早く治せ。もし・・・PTSDが出たら・・・」

「分かってる、すぐ病院に行くわ」

若い頃から戦地を渡り歩く姪をの心を心配して、事あるごとに、口癖のように叔父はそう言う。

その答えに叔父は「まぁ、王子が付いてるから大丈夫か」と不本意そうに言うから、真理はそうね、と照れくさい気持ちで微笑んだ。

とにかく今のアレックスは過保護も過干渉も通り越して、真理の一挙手一投足を見張ってる。
悪夢でも見ようものなら、大変な騒ぎになるのは目に見えてるのだ。

姪の笑顔をロナルドは眩しそうに見詰めると、今度は高級紙の編集長としての顔を覗かせた。

「落ち着いたら、写真を頼む。世界がハロルドの写真を待っている」

一枚の買取価格は変わらんからな、と強《したた》かな顔で嘯く叔父に、真理はまぁっ!とニッコリしながら叔父の頬にキスをした。
そして、値上げして欲しいと言いながら、今度こそ二人で声を上げて笑いあった。

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