コンビニおもてなしの営業会議と、お風呂
現在のコンビニおもてなしは、この異世界に4店舗展開しています。
加えて、系列店として、
コンビニおもてなし食堂エンテン亭を、ブラコンベに
おもてなし酒場をガタコンベとブラコンベに
おもてなし商会をティーケー海岸とテトテ集落に
それぞれ展開しています。
イエロとセーテンが狩りを行ってコンビニおもてなしの弁当や食堂・酒場で使用するための肉を入手してくれていますし、3号店店長のエレが管理してくれている3号店裏の畑や、テトテ集落から野菜類をあれこれ仕入れてもいます。
ガタコンベの市場も当然利用していますよ。地元振興しとかないとあれですからね。
ティーケー海岸にあるアルリズドグ商会から魚介類を仕入れてもいますけど、これ、かなり好評なんですよね。
酒の製造や、ザッケの養殖なんかはスアの使い魔の森で大規模に行っています。
スアの使い魔のみんなは「スア様のお役に立てる!」ってすっごく張り切って頑張ってくれています。
魔法使いが多く住んでいる魔法使い集落にある3号店には、スアのお母さんが社長を務めている魔女魔法出版から仕入れた本を大規模に扱っています。
魔法書が大半ですけど、中には僕が書いた『異世界コンビニおもてなし繁盛記』も並んでいるんですよね……ちなみに、売り上げはボチボチといいますか、重版の話がいまだにきませんので、まぁそんなもんでしょう……ははは。
ちなみに、先日発売になったスアの新作『ゴブリンでも出来る思念波魔法【初級編】』は、発売初日に重版されまして、発売から1週間もたっていないのにすでに4回目の重版がかかっています。
ほんと、スアってばすごいなと思うわけです、はい。
オトの街の皆さんや、ドンタコスゥコ商会、辺境駐屯地のみんななど、いろんな人達の協力を得ながら、コンビニおもてなしは毎日頑張って営業しているわけです、はい。
で、コンビニおもてなし4店舗と、エンテン亭・おもてなし酒場・おもてなし商会の各代表者は、週に1度本店奥にあります応接室に集まって営業会議をすることになっています。
今日は、その会議の日です。
応接室の中には、
本店店長の僕
2号店店長のシャルンエッセンス
3号店店長のエレ
4号店店長のクローコ
エンテン亭共同代表のテンテンコウ♀
おもてなし商会代表のファラ
以上のメンバーが集まっています。
ちなみに、おもてなし酒場の代表は、ガタコンベ店は僕、ブラコンベ店はシャルンエッセンスが責任者を兼ねています。
「今週も、忙しい中集まってくれてありがとう」
僕が頭を下げると、皆も挨拶を返してくれます。
その後、各店の状況報告を順番にしてもらいます。
「んじゃ、まずは本店とおもてなし酒場ガタコンベ店の報告から。
今週はクローコさんが手がけた化粧品の販売が予想以上でした。おかげで品切れが続いてて……クローコさん、出来る範囲でいいからさ、増産の検討をよろしくお願いしたい」
僕がそう言うと、僕の隣に座っていたシャルンエッセンスが挙手して立ち上がりました。
「それに関しては2号店もぜひお願いしたいですわ! こちらも売り上げがすごいのですから」
そんな僕とシャルンエッセンスの発言を受けて、クローコさんはすごく嬉しそうに笑っています。
「はいはい、クローコマジ頑張るし! みんなすっごい気合い入ってるし! クローコにおまかせ!」
そう言って、舌出し横ピース+ドヤ顔をしていったクローコさんです。
ちなみに、魔法使い集落にある3号店はさっぱりみたいです……魔法使いのみなさんって、あんまりお化粧には興味がないみたいなんですよね。
そのかわり、3号店ではスア製の魔法薬が相変わらず好調に売れ続けています。
これ、使用するというよりも、魔法使いの皆さんが自分で魔法薬を作成する際のお手本にするために購入していっているみたいなんです。
……ただ、スアの作る魔法薬ってその精度や純度がホント半端ないらしく高いらしくて、魔法使い集落のみなさんは誰も再現することが出来ていないそうなんです。それでもなんとかして再現しようとする魔法使い集落の皆さんの頑張りのおかげもあって、皆さんが作成している魔法薬の精度や純度が飛躍的にあがっているそうなんですよ。
で、スアも、たまに3号店に顔をだして魔法使いの皆さんにアドバイスをしているそうで、スアが顔を出すと集落中の魔法使いの皆さんが集まってくるそうです。
どっかのおーっほっほっほって笑いながらお茶ばっか飲んでた魔法使い達と違って、自分の知識や技術を魔法使い達に惜しみなく皆に教えているスアなんです。
