クルちゃんと惑星ジェルダ Fractal.7
「イ~ヤ~や~~!」
たぶん、おそらく、ほぼ確定的に、間違いなく〝
私の知人であり、
あ、森から矢のように飛び出した。
ヘリウムブースター全開で。
すぐさま超高速で飛来するイザーナ。
「
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それだけ焦っていたという事だろう。
疑問は、いくつかある。
何故、そんなに焦っていたのだろう?
何に対して、そんなに怯えていたのだろう?
どうやってニョロロトテテップの拉致状況下から脱出したのだろう?
そんな考察点を
「うふふ♡ 逃しませんわ ♪ モモカ様♡ 」
森から跳躍に飛び上がったのは、よく見知ったメイドベガ。
視認と同時に疑問が一気に氷解した。
おそらくラムスが救出へ向かった──
その後、悪い性癖が発動──
大方、そんなところだろう。
「では、失礼致します」
「ぎゃん?」
ラムスが腕を引くと、連動したかのようにGモモが墜落した。
「ふぐぅ……う……動けへん?」
大の字で地面へと拘束されるGモモ。
「さて、それでは……いまこそ愛の
「イーヤーやーーーーッ!」
両手広げの偏愛に飛び込むメイド。
恐々と拒否を叫ぶ巨大少女。
ふむ?
なるほど、そういう事か。
ラムスは〈ブロブベガ〉であり、そもそも部位境界の概念は適用されない。
おそらくGモモには紐形状で部位を結び付け、それを
ついでに言えば、
そして、地面には
彼女の粘着力と張力は極めて高い。
かつては飛翔せんとする巨大ロボットを地面に縫い付けた実績もある。
それはともかく……とりあえず尻尾部の
「あうッ?」
落下した。土煙を上げて。
「ラムス、
パモカを
心配無用。
彼女も〈パモカ〉を所有している。
『痛たたたた……何ですの!
「アナタは何をやっている?」
『あら?
「その後」
『決まっているじゃありませんか? そ・の・後・は……ウフフ ♪ 』
何が「決まっている」かは知らないし「ウフフ」と言われても意味不明。
回答にはなっていない。
「助けてぇ! リンちゃん! クルちゃん!」
詳細は解らないが、面倒事が増えたのは直感した。
ふむ? どうしよう?
「アタシのモモに何してんだーーッ! この変態メイドーーッ!」
Gリンが
『パブロフの犬』
そのままGモモの前へと
「あら? そんなに出番が欲しいんですの? モブ女?」
「うっさい! このビチビチビッチメイド! アタシのモモに何かしたら、タダじゃおかないわよ!」
一触即発に対峙する似た者性癖。
ふむ? やはりカオス化した。
こうなると〈ネクラナミコン〉争奪戦は、ドクロイガーに賭けるしかない。
少なくともニョロロトテップへ渡すよりはマシだ。
改めて戦況へ振り返って見ると……あ、無様にやられてフッ飛んだ。
使えない。
「ようやく手に入れたぞ……我が〈ネクラナミコン〉を」
確保した石板へと至悦に見入る。
「天条リン、
「ふぇ? 〈ネクラナミコン〉奪われたん? 大変や!」
事態の重大さを理解……してはいないかもしれないが、とりあえずGモモは狼狽の色を浮かべた。
一方、Gリンは……。
「くれてやれ! ンなモン!」
ラムスを
完全に頭へ血が昇っている。
「アカン! リンちゃん! アレ、クルちゃんの大切な物やん! 一生懸命集めてる物やん!」
「石板の一個や二個知るか! 後で
天条リンの言い分は分かる。
どちらを比重に置くか……天秤は
……何故?
確かに天条リンにとっては〝
それは承知している。
けれど、私にとっての最優先事項は〈ネクラナミコン〉だったはずだ。
なのに何故、私は同調の理解を
ふむ?
「アカン!」
「アカンくない!」
「アカン! ウチ、クルちゃん困らせたない! クルちゃん泣くのイヤや!」
……別に泣かない。
が、どうやら
こうなった時の彼女は、周りを屈するまで軟化しない。
「ふぎぎぎ……っ!」
懸命に〝ラムスホイホイ〟を引き剥がそうと試みる。
たぶん無理。
ラムスが、ほどかない限りは。
というか、ラムス?
何故、ほどかない?
私が知る限り、アナタは聡明な人種に分類される。
というか、抜け目が無い。
というか、したたかだ。
場合によっては
ただの
状況を把握できない
ふむ?
そんな疑問を巡らせる最中、不意に彼女は人差し指をフルフルと立てた。
「その〈ネクラナミコン〉というのは、
クンッと指を引くと、強引に石板が引き寄せられる。
「何ッ?」
ニョロロトテップが動揺の色を染めるも、
獲物は
「たぶん
上空の敵へ向けて温顔ニッコリと挑発を投げ掛けた。
静かな敵意が反目する。
「惑星ジェルダの女王……キサマ、よくも!」
「あら?
「……何故だ?」
「はい?」
「キサマは〈ネクラナミコン〉の争奪戦には無関心……部外者であったはずだ」
「ですわね。正直、こんな石板どうでもいいですわ。役に立ちそうにもありませんし……
「ならば、何故だ!」
「友達がコレクションしていますので ♪ 」
……ふむ?
「覚悟は出来ているのであろうな? クイーン・ジェルダ!」
「あら、それはコチラの
「何?」
「
「ラムスちゃん、ロッポちゃん達の事を知ってたん?」
「ああん、モモカ様♡ もう一度〝ラムスちゃん〟と呼んで下さいまし ♪ 」
「……イヤや」
「シクシク……そんな御無体な」
「っていうか、ほどいて~!」
「それは却下致します ♪ 」
「何でッ?」
「モモカ様を危険な前線へ立たせたくはありませんから★」
「ふぇ? ウチの
「そ・れ・に ♪ ジタバタと苦悶にもがくモモカ様の肢体を見ていたら、何だか興奮してまいりましたの……うふふふふ♡ 」
「やっぱほどいてッ!」
ラムス、アナタは
「ってか! だったら、何でほったらかしにしてたんだッつーの!」
「
さすがにラムスだ。
その辺りの
「キサマ達
「さて? 勝率は判りませんけれど、勝てるんじゃありませんこと?」
「何?」
「えっと……何でしたかしら? そうそう、確か──やってみなけりゃ分からない! やるだけやったら、どうにかなる! ──でしたかしら?」
「何だ? それは?」
「「バカの格言」」
私とラムスの断言が意図せず重なった。
「どうやら戦力差を分かっていないようだな。私がその気になれば、こんな惑星など壊滅できるのだぞ!」
「でしたら、その
不敵な余裕を飾り、彼女は指笛を高らかに吹いた。
振動──。
惑星自体が震えているかのような微震──。
その
発生源は四方八方からの土煙。
それは大地の
この惑星ジェルダに
六本腕のゴリラ〈アリログ〉──。
三頭のサイ〈タングロス〉──。
電光を
そして、山の
ありとあらゆる原生生物が、ラムスの指揮下へと集合した!
まるで〈惑星ジェルダの意思〉を、総意に代弁するかのように!
「さて、では御相手して頂けます?