ハードゥスは特殊な世界
ハードゥスは特殊な世界だ。なにせ他の世界のように長い時間を掛けて文明が発展していくというのとは少し違うのだから。無論、そういった部分もあるのだが。
しかし、ハードゥスは無数の世界から人々が流れ着く場所なので、文明の発展速度は不安定だ。そして、様々な文明が混じり合う独特な文化を形成している。
その辺りをコントロールしながら、ネメシスとエイビスはれいから任された任務に励む。
ネメシスとエイビスは他の管理補佐よりも多くの権限を預かっているので、実行出来る幅が広い。漂着物を集めた一角だけとはいえ、二人で管理するには広い場所なので、それでも中々大変ではあるが。
それも少し前にれいから果実を貰って成長したことにより、少し余裕が出来ていた。もっとも、ハードゥスは順調に規模を拡大させているので、それもいつまで続くか分からない。二人の成長速度は結構早いというのに、現状では漂着物を集めた一角の拡大の方が僅かに早いのだ。
もう一人同じ役割の者が居ればとも思うが、それはれいに頼まなければならない。しかし、それで失望されるのは何よりも恐ろしい。実際はそんな興味も持たれないだろうが、それはそれである。
かといって、全ての管理補佐に与えられている権限の一つである配下の創造では創造主が管理補佐なので、創造した配下の能力は管理補佐よりも劣ってしまう。
ちなみに、この権限を自主的に使用した管理補佐は、ハードゥスでは今のところ存在していない。ハードゥスは規模に比して管理補佐の数が若干多いので、与えられた役割はそこまでしなければ回らないほどに忙しい、というほどではないのだから。それと共に、創造は己らの創造主であるれいの領分だからという想いも何処かしらで抱いているようだ。
れいとしてはそういう権限を管理補佐に与えている以上、邪魔になるほどの数を創造しないのであれば全く気にもしないのだが。
それはそれとしても、仮に与えられている仕事が本当に回らなくなりそうなほどになったとしても、その前にれいが何かしら手を打つので、わざわざ創造する必要がないという理由もあった。むしろそれが一番の理由かもしれない。
そう考えれば、ネメシスとエイビスに果実を与えたのもそのためだったのだろう。
実際、あの果実を食べて能力が一気に成長したおかげで、二人は現在余裕があるのだから。それに、二人と似た状況であった一部の管理補佐全てにも同じく果実を与えているので、間違いはないだろう。れいはかなりの数の仕事を管理補佐達に任せながらも、それら全てをしっかりと管理しているということだ。
今まで問題なくハードゥスが運営されているのは、やはりれいのおかげということだろう。流石は何の指針も無い手探りの状態から過不足なく世界を運営してみせた最初の管理者である。まぁ、ハードゥスのれいはその分身体だが。
その管理者であるれいは現在、増える一方の在庫をどうするべきか悩んでいた。最後の手段として元の世界に送り返してもいいのだが、その送り先が消滅しているモノも多いので、なんとも言えない。
もっとも、れいに漂着物を元の世界に送り返すつもりは全く無いのだが。
折角用意したれいの思い通りにいかない品なのだから、存分に活用して楽しまなければつまらない。それに、本当はやろうと思えば他の世界や外の世界に干渉出来るのを敢えてしていないのは、こういう悩みを楽しみたいからなのだから。
どうやられいにとっては、全能の存在というのも退屈でしかないようだ。もしかしたらだからこそ、れいは感情の成長が他の管理者達と比べてあまりにも遅いのかもしれない。