再度の戦闘
HPを満タンまで回復させておこう。敵がいつ現れないとも限らない。
別の女性が室内に入ってきた。こちらは女子高生かなと思わせる肌の色をしていた。
「悪党四人組を倒していただいたのですね。ありがとうございます」
クスリは目の前の女性についても信用できなかった。こやつが棟梁だという可能性も残されている。
身元をどのように確かめようかなと思っていると、女性は先手を打ってきた。
「私は敵ではありません。安心してください」
敵ではないと主張する奴に限って、危ないというのはよくある話。クスリは警戒レベルを上げることにした。
女子高生の知能レベルは高くなさそうだ。こちらがアクションを起こさなくとも、勝手にボロを出すはずだ。コミュニケーションの低いタイプというのは、こういうときは扱いやすい。
女子高校生さながらの女は、豪華な食事を提供する。最初の宿に劣らぬ食材ばかりだった。
「豪華な食事を用意しました。ゆっくりとご堪能ください」
豪勢な食事に興奮することとなった。現実世界ではどんなに頑張ったとしても、このような飯にありつくことは不可能だ。
クスリはがっつこうかなと思ったものの、食べ物を口にすることはなかった。アンモニアさながらの強烈な臭いを鼻孔で嗅ぎ取る。
「食べ物から変な臭いはしませんか」
女性の目線はこちらから逸れた。やましいことがあるのはすぐにわかった。
「そ・・そんな・・・・・ことは・・・・ないですよ」
クスリは食事を突き返すことにした。毒の入った食べ物を口にするわけにはいかない。
「安全であることを証明するために、最初に食べていただけませんか」
女子高生はあくまでとぼけていたものの、視線は定まっていなかった。
「私は食べましたよ。身体に何の異常もありませんでした」
クスリは感情的になることなく、冷静に話を進めた。
「目の前で食べてください」
動揺しているのか、目ははっきりと泳いでいる。頬からは冷や汗が滲み出ていた。
「料理に毒なんて入っていません。さあさあ、食べてください」
クスリは変なにおいがするといっただけで、毒入りであることを追及したわけではない。それにもかかわらず、毒という表現を用いるのはおかしい。食べ物に毒物を仕込んだのは、女子高生だと確信する。
「僕は毒については言及していません。どうしてそのような表現になったのかを説明してください」
これ以上のごまかしは訊かないと思ったのか、うすら笑いを浮かべながら、皿を払いのけていた。
「ばれてしまったものはしょうがねえ。あなたを闇に葬らせていただきましょう」
電流ゾーンといい、鬼畜ゲーを極めている。ちょっとくらいは安息の時間をほしい。
数秒後、戦闘画面に切り替わることとなった。
「女子高生が現れた」
女子高生なので簡単に倒せるのではなかろうか。見た目は華奢ゆえに、強そうには見えない。
クスリは毒殺しようとした女をどのように料理するのかを考える。美人ではあるものの、命を狙うものには容赦はしない。
「たつじんのけん」で攻撃を仕掛ける。「マスターの弟子」のときと同じく、「シールド」が貼られることとなった。
「女子高生は攻撃を回避した」
回避したというより、勝手にシールドに防御されたように感じた。クスリは「たつじんのけん」の性能に、違和感を持ち始めるようになっていた。剣自体が偽物なのかもしれない。
「たつじんのぼうぐ」を装備していた場合、ダメージは数倍に膨れ上がっていたのかな。クスリはその答えを知ることはできない。
女子高生は短剣を首筋めがけて振り下ろしてきた。クスリの体内は激痛に見舞われることになった。
「クスリは30のダメージを受けた」
ダメージは小さく、大した敵ではなさそうだ。目の前の女をとっとと片付けて、冒険の世界に戻るとするか。
クスリは「しゅりけん」を投げつける。今度は「シールド」は貼られず、女子高生の心臓に命中することとなった。
「女子高生を倒した」
女子高生を撃破すると、先ほどとは異なる宿に飛ばされることとなった。こちらが本物なのかな。
「すいみんメーター」は、あと四時間後に睡眠が必要と書かれていた。三日三晩ごはん抜きならかろうじて我慢できるものの、睡眠はきっちりととる必要がある。クスリは布団で横になることにした。命を狙われるリスクはあるものの、野宿よりも安全性は高いと思われる。無防備のまま、六時間くらいの睡眠を取るのはあまりにも怖すぎる。