バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

ムツキにゃし! その2

 現在僕の家族はですね、

 妻のスア……伝説の魔法使い
 長女で養女のパラナミオ……サラマンダー
 長男のリョータ……思念波魔法が使えます
 双子の姉で次女のアルト……思念波魔法・飛行魔法が使えます
 双子の妹で三女のムツキ……成長魔法が使えます

 以上の一男三女の家族構成なのですが……なんでしょうかね、みんな尋常じゃない注釈がついちゃってるんですよね、ホント。
 この家系図見てると、なんか僕だけごくごく普通過ぎてもう笑うしかありません……あはは。

 で、スアがですね、リョータ・アルト・ムツキの魔法の素質を調べてみたところ、

 リョータ……創造(クリエイト)系魔法
 アルト………攻撃・防御系魔法
 ムツキ……変化系魔法

 それぞれ、こんな魔法に対する強い素質を持っている事がわかりました。
 
 リョータの創造(クリエイト)系魔法っていうのは、色々な物を作り出す事が出来る魔法で、アルトの魔法は文字通り攻撃防御に特化した魔法、ムツキの変化系魔法は自分の姿を色々な物に変化させることが出来る魔法です。
 まだまだ成長過程の3人は、それらの魔法のさわりくらいしか使用出来ていないそうなんですけど、
「……私が、しっかり教えてあげる、ね」
 スアは、3人を交互に撫でながら優しい笑みを浮かべていました。

 っていうか、スアはこの3人が使える魔法を当然のように使えるわけでして、しかも全て最高レベルで……なんと言いますか、改めて僕の奥さんってすごいんだな、と思ったわけです、はい。

 で、スアが3人を撫でていると、その横にパラナミオが抱きついていきました。
「ママ、パラナミオにも召喚魔法の特訓をお願いします!」
 真顔でスアにお願いしていくパラナミオなんですが…… 
 人種の姿をしているパラナミオですが、その本体はドラゴンの1種であるサラマンダーです。
 で、サラマンダーって暗黒召喚魔法を使用することが出来る種族らしく、パラナミオもその例に漏れず魔獣を召喚することが出来るんです。
 でも、まだ子供のパラナミオはですね、暗黒召喚魔法で呼び出すことが出来る最低ランクの骨人間(スケルトン)を召喚するのがやっとなんですよね。
 時折、その上位種である黒骨人間(ブラックスケルトン)なんかを召喚出来ることもあるんですけどまだまだ成長過程なんです。
 ただ、最近のパラナミオはですね、昼間は学校に行き、家に帰ったらまず宿題。
 それが終わったらスアのお手伝いをしながらリョータ達のお世話をします。
 その後、みんなでご飯を食べたら僕と一緒にお風呂。
 そして皆でおやすみなさい……と、1日のスケジュールが目白押しだったもんですから、召喚魔法の練習が若干ご無沙汰になっていたようなんです。
 ですが、こうして弟や妹達が魔法の適正を判断されて、で、スアがみんなにしっかり教えて上げると言ったもんですから、対抗心といいますか、改めて自分も頑張らなきゃって気持ちになったみたいなんですよね。
 で、そんなパラナミオに、スアはニッコリ笑いかけていきまして、
「……うん、一緒に頑張ろう、ね」
 そう言いながら頭を優しく撫でていきました。
 パラナミオは、スアに頭を撫でられながら嬉しそうに、気持ちよさそうに笑っていました。
 なんか、いいですよね、こういう光景って。

