新しい管理補佐
その日、れいは余程暇だったのだろう。もしくは考えることが多すぎて、気分転換でもしようと思ったのかもしれない。
何にせよ、それはおそらく単なる思いつきだったのだろう。いや、それとも解決策を求めてという可能性もある。
とにかく、その日れいはペット区画の奥地にて、新しい管理補佐を創造した。それも、加減の緩い感じでの創造。その結果、とんでもなく強力な管理補佐が生まれてしまった。
その管理補佐の見た目は、肩まで伸びた金をそのまま髪にしたかのように眩い金色の髪に、物語にでも出てくる王子様のような整った顔立ち。背は高く、手足の長いスラリとした体形をしていた。
挙動はキビキビとしていながらも優雅。そして、見た者が自然と人の上に立つ者だと認識してしまう雰囲気を纏っていた。
創造されたそれは、創造した時のれいの半分程の強さを秘めているという規格外。故に、創造した直後は消耗していたれいとほぼ同等の強さになっていたので、少し反抗的というか、他の管理補佐と違ってれいと対等のように振舞った。いや、もしかしたられいよりも上だとでも勘違いしたのかもしれない。
れいとしては別にそれはそれで構わないと思ったのだが、しかし今後を思えばその自尊心は邪魔になりそうだと思ったので、とりあえずハードゥスの管理に費やしていた大半の力の一部を僅かに戻してみた。とりあえず創造前の十倍ぐらいの力をみせればいいかと適当に考えて。
その結果、創造した管理補佐は自身の立場を弁えて頭を下げた。地面に頭をこすりつけた見事な土下座である。実際、対等か下だと思った相手が、一瞬にして二十倍ぐらいの力の差を誇示するようにみせつけてくれば、ガタガタと震えながらの土下座も理解出来た。
れいは力を管理の方に戻し、創造前ぐらいの力になるぐらいは手元に残した。
それからは現在のハードゥスについて説明を行っていく。それは知識は与えているので必要ないのだが、特に何かやらせようと創造したわけではないので、その間に何をさせようかと思案する時間が欲しかったのだ。
ついでに名前も考えた方がいいなと思いながらも、とりあえず役割を決める方が先だと思い、説明の裏で思案する。その結果、折角なので大陸を一つ任せてみてもいいかと結論を出す。
能力は申し分ないし、テストケースとして丁度いいかと思った。というか、他にやらせる仕事がない。
早々に役割を決めたところで、次は名前だ。さて何にしようかと思考を回転させる。それは先程の役割決めの何倍も難しい問題であった。
そうこうしている内に説明が終わる。そのまま役割の任命と説明を行った後、何とか間に合ったので名付けを行うことにした。
「――以上が貴方の役割です。それで最後に貴方の名前ですが、¨アーロトント¨という名を贈りましょう」
そうして名付けは終わった。ちなみにアーロトントという名は、れいの本体が管理している世界で、傲慢な愚か者という意味ではあるが、れいとしては第一印象をそのまま名前にしただけで、他意は全くない。遺恨とかも欠片も無いどころか、微塵も気にもしていないので、ただただ第一印象が悪かっただけとしか言えなかった。そもそも創造したとはいえ、相手のことをろくに知らないのだから。れいにとって名前は認識票程度の価値しかないので、そこまでこだわってはいないのだ。
何にせよ、新しい管理補佐の名前と役割が決まったところで、早速れいはアーロトントを連れて、漂着物を集めた一角に在る一つの大陸を管理させるべく、現地に向かうのだった。