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第7話 それは紛れもなく冤罪です!

(間違いない! だって十人の攻略ルートすべてに、ローゼマリアの断罪シーンがあるもの! 嫌ってほど、このシーンを見たわ!)

 そして、すぐに大事なことに気がつく。

(え? そのゲームに登場する悪役令嬢ローゼマリアが、わたくし自身ということ? なに、どういうこと?)

 なぜ散々やりこんだ乙女ゲームの世界が目の前に広がっていて、自分が登場人物になっているのだろうか?

 頭がグルグルしたまま、ことの事態にパニックを起こしていた。

 ブレンダンは怒り心頭といった調子でユージンに言い返しているし、国王陛下と王妃はどうしたものかとオロオロしている。

 ユージンが謎の自信で、意気揚々とこう言い切る。

「ローゼマリアだけではない! ミットフォード公爵家がアリスを殺そうとした黒幕であることもおさえている! 衛兵! ローゼマリアとミットフォード公爵家夫妻を、王太子妃殺害未遂の罪で捕えよ!」

 しかし衛兵は、ミストリア王国で最も権力のある公爵家……ミットフォード公爵家当主と、その公爵令嬢に無礼な真似はできないとばかり躊躇している。

 ブレンダンが怒りを込めて、アリスとユージンを睨みつけた。

「いくら王太子といえども、証拠もなく我々を拘束しようとするとは、権力の横暴というものです! 先に王太子妃殺害未遂の証拠を提出願いたい! 誰の目から見ても、証拠となりえるものを!」

 言葉に詰まったのか、ユージンがぐぐっと喉を鳴らす。

「誰の目から見てもだと……? どういう意味だ。そ、それに王太子の私が命じているというのに、なぜ誰も動かん? 衛兵ども!」

 あんなにも憧れていたユージンだが、今のローゼマリアには滑稽に見えた。
 ズレた持論を意気揚々と掲げた挙句、正論を突きつけられただけで簡単に狼狽えるなど間抜けもいいところだ。

 ブレンダンはユージンが怯んだ隙を突き、国王と王妃に向かって説明を始める。

「私は、そこのアリスという小娘と、宰相どものくだらぬ企みについて、いくつかの証拠を押さえておりますぞ! まずは国庫の……」

 慌てたようすのアリスが、ブレンダンの言葉を遮るように大声で喚きだした。

「余計なこと言うんじゃないわよ! このクソジジイが! どいて、ユージン!」

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