◇◇

 そんな中……僕はちょっと疑問に思っていたことがあるんです。
 ムツキの話し方なんですよ。
 なんかやたら語尾に「にゃし」とか「にゃ」とかつけたがるんですよね……

 ……ただ、この口調……記憶のどこかにあったようななかったような……

 で、そんな事を思いながらお風呂に入っていると、風呂の戸ががらっと開きました。
 僕は、いつものようにパラナミオが駆け込んで来たのかと思ってそちらへ視線を向けたらですね
「ムツキ、いざまいります!」
 そう言いながら、少女形態に自分の体を成長させたムツキが突っ込んで来ました。
 魚雷のようにまっすぐ僕に突っ込んで来たムツキを、僕は慌てて抱き止めました。
 するとムツキは僕に抱きつきながら嬉しそうに喉をならしています。
「はにゃ~ん♪」
 なんかそんな言葉を発しながら嬉しそうにしているムツキなんですけど、
「ムツキ、その話し方はどこで覚えたんだい?」
 僕はそう聞いて見ました。
 するとムツキはニッコリ笑って言いました。
「パパの頭の中のムツキがこんな話し方をしてるにゃしぃ」

 ……はい?
 ……僕の頭の中のムツキが?
 ……こんな話し方を?

 僕がですね、頭の中にいくつもクエスチョンマークを浮かべていると、ムツキは少し困った表情を浮かべながら
「なんかね、水の上を走ってて~背中になんかせおってて~ばんば~んって打ってるにゃしぃ」
 身振り手振りを交えながらそんな事を言い出したわけです。

 ……あ

 事ここに至りまして、僕はようやくあるものに思い当たりました。

 僕がまだ向こうの世界に居た頃……学生時代にはですね、それなりにゲームもして遊んでいたんです。
 で、一時期はまったゲームにですね「海戦これくしょん」というゲームがあったんです。
 このゲーム、史実に登場した軍艦が可愛い女の子になっていてですね、その女の子達で編制した艦隊で戦うシュミレーションゲームだったんです。
 ……で、そのゲームで僕、ムツキという名前の女の子キャラをずっと使ってたんですよ。
 最初に選べるキャラの1人だったってだけなんですけど……なんとなく気に入ってずっと使い続けていたんです。
 コンビニおもてなしの店長になってからの激務で、ゲームをする時間なんてすっかりなくなってたもんですから、完全に忘れていたんです、このゲームのこと。
 で、ムツキってば、そのゲームのムツキとそっくりな話し方をしているわけですよ。

「パパの頭の中のムツキはこんな話し方にゃしぃ、にしし」
 ムツキは、そう言うと再び僕に頬をすり寄せながら喉をならしていきました。

 ……なんといいますか……ま、まさか自分の頭の中のゲームの記憶をたどられて、あまつさえその記憶の中に残っていた同名のゲームキャラの名前から、その話し方を勉強されていたなんて夢にも思っていませんでしたよ。
 いや、まぁでもこのゲームのキャラでよかったですよ……もし過去に遊んだウッフンなゲームの……あ、いえ何でもありません。

 でもまぁ、正直な話、それはどうでもいいことです。
 ムツキは、僕の可愛い娘……それがすべてですからね。

 そんなムツキは、僕の胸に頬ずりしながら
「ムツキ、パパにいっぱいいっぱい褒めてもらいたいから、とってもとっても頑張っていくのです」
 そう言いながら、僕の方を見つめるとですね、目を閉じて口を突き出して来ました。
 で、僕はそんなムツキにですね、パラナミオにするように僕の頬をムツキの口にあてていきました。
 すると、ムツキは頬を赤く染めながら嬉しそうに微笑みました。
「ムツキ、感激ぃ!」
 そう言うと、ムツキは再び僕に抱きついてきたんですけど……そのままいきなり赤ちゃんの姿に戻っていきました。
 湯船に水没しそうになったムツキを、僕は慌てて抱き上げました。
 すると、ムツキは完全に熟睡モードに突入していたんです。
 まだ赤ちゃんのムツキです。
 どうやら魔力がキレたようですね。
 僕は、そんなムツキを横抱きにしながら湯船に浸かり直していきました。
 すると、再び風呂の戸が開きまして
「パパ! パラナミオも一緒に入ります!」
 そう言いながら、素っ裸のパラナミオが駆け込んできました。
 よく見ると、その後方からヨチヨチ歩きのリョータと、宙を舞っているアルトも続いてきます、
 で、一番後方からスアが……

 と、いうわけで、今日も僕は家族全員でお風呂時間を楽しんだわけです、はい。

しおり