ほんと、アイツらにスアの爪の垢を煎じて飲ませてやりたい……と思ったんですけど、もったいないので、僕の爪の垢でも飲ませてやろうかと思ったりするわけです。
今日の会議では、クローコさん担当の化粧品の増産に関する要望と、間近に迫ってきているセツブンの予約の取りまとめと商品引き渡しに関する確認を行ったところで終了となりました。
で、会議が終わったところで、ファラさんが僕のところに寄って来ました。
「店長、そろそろあのドンタコスゥコがやってくる頃ですよね?」
「そうだね、月末だしそろそろだと思うよ」
僕の言葉を聞いたファラさんは、眼鏡をクイッと押し上げながら不敵な笑みを浮かべました。
「フフフ……今月も思い知らせてやりますわ」
「そ、そうだね……よ、よろしくね」
低い声で笑うファラさんに、僕は苦笑しながら返答するのがやっとだったわけです、はい。
定例の会議が終わった応接室の中では、みんながワイワイと雑談しながら席を立っています。
毎週行っているこの会議ですけど、この光景を見るのが僕は結構好きなんです。
僕が元いた世界では、こんな光景一度もありませんでしたから。
僕がコンビニおもてなしを任された際には、もうみんな冷め切っていましたからね……売り上げアップのための会議をしようといっても、誰一人集まってくれませんでしたし……
そんなコンビニおもてなしが、こんな異世界で、こうしてたくさんのみんなの力で繁盛している……ホントに、すっごく不思議な感じですけど、素直に嬉しいわけです。
僕は、改めて皆を見回していくと、
「じゃ、みんな、今週もよろしくお願いします」
そう言って頭をさげました。
そんな僕に、みんなは一斉に
「「「はい!」」」
と、元気な返事をかえしてくれました。
そんな皆に、僕は笑顔をうかべていきました。
◇◇
この日も無事営業を終えた僕は、クローコさんと化粧品のことで軽く打ち合わせをしてから巨木の家へと戻りました。
いつものように寮のみんなと、スア達家族皆で一緒に夕食を終えた僕は、お風呂に入りました。
「パパ、今日も一緒にはいります!」
そう言って、パラナミオがいつものように元気にお風呂の中に駆け込んできました。
パラナミオは、体と髪の毛を洗ってから僕の隣に入ってきました。
4号店のあるララコンベの温泉のお湯を引き込んでいるこの温泉風呂は湯船をかなり大きめにしてありますので、僕とパラナミオが2人一緒に入っても全然大丈夫なんですよね。
で、僕とパラナミオが一緒に入っていると、今度はスアがやってきました。
スアは、お眠モードのムツキを抱っこしています。
で、その左右にリョータとアルトがテクテク並んで歩いています。
すでに歩けるようになっているリョータがですね、歩くためにどんな感じで魔法を使えばいいのかをアルトに教えてあげたらしいんですよ。そのおかげでアルトも魔法の力で歩けるようになっているんです。
ちなみに、アルトの魔法だけでは不安定らしく、お兄ちゃんのリョータがフォローしてあげているみたいです。
ちなみに、スアは2人が頑張っている様子をあえて見守っているそうです。
もちろん、危ないときにはすぐにフォロー出来るように配慮しているそうですけどね。
僕は魔法が一切使えませんし、感じる事も出来ませんのでリョータとアルト、スアの3人が思念波でそんなやりとりをしているというのに、それを感じる事が出来ないことを、少し寂しいなと思いました。
すると、そんな僕の感情を感じ取ったリョータ・アルト・スアがですね
「ぱぁぱしゅき」
と言いながら湯船に入って僕に抱きついて来たリョータを筆頭に、少しでも早く僕に抱きつきたかったらしいアルトは自分の体を宙に浮かせて僕に抱きついて来まして、そしてスアはムツキを抱っこしたまま僕に寄り添ってきまして、
「……旦那様、好き、よ……ムッちゃんも、もちろん、よ」
そう言ってくれました。
で、いきなり4人が僕に寄り添ったもんですから、パラナミオもみんなに負けじと僕の腕を抱きしめながら
「パパ!パラナミオも、もちろんパパのこと大好きです!」
そう言って抱きついて来ました。
なんといいますか、ホント素敵な家族に囲まれて僕は幸せ者だなぁ……と思ったわけです。
今なら、魔王でも倒せそうな気がしないでもないんですけど、きっと魔王ビナスさんも今頃は内縁の旦那さんと仲良くしている頃だと思いますので想像しないことにしておきます。