第80話 両親との再会
ぶっそうなことをアウェイで言い切るアリスは、場の空気が読めないばかりでなく、雰囲気を察することもできないらしい。
(傲慢なんてものじゃないわ。すべてのものごとが彼女の都合どおりに動いてきたから、そうならないことが彼女にとっては異常なのね。いくらゲームのヒロインとはいえ、すべてがすべて思いどおりになるはず……)
……と考えたところで、はっと宰相の存在に気がつく。
(宰相が自分の駒として、アリスを利用していた? 彼女の人心掌握術……もとい、ゲームのヒロイン補正を使って、彼女を盾にしてミストリア王国を乗っ取ろうと……?)
これまでもアリスが有頂天でいられるよう、宰相が裏で動いていたとしたら――?
(アリスの蛮行にばかり目が行っていたけど、黒幕は宰相だわ。ジャファルさまのおっしゃるとおり古狸だったということね)
両親が貴賓室に入ってくると、ローゼマリアはすぐさま両親に抱きついた。
「ローゼ!」
「ローザマリア!」
「お父さま! お母さま! よくご無事で……」
ローゼマリアの頭を撫でながら、ブレンダンがぎゅっと抱きしめてくる。
当然、ローゼマリアもしっかりと抱き返した。その次に、母にも抱きつく。
「お父さま……お母さま……うっうぇ……」
「無事でよかったわ。わたくしの愛しいローゼ」
ローゼマリアは母の胸に抱かれ、感極まって大粒の涙をこぼして泣き出してしまった。
「ご無事で……嬉しい……うっ……うっ……」
母に優しく背中を撫でられながら、ローゼマリアは子どもの頃のように母に甘える。
ブレンダンがジャファルに向かって一礼すると、母もローゼマリアを抱きしめながら小さく頭を下げた。
「ジャファル国王陛下のおかげだ。ああ、ローゼ。ほんとうに心配したぞ。ケガはしていないか?」
「ええ。ジャファルさまが、いつでもわたくしを守ってくださいましたから。わたくしのせいで、お父さまとお母さまに迷惑をおかけしてしまいました。……ごめんなさい」
「おまえのせいではないよ。それも、これも……」
ブレンダンがローゼマリアから距離を取ると、アリスと宰相をギリッと睨みつける。
「奴らの仕組んだことだ。恨むなら悪逆非道なことばかりをしてきた奴らを恨む」
ローゼマリアの両親が現われたことで、アリスがふくれっ面でソファにドスンと座り込んだ。
「やだ~もう、どうする? 宰相。すっごく面倒な感じになっちゃったけど」
「どうしましょうかね……」
宰相は変わらず、微動だにせずコーヒーをすすっている。
ブレンダンはソファの前に大股で移動すると、宰相をギロリと睨みつけた。