55話〜ユウの意外な特技
ここは名もなき城。ユウは部屋で刻々と迫る儀式の時を不安になりながらベットに横になり待っていた。
するとクロノアが放った魔法の爆音がユウの寝室まで響いてきた。
ユウは一瞬何が起きたのかと慌てて飛び起きた。
(何が起きたんだ?誰かが儀式の邪魔をしに来たのか?それならそれで良いんだけど。それにしてもこっちの世界にもクロノアみたいなとんでもない奴がいるんだな。そういえば、あいつら今頃どうしているだろうなぁ)
そう思っているとオルドパルスが部屋に入って来た。
そしてオルドパルスはユウの目の前まで来ると、
「ユウ様。そろそろ儀式場へ向かわれる準備を」
オルドパルスはユウが着替えていなかったので、無造作に置かれていた服を指差し言った。
「……本当にその服を着なきゃ駄目なのか?」
「はい、もちろんでございますとも。ユウ様が魔王に覚醒された時にそのお召し物では、どちらかといえば勇者に見えてしまいますので」
そう言われユウはしぶしぶその魔王の服を着る事にした。
(はぁ、何度考えても、やっぱりこの儀式おかしいよなぁ。まぁ、今はどう動けば良いか判断できないし、成り行きに任せるしかないよな)
そう思いながら着替えた。
そしてオルドパルスの指示のもと儀式場に移動する事になった。
オルドパルスは儀式場に行く途中でユウに小瓶を手渡した。
ユウはその小瓶を受け取り、
「オルドパルス。この小瓶の中身はなんなんだ?」
「その中には、気持ちを落ち着かせる薬が入っております。ユウ様の気持ちが落ち着けばと思いましたので。今お飲みになられては如何でしょう」
オルドパルスそう言うとユウはおかしいと思ったが、
「……そうか、ありがとうオルドパルス。じゃ、お言葉に甘えるとするよ」
そう言うとユウは小瓶の蓋を開け微かに匂いを嗅いだ。
(ん?何か嫌な匂いが。この匂いって、まさか!?)
余談になるがユウは大学で薬に関する勉強をしていたので薬に関しては詳しかったのだった。
ユウは少し口に含み、薬が何なのかを確認すると大体の検討がついたため、飲んだふりと眠ったフリをして様子をみる事にした。
そして、オルドパルスはユウが眠りについた事を確認すると儀式場まで担いで運んだ。